4話 石の街 アイロタージュ
早朝ソルはしずくを起こさないよう部屋を出て村から少し離れた広場で魔術の練習をしていた。
これは旅立つ以前もしていたことで、言わばソルにとっては朝の恒例行事となっていた。
まず得意の風を操り、自分の周りに風を発生させ自分を中心に渦を巻くように風を操る。
そしてその風の密度を高め、飛ばせば風の刃になるであろうその風を全身から腕へ意識を集中する。
そうすると風は両腕にまとわり付くように腕だけに集まる。集めた風を今度は腕から先へ、そしてその刃を飛ばすようなイメージを持ち
「ウィンドカッター」と言葉を発すると共に一気に飛んでいく。
初め全身を覆っていた風はその後腕に集中し、二つの刃となり体から離れ一直線に飛んでゆく。そしてその刃のひとつが先にあった石当たると石は瞬時に細切れになり小さな石の集まりとなる。もう一方は地面に直撃し地面を数センチえぐった。
一息つくと「やはりまだ思いのままに操るのは無理か」と呟く・・・・
いくら得意種の魔術とはいえ18の青年が中級の魔術を思いのまま操るのはなかなか難しい。
しかし今までも旅をし、生きてきただけのことはあるだろう。
魔術の使える者の半分ぐらいは生活に必要となる初級レベル止まりで
センスのある者では一般的には20歳ぐらいで中級を出し20後半で思いのまま操ればそれなりの魔術師と言える。
魔術の使えない者でも所謂マジックアイテムと言われる、術者が加工したアイテムを買ったり自然に存在する魔術が付加されている物を見つけてきて補ったりしている。
しかし、生活するのに完全に魔術が必要かといわれると否で、
なくても生活は出来るため、人々は一部軍人などを除き魔術は補助程度という考えが住民に浸透している。
そして中級レベルを扱えるようになると普通は国の護衛団(軍人)に入っており、さらに上を目指し日々自分のレベル向上を目標に鍛錬したり、時に国のため戦地に向かったりする。
そしてその中で特にセンスが良かったり、日々過酷に訓練を行い、中級を極めた者が上級といえる言わばこの世界でトップクラスの魔術が使用出来るようになる。
それはほんの一握りで使える者は部隊長になったりしている。
それを18歳の青年がまだ操りきれていないが、何とか扱える程度まで完成度を上げたのはソルのセンスと日々の努力の賜物なのだろう。
そうしているうちに次は炎を昨日しずくに見せたように右の掌に出す。
ソルはもっと強く燃える炎をイメージし、その炎が時間と共に勢いを増す。
そしてそれは生きてるかの如く強くなり、ソルの右手を飲み込む。その後イメージが付いたのかソルは右手を前に左手を右腕に添え、右掌開き対象物に向けるそして「ファイヤ」の言葉と共にその炎が飛んでゆく。
その速度は風の刃ほどのスピードではなく、まだ目で追えるスピードだった。
直後対象物の落ち葉は炎に包まれ、灰となり消えた・・・
「炎の感じはよし・・・じゃあこれは」と言うと
今度は胸辺りで地面と平行に腕を伸ばし手を交差させる。
ソルは心の中で両手に炎がありそれが交わるようイメージする。
そうしてるうちに交差した掌には魔力が集中するのがわかる。
「フレイム」と言い掌から片手のときの2〜3倍程度の炎が少し円を描くように飛んでいく。
そして地面に当たり、さらに勢いをつけ、まさに可燃物を燃やしているのか?と言うぐらいの勢いになり数秒後炎は燃やすものがなくなったかのように消えた・・・
「やっと出来た・・・」ソルに笑みが生まれる。
「けど、まだ一直線には飛んでくれないか・・・
いや初めて成功したんだ。まだまだこれからだ。練習あるのみ」
とひとり意気込む。
初めて成功したのが嬉しかったのかその後も炎を操る練習を続け、
手ごたえを感じたのかそこで朝の練習を止め、宿屋に戻った・・・・。
「どこ行ってたの〜?」
「ああ、ちょっとなあ」と言葉を濁す。
「まあいいや、朝ごはんたべよっか?」
「ああ」といい昨日もらった果物のい余りをふたりで食べた。
しずくの服装は現在ソルが羽織っていたローブを借りているがその中は高校の学生服である
そのせいで必要以上に外に出れなかった。
「街に着いたら服買ってやるからもう少しそれで我慢してくれよ。
そしたら飯もちゃんとしたところ連れて行ってやるから」
流石に学生服で外を歩くと目立つため、食事も果物だけだった。
そして早々に宿屋をでて街へと急いでいた。
「ねえ後どのくらいで着くの?」
「3時間程度かな」
ついで言うとここまで約2時間ほど歩いている。
そして後半分といったところだった。
油断していた訳ではないが、周りをウルフといわれる野獣に囲まれてしまった。
ウルフというと単体では初級の魔術で十分相手できる。
しかし今回は6匹だった・・・確かにウルフは単体ではほとんど居ない。
群れて狩りをする野獣だ。しかしほとんどは三匹1チームで一匹が囮として敵をう油断させ、
残りのウルフで相手の背中をとる方法だった・・・
今回はウルフの相手がソルだったとしても、しずくを守りながら6匹のウルフでは分が悪い
かと言って諦めるわけでもなく、得意の風の魔術で致命傷とはいかずとも確実にダメージは与えていた。
ファイヤがウルフに直撃し、怯んだ隙を見逃さず、他を警戒しながらも怯んだ一匹を集中して攻撃していた。
ついに陣形が崩れ、逃げる間隔が出来たのでしずくの手を取り
「こっちだ」と空いた隙間に走った。
足かせ程度にはなるだろうと土の魔術でウルフの足場を狙い障害物となる土砂を出現させ足止めをしながら走った。
そして、やっとのことでウルフから逃げ切り
「はあ、はあ、やっと逃げ切ったね・・・」
「ああ、やっとだ。6匹で狩りとは珍しかった」
「とりあえず無駄に時間消費したから歩くぞ。」と鍛えていてのかソルは涼しい顔をしながら多少ペースを落とし、
ふたりは街に向かった。
まずこの世界の国について言うと
北の大地を国とする『ノースレイム』
この国は火の精霊を守り神とし主に軍事力に力を入れ、自国のみならず他国に厄介な魔物の出現が報告され、要請があれば動いたりする
西の大地を国とする『ウエストコローリア』
この国は風の精霊を守りとし商業に力を入れている。
南の大地を国とする『サウスコースト』
この国は水の精霊を守り神とし、医療に力を入れている。そのためこの国の医療術は他国に比べ最も優れている
東の大地を国とする『イーストラーケント』
この国は土の精霊を守り神とし、農業、漁業などに力を入れている。
他にも小国がいくつかあるが、この4大国が中心となっている。
そして今しずくたちがいるのは『アイロタージュ』という街である
この街は王都ではないが、ウエストコローリアの中では比較的大きい街で
この街は鉱山がいくつか近くにあり、周りが山という地形からも宝石や鉱石などを採掘し、それらを加工し発展してきた街だ。
街は宝石を求める商人、そして採掘する作業員、露天を出して手ごろな価格で加工品を売ろうとする者などで賑わいを見せている。
貴族も住んでいるが、あまり多くなく一般に平民達が住む地区のほうが賑わいもみせ道行く人も多い。
貴族地区のさらに一等地にこの街を管理している貴族がいる。頭首の名を『ライル・フォーチュ・コローリア』という
名から分かる通り王族の血筋の者である。
今この街は宝美祭と言われる祭りの時期である。
そのため、普通なら貴族地区もしくはその近辺で売られている宝石または色とりどりのマジックアイテムも多くはないが、平民地区にも流れる。
それらの加工品を目的とし、他の街からもたくさんの人がこの街にあつまる。
宝美祭の一番の目的は女性たちがその加工品を身につけ、加工品(主に宝石)が最も似合っている女性を選ぶことである。
無論貴族はそのコンテストには参加せず、高みの見物ではあるが平民たちにしてみればそれは街を挙げての大切な行司である。
そして女性だけではなく加工品の製作者も注目をあびる。加工品がすばらしく貴族の目に止まれば専属の加工師として安定を得られるからである。
周りをきょろきょろと慌しく見回しながら
「賑わってるね〜」としずくが珍しい物を見る目をしながら言う
「今は宝美祭だからな」
「宝美祭?」
「ああ、この街挙げての大きな祭りだ。最終日に女たちが宝石などを身につけ一番美しいのは誰か決める祭りだ。
そして女が身に着けた宝石を加工したやつもその加工品が貴族の目に止まれば専属の加工師として雇われるから皆必死なわけさ・・・」
「ほほ〜そりゃ盛り上がる訳だね」
「それより服買いに行くぞ。
流石にこの人だかりの中頭の先から足までローブで隠すのは違和感がありすぎる」
「ん」
と手ごろな服屋を見つけサイズを測り、服を買い着替えたところで、客が入ってきた。
「ラクだけど頼んだ服仕上がってる〜?」
「ちょっと待ってな。今取ってくるからよ」
と店の主人が服をとりに行っているときに
「お嬢さん可愛いですね。お嬢さんも宝石をつけて宝美祭参加するんですか?」
「いいえ、旅人しているので買う余裕もないので参加はちょっと・・・」と遠慮気味に言う
「じゃあうちのやつ付けて参加しませんか?今年こそは貴族様に選ばれたくてちょうど人探してたんです」
「えっと・・・ちょっと相談してみないと・・」と言いソルのほうを向く
ソルは「別に急ぐ旅でもねえからでたいなら出てみろよ」
とOKをだす
「やった〜」と店で騒いでいるので店主が帰ってきて何事か?とラクに尋ねる
ラクは「宝美祭での勝利の女神を手に入れました」と店主に言う
店主は今までの付き合いなのかその場の雰囲気で分かったのか
「そりゃよかったな。頑張れよ」とエールを送った。
ところ変わって現在ラクの宝石加工店にいる。店内にはしずくたちしか居らず、
店内は明るくその明かりに照らされているその様子はまさに自分を選べと言わんばかりに輝いている。
ラクはその中からひとつカチューシャを手に取り、それをしずくに渡した。
それはピンク色で薔薇によく似た花をモチーフにしたカチューシャだった。
その花の中心に赤色の宝石がはめ込まれていた。
しずくは頭につけ、まわりは皆頷き
「あとは衣装ですね。さっきの店に後で頼みに行きますか?」
とラクは微笑みながら言った。
ふじゅです。
とりあえず二日ぶりです
土、日が忙しすぎました・・・(;;)
昼前からバイト入り、途中休憩をはさみ家に着くと23時ちょい前に・・・さすがに二日続けては堪えました^^;
ってことでこれ投稿で見事にストックゼロに
ああ、せっかく頑張って貯めてきたんですけどね。
バイト及び学校が始まり、今まで通りの投稿は困難なのでかなりスピードは落ちますが、どうか見捨てないで・・・
今回は時間の都合で、書くだけ書いてほぼ編集なしなので、おかしな点がいくつかあるかもしれません。