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① 掟破りの婚約破棄

 現在進行系の婚約解消劇と、二十年前に起きた婚約破棄騒動が絡み合いながら話が進みます。

 似ているようでどこか違う二組の王太子と侯爵令嬢、そしてピンク色の髪の少女の組合わせで展開されるストーリーです。


「エディーナ嬢! 君との婚約を解消させてもらう。

 理由は今の君のままでは将来の王妃の役目が果たせないからだ。

 何故果たせないかは君自身がよく分かっているだろうから、それを態々口に出すまでもあるまい。

 ・・・・・・・

 そして次に今僕の隣にいるエリス嬢を皆に紹介しておこう。

 彼女こそ私がずっと探し続けていた待望の女性だ!」

 

 あ〜あ。まさか本当に今日言い出すなんて…

 しかも何故こんな場で? 卒業パーティーで婚約破棄するのが王族の遺伝かしきたりなんですか? 

 過去から教訓は得なかったのですか? 

 それとも昔なんとかなったから今回もどうにかなると思っているのですか? もしそうならそれは大きな間違いですよ。

 前回の失敗は王子が一人しかいなかったから廃嫡されずにすみましたが、貴方には貴方同様に優秀だと評判の弟がいるんですよ。

 

 それに……今世公の場での婚約破棄は掟破りなんですよ。殿下もそんなことはご存知のはずでしたよね? それなのに何故こんな真似をしたのでしょう?

 その上何故この場に浮気相手を同伴させたのでしょう? いくら考えても謎です。

 

 多くの人の前で私に落ち度があると思い知らせ、あの婚約者なら婚約破棄しても仕方ないよねと周りからの同情を得たくて、こんな場で私との婚約破棄を宣言したのでしょう?

 なにせ私は極端な肥満体型ですから。

 

 自分で言うのもなんですが、顔自体は今現在でも美人の類に入ると思います。3年前に突然太り始めてからも……

 しかし首から下はまるでビア樽。ダンスを踊るどころか最近では階段は後ろから誰かに押してもらわなければ昇ることができないし、ただ歩いているだけでもコケることもしばしばです。

 

 いくら数か国の言葉を流暢に駆使し、豊富な知識を持って他国の者達と上手に交渉が出来たとしても、まともなカーテシーも出来ないのでは王太子妃として公の場には立てません。

 

 医師を始めとして多くの人からの助言を受けて減量を試みましたが、体重は増え続ける一方です。なにせ水だけ飲んでいても全く減らないのですからもうお手上げです。

 

 こんな私では王太子妃になれないことは一目瞭然。いつ婚約破棄されても仕方ないとは大分以前から分かっていました。

 誰だって好き好んで私のような女を選ぶ訳がないのですから、王太子となればなおさら……

 

 ただ、飛び級をしていた私はこの一年休学をして、王太子の代わりに執務を行っていたので、卒業するまではこのままなのだろうと理解していました。

 それなのに何故後一日待ってくださらなかったのでしょう。

 

 私の一応まだ婚約者である第一王子であるルーリック王太子は、壇上でピンク色をしたフワフワ頭に甘ったるいかわいい顔をした女の子を自分の横に置いて立っていた。

 そして小柄なのに何故だか胸だけは熟女並みに立派な令嬢?としっかり見つめ合っていました。


 

 去年転入してきた平民で一つ年下のエリス嬢と、婚約者である王太子殿下が付き合っているという話は、何となく私の耳にも入ってはいました。

 しかしまさかあんな風貌の方だったとは思ってもみませんでした。完全に詰んでいる……と私はため息をつきそうになりました。

 

 確かに私と彼女を見比べれば、百人中百人がかわいくてスタイルが良く、胸も豊満な彼女の方を恋人にしたいと思うことでしょう。

 

 とはいえ、彼女のような女性を実際に結婚相手に選ぶ貴族はあまりいないと思います。

 いいえ、親に彼女とのことを知られた時点で交際を禁じられると思います。まあ、跡継ぎではなくて、平民になっても構わない覚悟があるのなら何の問題もないでしょうけど……

 

 それは何故かというと、現在の国王陛下が昔王太子だった時、やはり学園の卒業パーティーで婚約者だった侯爵令嬢と婚約破棄をして、その後平民出身の女性と結婚したという、過去があったからです。

 しかも侯爵令嬢がその平民の同級生に嫉妬をして、酷く苛めていたと断罪して……

 

 その時の平民の女性がピンク色をしたフワフワ頭に甘ったるいかわいい顔をしている、小柄で庇護欲を誘うタイプだったのです。

 

 このお二人の結婚は国を挙げての大騒動になり、王宮や王城、そして貴族の中に色々なしこりを残しました。

 それ故にそれ以降王侯貴族の社会では、公の場での婚約の破棄を禁止する命令が発布されたのでした。


 そして理不尽で気の毒な話なのですが、貴族社会の中ではピンク髪の女性が忌み嫌われるようになりました。

 平民はともかく貴族の娘でピンク色の髪に生まれると、それをごまかすためにほとんどの人が、髪を別の色に染めるのだそうです。

  

 それくらい前回の婚約破棄騒動は社会に多大な迷惑や影響を与え続けているのです。

 ですから、学園の卒業パーティーという公の場で婚約破棄するという、掟破りな行為はもうしてはいけなかったのです。


 しかもよりによって、またもやピンク髪の女性とだなんて。王太子殿下は完全にマザコンですね。まあそんなことはとっくの昔から知っていたことですが。

 

 ああ、それにしてもどうしてこんなことになったのでしょうか……

 私は以前から王子にこう申し上げていましたのに。

 

『私のことがお嫌いになったら、どうぞお好きな方を側妃にして下さい。

 しかしどうしても愛する方を王妃になさりたいのなら、私と婚約解消しても結構ですよ。

 ただし相手の方は選んで下さいね。せめて私と同等の能力を持った方にして下さい。

 そうしないと私に慰謝料を支払うだけでは済まなくなりますからね』と。

 

 しかし恋をして頭の中がお花畑になってしまった殿下には、全く届いていなかったようです。

 

 せっかくの卒業パーティーだというのに、卒業生や保護者の皆様には本当に申し訳ないわ。

 しかもイベントやスキャンダル、そして人気の婚約破棄話が好きなご令嬢方には、残念ながらお望みの断罪シーンもお見せ出来ないし。

 

 皆様は観劇や小説のように、私が婚約者と仲良くなった女性に嫉妬して、ピンク頭の少女を苛めていたなんて話を期待しているのでしょう。

 しかしそんな話が出て来るはずがないことも皆様が一番ご存知だもの。

 なぜなら私はこの一年ほど学園には通わず、王城でルーリック殿下の代わりに執務をしていたので、エリス嬢と会ったのは今日が初めてだからです。

 

 ところが、私も大分考えが甘かったようで、私は冤罪による断罪はされませんでしたが、笑い者にはなってしまいました。

 エリス嬢の口から私の今までの失敗談を次々と暴露されてしまったからです。

 

 例えば舞踏会でダンスでターンをしようとしたとき、私は太り過ぎていた為に殿下を勢いよく跳ね飛ばして気絶させたとか……

 

 太っていて足元がよく見えずに階段から転げ落ち、エスコートをして下さっていた殿下まで道連れにして気絶させてしまったとか……

 

 誰かとぶつかって転んだ時、殿下の上に倒れこんで、気絶させてしまったとか……

 

 私がベンチに腰を下ろした途端、反対側に座っていた殿下が飛び上がって、私の頭にぶつかって気絶したとか……

 

 あら? 私の失敗談って、そのまま殿下が巻き添えになった悲劇のエピソード?

 

 もしかして殿下がこんなに阿呆になったのって、私のせいで頭を打ち付け過ぎて、頭がいかれたのかしらん?

 私は頭が固いのでなんともなかったけれど……

 

 さっきまで殿下を侮蔑の目で見ていた卒業生達も、殿下に同情的な眼差しになっていました。

 

 私の失敗談を恋人にペラペラと喋って、彼女と一緒に私を笑っていたのかと思うとさすがに胸が痛みました。

 しかし、第三者から言われて改めて思い返して、私は自分の酷い有り様を再認識したのでした。

 婚約破棄をされて当然です。よく今までされなかったとそっちの方が不思議です。

 

 元々殿下の浮気に対する恨みや怒りはなかったのですが、ここにきて殿下に対する申し訳ないという気持ちがどんどん大きくなってきました。

 

 

 殿下とはお互いに七歳の時に婚約しましたが、彼はずっと私に良くして下さいました。

 幼い頃の殿下は、いかにもザ・王子様の容姿をしていましたがそれは見かけ倒しで、要領が悪くて鈍くて軟弱で、半年違いの腹違いの弟に何をやってもやり込められてしまうヘタレな王子様でした。

 それでも心根の優しい方で、いじめっ子のご自分の弟からいつも私を守ってくださいました。

 

 花や生き物が大好きで、まさに虫も殺せないような男の子でした。

 シロツメ草で花冠を二つ作って自分の頭と私の頭に被せ、指輪も作って『婚約指輪だよ』と互いにはめ合いました。

 大人とは違って子供だった私達の婚約式では指輪の交換がなかったので、私はそれがとても嬉しかったのです。

 

「綺麗だよ、ディナ。僕のこんやくしゃになってくれてありがとう。ずっと僕のそばにいてね…… やくそくだよ……」

 

 そう言ったルーリック殿下と私はお互いのほっぺたに誓いのキスをし合いました。

 十年経っても私にとってそれは一番素敵な思い出です。

 あの思い出があったからこそ私は厳しいお妃教育にも、殿下の代わりの忙しい執務にも耐えられたのです。

 

 学園に入学してからはさらに忙しくなって、殿下とはなかなか会えなくなってしまいましたが、これは卒業してすぐに結婚する為に必要なことなのだからと我慢しました。

 結婚したらずっと一緒にいられるのだから、今は我慢して立派な王太子、王太子妃になるためにお互いを高め合わなければいけないと。

 

 それなのに何故こんなことになってしまったのでしょう・・・

 

 既に話は最後まで出来上がっていますので、見直し次第投稿します。

 最後まで読んで頂けると嬉しいです!

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