第17章「帰還者たちの逆襲」
佐渡ヶ島北岸。朝日がまだ低く、海風が冷たく吹き抜ける中、自衛隊の地上部隊はモンスターに押されていた。
「前線、押されてます!」
通信越しに若い指揮官が叫ぶ。
「後退しろ!各陣地を固めろ!」
だが、押し返される勢いは止まらない。
モンスターは統率が取れず混乱しているように見えたが、個々の戦闘能力は高く、兵士たちは次々と銃撃で応戦するしかなかった。
司令部ではレーダー越しに状況を把握するだけで、目視確認はできない。
「……あれは……何だ?」
レーダー上の点群が、一斉に砂浜沿いに現れた。
人型だが、動きが異様に速い。
ミサイル発射ボタンを握る指先が一瞬止まる。
その影の中に、蒼真たちがいた。
浜辺に姿を現した瞬間、モンスターの群れは背後からの出現に気付き、混乱を見せる。
一瞬、動きが止まり、互いにぶつかり合い、指揮系統が崩れる。
統率を失ったモンスターは、ただの脅威に過ぎなくなった。
「斎藤、右側を制圧。蒼真、中央をカバー」
短い声とハンドサインで、全員が即座に動く。
蒼真は銃を構えつつ、砂浜に展開するモンスターを観察した。
「起点はあそこだ。統率個体を先に潰す」
異世界での戦闘知識が脳裏に浮かぶ。
モンスターは統率がなければただの肉塊に過ぎない。
「各員、標的優先順を確認!脚部、頭部、武器保持者!」
レンジャー課程で叩き込まれた実戦戦術が、自然に隊員の動きに乗る。
撃ち分け、回避、間合いの計算――全てが無言で連携される。
混乱したモンスターは、背後から襲いかかる蒼真たちの動きに翻弄され、攻撃のタイミングを失う。
槍や刃物を持つ個体は孤立し、銃撃とローリングで次々と倒されていく。
魔法や特殊攻撃も、蒼真の経験で瞬時に予測され、かわされる。
「……火球!」
炎が飛んでくるが、蒼真は回避しつつ周囲の仲間と連携し、同時に倒す。
斎藤の指示は冷静かつ的確だ。
数分間の攻防で、押されていた前線は次第に安定する。
自衛隊は未だレーダー越しでしか蒼真たちの正体を把握できないが、敵が急速に減少していることを確認する。
「……人型、何か殲滅してる…?」
迷いと戸惑いが言葉に滲む。
蒼真は最後のモンスターを銃で確実に仕留め、砂浜に膝をつく。
息を整え、仲間を確認する。全員無事だ。
自衛隊が浜辺に接近してくる。
まだ距離はあるが、レーダー越しにその姿を追う。
蒼真たちは静かに立ち、銃を下ろす。
「……人間です。味方かもしれません」
通信越しの声に、自衛隊は安堵を見せる。
海風の中、蒼真と自衛隊の兵士たちは互いに距離を詰め、言葉を交わす。
「……無事か?」
「はい、全員無事です」
戦場に響いていた銃声と爆発は収まり、ただ波の音だけが残った。
島の運命を握る戦闘は終わった。
モンスターは全て、蒼真たちの知識と経験によって葬られたのだ。
しかし蒼真は海を見つめる。
「これで全て終わったわけではない」
水源はまだ世界のどこかに残っている。
だが、少なくとも今、この島に生き残った人間たちは救われた。




