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12、反論と覚悟


「勝てる、ってか?」

 谷はにやにやと笑いながら言って。

「……」

 俺は沈黙する。

 うみは下手を打った。

 相手の隙を見つけた気になって打ち込み逆にそこで隙を晒した。

 それが罠だと気付く事もなく打ち込み返り討ちにあった。

 防御とも言えない腕の構えで沈んだ体は攻撃に至る一手順でしかなかった。

「……」

 けれど、と言葉を継ぐ。反撃は廻転と抜刀の動き。一度背を向けた事で全速全力という物が現われたが。

「まだだよ、谷」



 反射そのものでしかなかった。うなりを上げる鉄の腕に思わず反射。顔を覆うような防御は間に合わない。

 受ける事は出来ないが代わって払いの動きになる。

 止めるのではなく合わせる動き。

 直で受ければ腕ごともぎられたで在ろう威力の一撃はしかし、角度を変える事が出来た。

「――っ!」

 代償は生身で残っている肩の痛み、恐らく脱臼という症状。

 同時に拳から肘の辺りまでの人工皮膚がはじけ飛ぶ。

 皮膚だけ、ではない。左手の手首から先が分解されたように吹き飛ぶ。

 振りかぶって投げるような一撃でバランスを崩した雛子はつんのめるような動きに後足で加速を足してすり抜け、着地点で此方に向き直る。

「半損、続行?」

「投降はしない、続きを」

 まだある右腕、肘からの動きで手招き。

 ぱん、と頷くように一音足裏で立てて雛子は跳んだ。

 もはや、隠す事を止めた速度。

(――さて)

 どうしようかと刹那の間に思う。

 加速に全力である分先ほどまでの回避法は使えない、後ろに一歩引いたところで追加の加速で補われる。

 けれど、雛子の腕の振り回しを止める方法は思いついている。

(でも)

 という反語は材料の無さを嘆く物だ。

 この部屋、訓練室は何もない。壊れにくい壁があるだけだ。

 しょうがないと思う。

 一歩の引きで距離を稼ぐ。待つよりは時間が先延ばしになるが、その時間は殆ど無い。

(気付かれる?)

 ある仕込み、けれど、雛子の瞳は加速の一語を思う物で此方の策に気付いたそぶりはない。

 それなら、と覚悟を決めて足を一歩引いた。



(笑止)

 浮かぶのは端的に相手を見下す思い。

 突撃に対して一歩引いたところで、もはや、箭疾歩を使わぬ動きに支障はない。

 ただ、加速のための距離が長くなるだけ。

――相手はこれ以上下がれない。壁際。

 ならば現状の距離で固定、この距離で最大威力になるように歩調を組み替えて。

 (最大――速度!)

 加速で前に走る事で攻撃方法は限定される。直の突き出し。それだけだった、速度に乗せれば十分の威力を持っていたからだ。

 けれど、この相手は違う。

 先日の訓練では逃げまどい背を見せるような相手であり腕の使い方もなっていなかった。生身の腕とは使い方が違うと言う事を認識していない限り拮抗する事も出来ない。――のに。

 直突きの威力ではいなされ、防がれする。

――遠心こそが本来の自分の武器であると、理解している。

 ならば、加速に遠心を乗せれば威力は上乗せだ。

 先ほどの相手の攻撃を受けるときにその輪郭が見えた。

――速度を廻転へ変換、廻転は遠心の威力へ。

 その始めは踏み込み、だ。

 (強制、停止!!!)


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