☆メインストーリー 3-3 班分け
~仮想空間・夜のアクアリゾート
そこは夜の娯楽都市。
華やかな街並みそれを眼下に、屋根瓦の上を走りながら2人が刃を交えている。
1人は機械人形だろうか、花魁の姿で無機質に薙刀を振り回している。
刀を使い上手く弾きながら戦う紅の髪の女。
レイブン「へぇこれがじいさんがくれた武器の力か。
って危ねっ!」
急に距離を詰めてきた相手に、レイブンは尻餅を着く。
絶妙なタイミングで、頭上に刀が振りかざされた。
しかし突然機械人形に向け、カラフルな極太の水鉄砲が放たれる。
チャラ民「菓子魔法・ジュースプレット!!」
1000程の連続ダメージ表記。
何とか間に合ったと、こちらに笑いかける青髪の魔法使い。
手には淘汰から貰った新しい武器、風変わりな箒がある。
ゲージを見た限り殆ど敵を倒すに至らないが隙を作るには充分だった。
レイブン「コモンアサルト!」
スキルの名前は確かそんな感じか?
スキル。
仮想世界を管理するGMから得た力。
それを機能させるには、基本声でシステムに認証をさせないといけない。
ガキの遊びみたいで小恥ずかしいが、まぁ皆やってるから仕方ねぇか。
レイブンは色んな気持ちが混ざった笑みを浮かべ、赤く光り出した刀で機械人形の腹を鋭く突いた。
そして現れたダメージ。
500
表記はそれだけだった。
待てよ、チャラ民に全く及ばねぇじゃんか。
その次の瞬間には、近くの煙突まで体が吹っ飛んでいた。
レイブン「痛たた。
本当に、ここ現実世界じゃねぇのか?
リアル過ぎて、頬つねっても痛いし夢じゃない」
織姫「何HPギリギリで自分にダメージ与えてんの。
ほら治癒効果のある泡塗るから」
レイブン「ありがとう、ってそれこの前のヌルヌル魔法じゃねぇか!
気持ち悪いから塗るな!」
織姫「戦闘中にダジャレ言ってる場合?
ってか、変な名前付けないでよ!」
~現実世界・ギルドハウス
天裁「んで初心者用機械人形を倒せず決め手の欠ける戦闘を1時間と」
織姫「だって!
スミスが私の事泡姫とか意味分からないこと言って馬鹿にしたのよ!?
私の中のAI判定 (ちょっかん)が最低レベルの侮辱って、判断したからそうだわ!」
スミス「いやそれはすまん……」
天裁「とにかく今回の採点です」
俺、淘汰達は空飛ぶギルドハウスの中、戦闘シミュレーション室で会話をしていた。
アクアリゾートに着いた直後、天裁の提案で二チームに分かれ特訓をするためだ。
指南役にAチーム、スミスと天裁。
Bチームに俺とねこさん。
この組み合わせには三つ理由がある。
ギルマスとサブマスを分ける事。
主な指南をする天裁と俺を分ける事。
ねこさんが執拗に天裁を避ける事で決まった。
次の行程としては指南を受けるメンバー編成だ。
そこで最近スミスが導入した、戦闘シミュレーターを使った。
それが先程の戦闘だ。
三人して喧嘩したりドジしたりでいつも通りだなって感じた。
しかし天裁はイライラしていた。
天裁「0点です。
全員0点。
総合しても0点です」
レイブン「はぁ?
てめぇ喧嘩売ってんのか!?」
天裁の胸ぐらを掴み始める、レイブン。
俺は慌ててその腕を引っ張った。
淘汰「あわわ、ダメだって!
仮にでもアンタ先生なんだろ?」
レイブン「ああ、ごめん。
皆真剣にやってたのにムカついたからさ」
すぐに熱が冷めて手を引いてくれた彼女。
本当ヤンキー上がりって感じで怖い。
まぁでも気持ちは分かるよ。
言いたい事を胸にしまう。
それを見た天裁はメガネをクイッと上げた。
天裁「試験において真剣に頑張ったから点数をあげるなどありません。
問題が解けたから点が入るのです。
結局あなた達は、初心者向け機械人形を倒せなかった。
倒した上で点数を考えるとしたら0だ」
チャラ民「ごめんね。
あの戦いで1番Lvが高いチャラ民が役に立てなくて……」
帽子を深く被り直し、気を落とす彼。
それを見て俺はため息をついた。
倒せなかったから0点か。
少し頭を整理すると自分の背丈よりも高い天裁の前に肉薄した。
淘汰「こいつらは100点だと思う」
天裁「ほう?
貴方まで何を根拠にそのような事を」
淘汰「生きてるからだ」
天裁「は?」
戦場に近い場所。
文字通り地獄と呼ばれる場、そこで戦った時の記憶が戻った。
そこでの戦いは、如何に倒すではない、生きている事。
それが勝利に繋がった。
淘汰「倒しても死ねば次に繋がらない。
だから俺としては生きてるだけで100点。
何に重きを置くかで点数は違うだろうがな」
天裁「それは自身に言いかけてませんか?
ただ確かに私も人の事は言えません……」
俺は持論を呈して、説得しようとしたつもりだった。
しかしその言葉にどもってしまった。
前半の言葉は現状の天裁、後半は犠牲としたMr.Bが脳裏に見えたからだ。
それ程まで自分を追い込んでいるのか?
するとスミスじいさんが大きく咳払いした。
スミス「ごほん!!
……げほっげほ。
すまん、調整ミスってでか過ぎた。
喉が痛いし自分でびっくりしたわい。
じゃなかった。
まぁ熱を入れるのは良いが、今回の編成について話を戻そうや。
攻めに重きを置く連中、守りに重きを置く連中。
その二班で編成を考えればいいのでは?
では指南側の編成について感じた事だが。
Aチームは火力役、Bチームは鉄壁役。
で戦闘方法がうまく分かれてる。
この際だから面倒くさい事せずどちらを学びたいかで考えよう。
仲の悪さはこれからなんとかすりゃいい。
むしろここまで喧嘩できるなら、わしは安心だよ」
淘汰「すまない」
天裁「元は仲間を駒程度しか考えて無かったのですが、あの男のせいですかね。
熱くなるほど甘くなってしまった」
チャラ民「カフェモカぐらい甘いかもね」
天裁「微糖くらいにはなりましたよ」
チャラ民「なんだ冗談通じるじゃん」
先程のイラついた表情とは違い、普段の落ち着いた微笑みを見せる天裁。
ギルメンの中で信用がしにくいと思っていた男。
悪意や選民思想がある印象であったがその様子を見て不思議と善意も感じた。
不意に織姫が歩み寄ってくる。
俺のしっぽを掴むと、口を開けたり閉じたりしている。
淘汰「どうした?」
織姫「弱いけど連れてって欲しいなって」
チャラ民がニコッと笑う中、ねこさんが唇を噛むのが見える。
重い判断と一瞬粥自他がGMの長を体に宿すこいつが殺られると、仮想空間がどうなるか分からない。
だから優先して守れるやつが、守らないといけない。
織姫が再び口を開いた。
織姫「何故淘汰を探していたかの理由。
それはあなたなら彦星から守ってくれるって、お母さんが言ったから」
周りから驚く声が上がる。
俺自身も初めて聞く話だ。
敢えて触れないでおいたのと、天裁にも強く圧をかけ、本人が自分から話すのを、待たせていたのもあったからだ。
淘汰「何が起こるか分からないから、なるべく聞くのを避けてたんだ。
みんなで相談した結果でな。
お前から自分の事話すまで」
織姫「ありがとう。
でもごめん、その期待はまだ応えきれない。
私は人間の事を知る度に、記憶がインストールされていくの。
入った情報は母親という存在がある事。
そして彦星って脅威が存在する事。
本当にごめんなさい。
もっと一生懸命人間の事を知って、皆に話さなきゃいけない事話すから」
何度も謝る織姫を俺は初めて見た。
その様子を見たスミスは髭を撫でる。
スミス「ある意味、暗示じゃな。
人間の事を知る事は依代としてるGMの長、GGMにとってプラスになる。
そして自身の情報を報酬とし、織姫に与えることで周りにとっての存在価値を得る。
だから人間を知りたい。
それが最初に出た言葉になったんじゃろ」
チャラ民「そんな可哀想だよ。
それってGGMに利用されてるんじゃ……」
天裁「まぁ、依代となったGMの生存率を上げるために、その存在価値を見出すのは悪くない方法ではありますが」
ねこさん「存在価値っすか」
その言葉を聞いて織姫はうつむいた。
そうかこいつはこいつなりに、皆に必要とされたかったんだな。
だから治癒術もあんなに急にこしらえて。
織姫「役に立つから。
置いてくれるだけでいい。
人間の事知るのは楽しい。
だからまだ生きていたい」
その言葉を聞いた時に、レイブンが耐えきれずに声をあげた。
レイブン「おい、見捨てんのか!?
それがegoのやり方なのかよ!」
淘汰「それは違う!
織姫も勘違いすんな!
俺らは責任をもって己が我儘に生きてく!
そして去ってくんなら!」
スミス「地獄まで追いかける、それがギルドegoの掟じゃけぇ!
まぁそんな縮まらず仲良くやりましょ」
織姫「……!?」
驚く表情を見せたが、今度は涙を流しながら笑みを見せた。
織姫「可笑しいわね。
嬉しいのに涙が出る。
私とち狂ったのかしら」
淘汰「またエモーション機能をじいさんが増やしたのか?
でも人間は確かに嬉しくても涙は出るもんらしい」
発進し空を駆けるギルドハウスは、アクアリゾートへ到着する。
謎の脅威、彦星と新たな敵も増えたが、俺らは俺らで立ち向かいたいと思う。
~仮想空間・アクアリゾート闇市場
カイザー「あのう、ビショップさん。
アクアリゾートの治安に悪いもの。
そしてGGMに関わるものを見つけ次第、消してく方針なんすけど。
なんで皆倒しちゃうんですか?」
ビショップ「そりゃ、決まってるじゃないですか!
闇市場は悪いやつしかいない、ってことは倒してもいい!
倒してもいいものはGGMに関わるものなんですよ!」
カイザー「いやぁ流石です。
ロストすれば直前の記憶も消えます。
犯人が誰か知る目撃者を隠滅出来ますからな」
背が非常に高い二人の男女。
その周囲には凄惨な光景が拡がっていた。
壊れた街並み。
何百人ものロスト者。
そして真っ赤に染った風景。
彼らはVipuumに名を連ねている中でも、歪んだ勧善懲悪の持ち主だった。




