08話 未知のウイルス
「厄災症候群についてなら将ちゃんによく聞いてたからその範囲でなら話せるよ」
俺ときいなは二人で顔を見合わせた。
「厄災っていうのはこの世界とは別のところからやってくる未知のウイルスのことなんだって。毎月満月の日にそれが現れて将ちゃん達警察が駆除しているんだって。ウイルスにかかるのは特定の個人らしいけど直接会ったかどうかは関係ないみたい」
「直接会ったこともないのにウイルスに感染するのか?」
まだ説明の途中だったが耐えきれずに質問してしまった。
「どうしてそうなるのか将ちゃんは教えてくれなかったけど、それが現れてから半年で必ず死に至るって言われてるって」
「必ず死に至るってのは、病気で亡くなるってことか? そもそも人に感染するならもっと爆発的に感染者が増えて膨大な死者が出ていてもおかしくないか」
「死に至る原因は病気だけじゃないみたい。事故死や中毒死中には殺人事件で死んだ例もあるみたい」
「殺人事件とウイルスに因果関係なんか無いんじゃないのか? なぜウイルスが原因だと断定できるんだ」
「殺人事件も複数あっていずれも未解決事件なの。ただ一点の共通点として厄災が現れているということなの」
(それじゃあウイルスというより呪いじゃないか……)
「オカルトの類いだから記事には出来ないけど、警察に取材に行ってみたの。そしたらすぐに上からストップが掛かって取材自体が中止になちゃったの。それ以降は厄災に関する事件にも報道規制が掛かって明らかに何かを隠しているのよね」
どうやら警察には知られては困る事があるようだな。もしかしたら俺がこの世界に来るきっかけになった爆発事故も単なる事故ではないのか……
「これは独自に掴んだ情報なんだけど、仙台帝国大学の小野教授が厄災症候群について研究していたみたい。」
(小野教授……?)
これについては恵美が答えてくれた。
「小野教授って感染症センターの理事長や病院の院長もやったことがあるお医者さんだよね。でも最近殺人や監禁、傷害事件を起こして逮捕されたって」
「正確には指名手配されたけど逮捕されてないのよね。噂だと外国勢力の援助で海外に逃げたとか、用済みになって殺されたとか……」
(分からないが話を聞いてみたいもんだ)
「実はかつて小野教授のもとで研究していた研究員にアポイントが取れたの」
「なあ。その取材に俺も同行させてもらうことは出来ないか?」
「それは問題ないと思うけど」
(思わぬところからすごい情報にありつけるかもしれないな……)