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お題シリーズ4

心の証明

作者: リィズ・ブランディシュカ




 私には心があるのだろうか。


 いやない。


 作られしもの、機械である私にはただプログラムがあるだけだ。


 だから、心などないのだ。






 マスターは今日も私を名前で呼ぶ。


 割り振られた識別番号ではなく。


 それはマスターの、亡くなった娘と同じ名前だった。


 マスターは私の名前を呼んで幸せそうにするけれど、時々くるったように髪をかきむしる。


 そして、発作的に何度も命を断とうとしていた。


 そのたびに私は、プログラムに定められた通り、彼女に適切な声掛けをして、思いとどまらせるのだ。


 私は、そんな時に必要になる医療用の機械。


 医療の専門知識をそなえたAIだから。


 マスターの事を心配した家族が、私をマスターの元へ届けたのだ。


 マスターは正気と空想の間をいったりきたりしながら苦しむ毎日を送っていた。


 正気に戻ったマスターは「死にたい」「娘と同じ場所へ行きたい」とつぶやく時が多い。

 どうして人は、苦しい思いをさせてまで、人を生きながらえさせるのだろうか。


 機械である私には、分からない。


 心のない私にはわからない。


 生きる事は、心を蔑ろにしてまで行う事なのだろうか。


 ロボットにはない貴重な心を。


 何度も考えたが、やはり答えは出なかった。






 私は今日もマスターに声をかける。


 マスターは私を娘の名前で呼んでにっこりと笑う。


 私もプログラムに従って、笑顔の表情をつくり、何気ない会話を装ってカウンセリングを行う。


 今日もマスターに「私は貴方の娘ではありませんよ」とは言えなかった。




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