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〜異世界に降りた自衛官、リアルも異世界も救う〜  作者: レノスク


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第15章 「統率なき敵」

佐渡ヶ島近海に、濃霧が垂れ込めていた。

人工的なものではない。

だが、自然現象として片付けるには、あまりにも都合が良すぎた。

「……指揮系統は、まだ戻っていないな」

統合作戦司令部のスクリーンを見つめながら、陸将補が低く呟いた。

モンスターの動きは、明らかに変化していた。

かつての佐渡では、

・部隊規模で連携

・陽動と本命の使い分け

・夜間の同時多発攻撃

――まるで人間の軍隊のような行動が確認されていた。

だが今は違う。

「群れは分散。行動は衝動的。誘導には反応するが、罠には嵌まりやすい」

情報幕僚の報告に、室内の空気がわずかに緩む。

統率者を失った影響は、確実に出ていた。

それでも――。

「油断するな。個体の戦闘力は変わっていない」

別の将官が釘を刺す。

モンスター一体一体の能力は、依然として人間を上回る。

銃弾に耐え、装甲車を押し返し、近接戦では自衛官が不利になる場面も多い。

だからこそ、今回の作戦は限定的だった。

第2回 佐渡ヶ島奪還作戦

目標:沿岸部および港湾施設の一部確保

国連からの支援申し出は、今回も断られた。

政治的理由もある。

だが、それ以上に――

「これは、日本の問題だ」

政府の判断は、明確だった。

投入されたのは、

・水陸機動団

・普通科連隊の精鋭部隊

・航空自衛隊による制空・偵察支援

重装備は最小限。

市街地への被害を極力抑える構成だった。

上陸は夜明け前。

霧の中、ホバークラフトが砂浜に乗り上げる。

最初の接触は散発的だった。

モンスターはいた。

だが、組織的な迎撃はない。

「来るぞ、右!」

個体は強い。

一撃一撃が重く、装備の隙を狙ってくる。

だが、連携がない。

包囲が甘い。

退路を考えていない。

結果として、戦闘は局地的になった。

小隊単位で押し返し、制圧し、次の拠点へ。

空からの無人機映像には、奇妙な光景が映っていた。

――モンスター同士が、同じ獲物を奪い合っている。

統率の喪失。

それは、戦力低下以上に致命的だった。

三日目。

港湾施設の一部が奪還される。

完全制圧ではない。

だが、物資の陸揚げが可能になり、前進拠点が確保された。

死者は出ていない。

負傷者は多い。

だが、想定内だ。

「……勝っている、とは言えませんね」

現地指揮官の言葉に、司令部は沈黙した。

確かに、領域は取り戻した。

だが、島の内陸部には、いまだ大量のモンスターが残っている。

そして何より――

「統率者が戻れば、状況は一変する」

誰もが、それを理解していた。

今回の勝利は、

敵が弱体化していたから得られたものに過ぎない。

原因は分かっている。

異世界側で起きた、何か。

正式な報告はない。

だが、帰還点の反応が弱まっているのは事実だった。

「……彼らは、まだ戦っているのかもしれないな」

誰かが、そう呟いた。

名は出ない。

存在も公表されていない。

だが、

この世界とあの世界の境界で戦っている者たちがいる。

佐渡ヶ島の霧の向こうで、

戦争は、まだ終わっていなかった。

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