05話 中島課長
「本間具合はどうだ? 心配してたんだぞ」
病室に入ってきたのは警察省東北警察局災害対策課中島課長。
本間将太の上司である。
「ガハハハッ。もういつでも仕事に復旧できそうだな」
豪快な笑い方とは裏腹にかなり小柄な男である。
身長は160センチあるかどうかだ。
「将太は事故の影響で記憶をなくしてるんです。なんて無神経なことを言うんです」
俺がどのような言葉で返事をすべきか悩んでいるときいなが返事をしてくれた。
「いやぁスマンスマン。医師からは記憶喪失だとは聞いたがどの程度か確認したまでだ。警察としても厄災関係の部署は人員が限られているから早く復旧してもらいたいだけだ」
中島は悪びれる様子もなく言ったが、きいな自身は納得出来ないようだ。
「奥さん警察官になった以上いつ何時事件に巻き込まれてケガをするかもしれない。本間の奴もそう覚悟して警察官になったはずだが?」
きいなはそう言われると言い返せなくなってしまった。
「まあ今の本間の様子を見る限りだと即復帰といのは無理のようだな。医者からも記憶はいつ戻るかなんて分からないと言われてしまった以上な。本間お前自身はどうしたいんだ?」
「……正直記憶がないので何とも言えませんが、ただ覚悟して警察官になった以上今後も続けたいと思います」
俺自身本間将太の気持ちなんて全く知らないし、彼の日記を見る限り警察官を続けるとヤバいんじゃないかと思う。ただ加藤将太としては今の事態を把握すために情報が必要だ。なので警察に残り続ける選択をしなければならないと考えた。
「警察官としてはまずまずの回答だな。その状態じゃ復帰は当分無理そうだからしばらく休職してろ。記憶が戻ったらさっさと現場に帰ってこい」
そう言い残して帰ろうとする中島に対して俺は一つ質問してしまった。
「中島さん厄災って一体何なんでしょう」
「そんな事まで忘れっちまったのかよ。一般人の奥さんもいるから詳しく言えんがあれは災害や呪いの類の事象だ。余計な心配してないでさっさと記憶を戻せよな」
そう言う彼は病室を後にした。
中島が去った後きいなは俺に仕事を辞めるように言ってきた。
「ごめんなさい……私も日記の中身見ちゃったの。どんな仕事をしてるのか知らなかったけど最近将太の顔が日に日にやつれて心配で仕方なかったの」
彼女は泣きながら俺に抱きついてきた。
「もう誰かを失うのが怖いの。もう家族を誰も失いたくない……」
「大丈夫俺はどこにも行かないから。ただこれは記憶を戻す上で俺は立ち向かう必要があるんだ。だから俺に力を貸してくれ」
俺はそうやって彼女に言い聞かせた。