02話 世界とのズレ
またこのページを開いていただける方がいるようで感謝です。
また最後まで読んでいただけるような方がいることを願います。
「加藤将太30歳です(彼女いない歴=年齢です……)」
俺がそう言った瞬間医師や看護師、手を握ってくれていた彼女が困惑の表情を浮かべた。
そして彼女は直ぐに悲しそう顔をした。
「爆発事故に巻き込まれた影響で一時的な記憶の混乱が生じているのかもしれません。」
「本間さんこちらの女性はお分かりになりますか?」
医師と看護師がそのように言ってきたが何のことを言っているのか理解できない。それに何度も本間と呼ばれているが一体誰と勘違いしているのか。この女性も始めて会った人なのに……
「すみませんそちらの女性がどちら様なのか分かりません……」
俺がそう伝えると彼女は泣きそうな顔になり、顔を手でおさえながら部屋を出て行ってしまった。
そして医師からこのように告げられた。
「先ほどの女性はあなたの奥様です。」
一体この医師が何を思ってこのようなことを言っているのか理解できないが淡々と説明してくれた。
俺が警察省東北管区本部所属の刑事であること。
ここは警察省が管理している病院であること。
詳しくは機密のため聞かされていないと言っていたが、訓練中だった現場で何かしらの理由により爆発事故が起きてしまったこと。
それにより俺が今怪我を負っていること。
俺の頭は混乱していた。
この医師が俺を騙そうとして言っているようには思えない。
だが俺の知っている情報だと日本には警察省なる組織はそもそも存在しない。
まず東京の警視庁を始めとする一番身近で地域を守ってくれている都道府県警察がある。また広域犯罪と各都道府県警察を指揮する警察庁があり、その上部組織として国家公安委員会があったように記憶している。公安委員会は逮捕権などの強い影響力を保持した警察組織を政治的に中立で尚且つ独善的な運営をさせないことを目的として設置された組織である。
これ以外の警察組織は聞いたことがない。
つまり日本のどこにも国家警察たる警察省という組織は存続しえないのである。
おかしな夢だとは思っていたが、身体の痛みも取れないし次第に夢なのかどうかも怪しくなってきた。
(ここでおかしなことを言うと病状が悪化していると思われるから何も言わない方がいいかもしれないな……)
そして先程出て行った彼女が部屋に戻って来た。涙を拭っただけの顔で、直前まで泣いていたようにも見える赤い顔をしている。
「先生二人だけにして貰えませんか。」
女性がそう言うと看護師が何かあったら呼んでくださいと伝え出て行った。
「ごめんね将太。あなたが一番辛いはずなのに私だけが泣いて。」
彼女は無理やり笑顔を作って笑ってくれたが、すぐに悲しそうな顔をしてしまった。
(名前も知らないしそもそも素人童貞だからこんな時どんな言葉をかければいいのかわからないが、彼女の悲しむ姿は見たくなかった……)
「そう言えば私の名前も忘れちゃったんだよね…… あなただけが私のたった一人の家族なんだから忘れられると本当にショックなの。うーんとね私は本間きいな。あなたと一生を誓いあった妻だよ」
最後まで読んでくれている方がいるか不安ですが
この文章をもし目にしてくださる方がいればとても嬉しいです。
ありがとうございました。