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〜異世界に降りた自衛官、リアルも異世界も救う〜  作者: レノスク


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13/22

第13章「奪還不能」

決定は、早かった。

 国連安全保障理事会は、日本に対し「多国籍即応部隊の派遣」を提案した。

 名目は国際安全保障。

 実態は、未知の脅威への主導権確保。

 日本政府は――それを断った。

「本件は、日本の主権に関わる問題である」

 公式声明は簡潔だった。

 裏では、さらに重い理由があった。

 異世界の存在。

 転移現象。

 そして、日本だけが知っている“帰還点”の構造。

 それを他国に明かす選択は、なかった。

「――自衛隊単独で、佐渡を奪還する」

 統合作戦本部で、命令が下る。

 対象地域:佐渡ヶ島全域。

 目標:敵勢力の排除、統治機能の回復。

 制約:民間人被害ゼロ、隊員の戦死ゼロ。

 極めて矛盾した命令だった。

 だが、命令は命令だ。

 作戦は、夜明け前に始まった。

 海自が周辺海域を封鎖。

 空自が制空権を確保。

 陸自の部隊が、複数地点から同時上陸。

 計画通りだった。

 最初の三十分間は。

「……敵影、想定より多い」

 先行偵察班の報告。

「魔法的妨害あり。通信に遅延発生」

 電子戦では説明のつかない障害。

 敵は、学習していた。

 異形のモンスターだけではない。

 人間型の指揮個体。

 統率された配置。

 罠。

「市街地への誘導を確認」

「民間人は?」

「避難済み……ですが、完全ではありません」

 その瞬間で、勝敗は決していた。

 自衛隊は、攻勢を止めた。

 火力を制限。

 空爆は中止。

 砲撃も使えない。

 敵は、それを理解していた。

 霧のような魔法障壁。

 視界不良。

 地形の変質。

「……前進できません」

 小隊長の声に、苛立ちはない。

 あるのは、冷静な判断だけだ。

 無理に進めば、

 民間人が巻き込まれる。

 敵は、島を“盾”にしていた。

 さらに追い打ちが来る。

「……後方部隊、包囲されました」

 だが、敵は殺さない。

 拘束。

 無力化。

 排除。

 まるで、試すように。

「……目的は制圧じゃない」

 現場指揮官が悟る。

「見せつけているんだ」

 ――日本の限界を。

 作戦開始から八時間後。

「……撤退命令、下ります」

 統合作戦本部の声は、重かった。

 佐渡ヶ島奪還作戦は、失敗。

 戦果なし。

 島は取り戻せない。

 だが――

「戦死者、ゼロ」

 その報告だけが、異様に静かだった。

 負傷者は出た。

 装備も失った。

 だが、命は全員、帰ってきた。

 敵は、殺さなかった。

 それが意味することは、明白だった。

「……次は、交渉か」

「いや」

 ある将官が、首を振る。

「次は、“選択”を迫ってくる」

 世界は、この敗北を知る。

 だが、日本は詳細を語らない。

 語れない。

 国連は苛立ち、

 各国は疑念を強める。

 佐渡ヶ島は、地図上では日本だ。

 だが現実には――違った。

 完全な占領ではない。

 しかし、取り戻せない。

 誰も死ななかったことが、

 かえって恐怖を増幅させる。

 敵は証明した。

 力を使わずとも、世界は崩れる。

 そして、どこか別の世界で――

 まだ戦い続けている男がいる。

 蒼真の戦争は、終わっていない。

 だが、この世界の戦争は――

 確実に、次の段階へ進んでいた。

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