- 新人作家のシリーズものについて - 2(1)
「あれ? ここどこ?」
気がついたら、部屋にいなかった。
キョロキョロとあたりを見まわす。
上を見上げれば満月が煌々と地上を照らしているので、ここが外であることはわかった。
時間は夜中ぐらいだろうか。月の光のみで、街灯など人口の光はまったくなく、かなり暗い場所である。
それにこの匂い――。
「夢に匂いがついていることって今まであったっけ?」
草木がたちこめる匂い……これだけ濃く香るなら森か山か?
微かに風も吹いているのか、葉擦れの音も聞こえている。
「夢、だよね? 確か途中で寝ちゃったよね、わたし」
核爆発で異次元にすっ飛ばされたとか、ベッドにブラックホールが突如発現して吸い込まれたとか、一応作家の端くれだから思わないでもないが……。夢オチと考えるのが一番無難だよね、普通は。
とりあえず、自分は今眠っていて、ここは夢の国にいると納得させ頷いていると、小さな光が視界の角に入ってきた。
なんだろう? ここからちょっと離れた場所のようだ。
まずは現在地を把握するために光の方に向かって歩いていくと、手水舎の水に月の光が反射していたようだった。
「あれ? ここって……」
見覚えがある。
たしか近所にある小さくて古い無人で鳥居もない神社だ。
お賽銭箱も鈴もなく、祠のような社殿だけなので参拝する人など見たこともない。
そもそもどのような神様を祀っているのか、誰が管理しているのか、近所の人もまったく知らない超マイナーな神社だ。
木々に覆われた町中の一角にある神社。
常在する人もいないから、当然街灯など設置もされていない。
近隣の子供にとって、この神社は有名な肝試しスポットであった。
(ただし、なぜだか誰もここで肝試しをやろうとは実際にいい出さないし、実行されたことも確かなかったはずだ)
「……ちょっ、マジ、ここ怖いんですけど……。わたしなんかした? もしかしてお告げとか? いやいや、そういうの欲しいとは思うけど、それならもっと有名なところからの方が……」
暗闇の神社に自分一人。
いくら夢の中でもそんなシチュエーションは、耐えられない!!
急いでその場を離れようとしたとき、どこからか声がした。