表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/40

1小鬼

あれ…どうしたの?

待ってよ。

緑だ、手が緑だよ。肩もお腹も緑だよ?


『おまえはゴブリン』


ええ…なんか頭に響いて来たんだけど?


『食え』


『生き残れ』


『仲間と共にあれ』


『雌ならなんでもいい』


『勝て』


『おまえはゴブリン』


『食え』


『生き残れ』


『仲間と共にあれ』


『雌ならなんでもいい』


『勝て』


頭に響くよ。ずっと続くよ。洗脳なの?

嫌だよ。


ゴブリンって冗談だよね。

僕って生まれ変わった?


僕って、いつ死んだの?

あれ、僕って?

これまじなヤツ。夢じゃないの?


『おまえはゴブリン』


『食え』


『生き残れ』


『仲間と共に…』



はっ。

いまのなんだろう。

ゆめ?

ゆめってなんだっけ?


ぼくはゴブリン。

えーと。

ぼくは食べる。


まわりはくらかった。いごこちがいい。

『洞窟だな』

うん?


食べよう。

食べもののにおいがする。

食べて生き残るよ。


そばになにかいる。仲間かな。

生きよう。がんばって生きよう。

てきに勝つ。

食べて生き残る。

仲間といる。なかよくする。


はじめは、よくわからなかった。それだけしかなかった。

ねむって。食べてた。くらかったり、まっくらだったりした。


食べた。口に入るものをなんでも食べた。とにかくおなかがいっぱいになるまで食べた。

食べる。生き残るんだから。


すこしして、仲間がいることにきづいた。

仲間だってすぐわかった。緑色だった。なかよくする。


『緑は違うだろ』

あれ、なんかいった?

だれもいない。変なの。

仲間となかよくしよう。


あるひ、きづいた。仲間とちがうひともいた。

『お母さん…』


えっ、お母さんってなんだっけ?

 

そのひとは、あたまに毛がはえている。ながい髪の毛で、僕はさわってみたかった。

あれ、髪の毛ってなんだっけ?


なんかやさしい気持ちになる人だ。

僕は仲間じゃない、この人が大好きだった。

好きっていうのもよくわからないけど、大好きだった。


そのうち、仲間に大きな人がいることにきづいた。彼らが食ものをもってくる。

肉のきれはしやら、内臓だったり、木の実やら植物だったり、ゴミみたいな物だ。

僕は、よくわからないけど知らない言葉を使えた。

それは大きくなるたび、ねむるたびに増えた。


僕らには衛生観念はまるでない。腐っていても全然平気だった。

衛生観念って?


髪の毛の長い人にはあまり会えなかった。いつも大きな仲間の人が何かしているんだ。

あの人は苦しそうだった。


大きな人がいない時、髪の長い人が寝ている時に、僕はそっと近づいた。

だって寝ていないと蹴り飛ばされるんだよ。乱暴な人なんだ。

でもね、肌に触れると暖かいんだ。すごく安心する。


髪の長い人が目を覚まして僕を蹴った。

なんで蹴るのお母さん。


お母さん…前にも浮かんで来た言葉だ。僕の中にはもう一人の僕がいる。

そんな気がする。


「お母さん…」

呟いてみたけど、仲間のゴブリンにはお母さんという言葉が伝わらなかった。

おいしいのか?って顔していた。


でも僕は知っている。

この人が僕のお母さんだ。


お母さん、お母さん…。

なにか大切な事を思い出した気がする。

僕は一生けんめいはっていく。


またお母さんに蹴り飛ばされた。憎々しげににらみつけてくる。

酷いネグレクトだよ。

うん、ネグレクトってなんだっけ?


お母さんが可哀想な人だって気づいた。

大きな仲間にいじめられているんだ。そしていつも縄で縛られている。

やめてよ、嫌がってるじゃないか。

僕はあたまにきた。


僕は大きな仲間がいない時、一生けんめいに縄を解こうとするけど、結び目が硬いし、全然無理だった。


あれ?

そういえば、今日はお母さんが僕を蹴らなかった。


次の日も次の日も、僕はお母さんに会いに行った。頑張って縄をとろうとする。お母さんは蹴らないで見ていてくれる。


なんか笑ってくれた気がする。

今日はお母さんが絵を見せてくれた。なんか立派な木の枠に入った絵だ。

これは油絵っぽい。

油絵ってなんだっけ?


描かれているのはお母さんと小さな子だ。

その子を見てる時、お母さんはいつも優しい顔をしていた。

僕と違って緑色じゃない子が描いてあった。


僕は手を見る。やっぱり緑色だ。

僕も大きくなったら緑色じゃなくなるのかな。

そんな目で僕を見てほしいな。


お母さんはそれをとても大事にしてる。いつも石の下に隠してるんだ。


よかったらブックマークなどお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ