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1、cage to cage

 

 車が止まったのが、どこなのか、窓のない鉄の箱の中から知る事は勿論できない。

 だが、車の扉が開く、出てこいという事だろう。

 最初に外に出たのは隣にいた白衣。名前は東というらしい。

 次について行くのは私だ。位置的には当然だが、その後ろがついてくる気配はない。

 が、まぁ、関係ないので跳ぶ。トラックの後ろの鉄の箱は当然床の高さがタイヤの高さよりも上にある。両手を使えない状態で跳ぶのは若干勇気が要るが。

――とん、と軽く着地する。

 アスファルトの地面に裸足の裏が擦れて痛い。

 倒れたときの為だろう、待機していた作業着の男が二人離れる。

 てくてくと歩いて、東の隣にいく。

 東とは違う白衣の男が、懐かれたみたいだな、と囃す。

 その煽りとも言える声に対して、東は特に反応しない。

 白衣は、ち、と唾を吐いて。

――次が出てこない。

 出せ、と白衣が命令すると作業着が一人箱の中に入る。

 わぁ、とも、きゃあ、ともつかない声がして一人の少女が作業着の肩の上に担がれて出てくる。作業着を、ぐ、と掴んで落ちないように抵抗するその少女の『照る照る坊主』を掴んで作業着から引き剥いでもう一人の作業着に、ぽい、と下投げで放る。

 下の作業着は少女を受け止めて、割れ物をそうするようにそっと下ろす。

(大事にされてるわけじゃない)

 そう思いながら見る。

 作業は順調に続いて、最後の一人が外に出てくる。

 私を含めて二十三人。

「……あ? 東、何で奇数なんだよ」

「谷、お前にはまだ一人、丑号検体が残ってるはずだ」

「あー、雛子かよ。――俺はエビフライを最後にとっとくタイプなんだよしらねぇの?」

 知るか、と答えて東主導で振り分けが行われる。といっても、身長と体重の比は同じ程度の少女達、白衣と言う事は実験に用いるのだろう。なら、サンプルは多様にあった方が良いと、身長順に振り分けが行われたが、私は東のすぐ近くにいたために振り分けに含まれず。東の班に入れられた。

「おいおい、なんだよ、お気に入りはリザーブ済みってか?」

「ふん、なんとでも言えばいい。……いや、こいつの前で子供を虐めない方が良いぞ」

「あぁ? 何の話だ?」

「気をつけないと、喰われるぞ、と言う話さ」

 東が真顔で言うと谷はくかかか、と笑った。

「なんだ? 東、卑猥な部分でも噛み千切られたか?」

 言ってから谷という男も真顔になる。

「おい、こいつらを俺のラボに運んでおけ。要望が在れば聞きとりだ。叶えるかどうかは俺が決める」

 吐き捨てるように命令を下し、谷は階段に向かった。十一人の少女とそれを連行する役を負った男達はエレベーターに乗った。

 東は谷の背を見送り、は、と息をつく。体の中の空気を換えるような息で。

「それじゃあ、君らも移動する。質問等は後でまとめて伺おう」

 そう言った。

 

 

 この組織の目的は義肢の研究らしい。

 それも一般に流通しているのとはレベルもコンセプトも違う物。

 戦闘用にも戦争用にも転用可能な義肢の製作。

 それはつまり。

『肉体を兵器にする事』。

 ある種、武術のコンセプトとでも言うべき物を修練によってでなく技術によって叶えようというものだ。普通に武器を持つ事と変わらない筈のそれはしかし、身体との一体化という概念をもって、操作への熟達と隠密性を叶える。

 腕を振るように刀を振ることや、指さすのと同じ重さで照準をつける、その訓練を日常化できるという訳だ。

――まあ、これは東の受け売りなのだけれど。

「はぁ……」

 息を吐く、吐く息は重く、恐らく床に沈んでいくもの。

 どうしたの? と聞かれる。聞いてきたのは私と一緒にここに買われてきた少女だ。見た目は私よりも幼く、先程の説明も理解できていないようだ。

 私は溜息をついて、この子は疑問を表情にして、それ以外の子は悲鳴のような絶望の様なものを吐いているだけだ。

「大丈夫よ」

 誰にでも嘘と分かりそうな言葉で、けれど少女には笑みが戻り彼女は一人遊びを再開する。手にしている金属の輪を弄んでいるだけのだが、それは。

(知恵の輪?)

 訓練の一環だろう恐らく、兵器に使えるような出力の腕を精密な動作にも使えるように最適化するための。もしくは生活リミッターの性能検査のための。

――私が溜息をついたのには二つの理由がある。一つは義肢をつけるという事は以前の四肢はどうなるのか、という疑問からくるもので。もう一つは。

(そのために私たちが買われた理由、ね)

 色々と表現は思いつくが言葉としては一つだ。失敗しても良いように、とそういう事だろう。所有物、という言葉の中で使い捨てる事が赦される。自分の物を自分で壊して何が悪い、というものだ。

 所有するという事はそれだけの意味がある。

 さて、と思うが状況が悪化したのかどうなのか。あの檻の中で緩慢に『買われて』、『飼われる』のを待つよりも一歩進んだ事は確かで、けれど、その一歩が悪い方に向かったのか良い方に向かったのかはわからない。

 医療の端くれとして行うのならば、麻酔ぐらいはかけてもらえるかもしれない。痛みでショック死されては何に意味も無いからだ。

 それに趣味で少女をいたぶる変態よりも、死に近いとしてもその死が医療発展の礎になるのならここの方がましとも思える。

 ただ、それは死を前提とした物で。

 (生きる権利がないなぁ)

 とも思える。

 つらつらと考えていると、ちん、と知恵の輪が外れる音がした。

 


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