03話 日本ではないこの世界
先日の爆発騒動から3日経過したがいくつか分かった事とたくさんの疑問が生まれた。
ここはどうやら日本であって日本ではないらしい。
最初に違和感に気がついたのは新聞だ。俺は元々新聞なんか読まないが最低限新聞社の名前くらいは言える。だがこの新聞には[仙台日報]と俺の知らない新聞社名が書かれていた。
さらに日付欄には[2020年久化3年7月4日]と記載があった。日付的には問題ないのだが、問題なのはこの久化という文字である。去年元号が大々的に変わったが俺の知っている[令和]ではない。更に元号が変わったのが去年だから今年は令和2年だったはずだ。
他にもテレビやインターネットのホームページなど俺が知っているものが何一つ無かった。
本間将太という人間には悪いがスマホを勝手に借りていろいろ調べられないかと考えた。当然のようにスマホには指紋認証が設定されていたが、不思議なことに俺の指紋でロックが開いたのである。なぜ他人のスマホを俺が使えるのか、また新たな謎が出来てしまった。
スマホで調べた結果分かったことは、ここは大和という名前の国だということだ。スマホの地図を確認したが、東北や関東、仙台や東京といった地名は俺の知っている日本そのものだったが国名が日本ではなく大和だった。
また行政機関も警察省という所以外は俺の知っている日本そのものだった。本当に悪い夢をみているようだが全然覚める気配がない。
ちなみにこのスマホから俺のスマホ宛に電話をかけてみた。
しかし繋がることはなく『おかけになった電話番号は現在つかわれておりません』とのアナウンスが流れた。もう全てが謎だらけで嫌になってくる……
そうしているうちに病室のドアがノックされ開いた。
「将太もう起きて大丈夫なの? まだ横になった方がいいよ。」
そう言って彼女本間きいなが病室に入ってきた。
「体調の方は先生も驚異的な回復力だからすぐによくなると言ってくれました。
そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。それよりきいなさんは会社に行かなくても大丈夫ですか?」
「……もう夫婦だからさん付けも敬語で話すのも止めてよね。
たとえ記憶がなくても私達が夫婦であることに変わりでしょ。」
「すみません……でも俺あなたの旦那さんの本間将太という人間ではないです。」
(こんなに旦那思いの人を騙すのは流石に忍びないな…… 俺が知っている全てを話してしまいたいがそれも怖い……)
「将太は事故の影響で記憶が混乱しているだけなの。だからゆっくり記憶を戻していけばいいの。
それに私だけが知っている将太の特徴があるじゃない。腰にホクロがあるでしょ?」
(………!!! 確かに俺の腰にはホクロがあるが…)
「あなたは本間将太。他の誰でもない私の家族なの」
「すみません 俺……」
「会社には有給申請してきたの。将太がこんな状態だって話したら直ぐに休みをくれたよ。
今日から私もここに泊まることにしたから。あなたに私のこと思い出して欲しいから……」
彼女は本間将太との出会いからこれまでを写真を交えながら説明してくれた。
本間将太と本間きいなは同じ大学で知り合って付き合い始めたこと。
鈴木美樹、須藤恵美を含めた4人がいつも一緒だったこと。
4人で遊んだこと、旅行に出かけたこと。
大学の卒業と同時に結婚したこと
本間将太が警察省に、本間きいなが出版社に就職したこと。
(俺はそれを聞きながらただただ嫉妬した。この本間将太というリア充に……)