☆メインストーリー 2-6 モノクロのパンダ※挿絵有
~仮想空間・アダマス鉱山採掘場
天裁「モノクロの世界に白はあるべきか?」
Mr.B「モノクロの世界に黒は必要かい?」
ギルド襲撃事件の黒幕は2つに1つの問いを同時に投げかけた。
織姫とレイブンがパッとしない表情の中、チャラ民には意味が通じていたようだ。
チャラ民「黒派、白派の事だよね?
モノクロで世界を見た時、地上は黒。
天上は白と表現されることが多い。
地上に存在する人間と天上に存在するGM、どちらに付くか。
ということ?」
質問者達が頷くのを確認すると俺は周囲を見回した。
白か黒か。
するとチャラ民が声を上げた。
チャラ民「少なくとも黒を選べば、人間主体の世の中を目指す、Vipuumを敵には回さないよ」
織姫「その行為はGMを捨てる事になる。
私達、GMを敵に回すことにはなるわね」
それに反応し織姫は声を投げかけてきた。
織姫「ただ隠し事や嘘はあたし嫌いなの。
言うなら思ってる事ちゃんと話しなさい。
黒か白かよりも事実が私にとって大事だから」
全員の視線が集まる。
人間かGMか。
皆白黒付けたがる。
俺は深呼吸をして喉の奥から声を出した。
淘汰「俺は人間が大嫌いだった。
平気で嘘を付くし、嫌悪や私欲の為に簡単に人を陥れる。
集団になれば優劣を付け差別し、そして同族すら自殺にまで追い詰めることがある。
俺が仮想空間で人間の姿を捨てたのは、そんな真っ黒な人間でいる事に疲れたからさ」
予想外の解答なのかは知らないが、チャラ民達の表情が暗いものに変わった。
その表情は納得のいかない者が見せる、それに酷似している。
そりゃあ納得しないだろうな、事実や根拠が提示せず、持論を展開されれば。
俺は再び口を開く。
淘汰「これは簡単で限りなく身近な例だ。
仮想空間を提供しているGMについて。
それを利用する人間は、本来感謝しなければならない。
しかし目障りだから消そうとする恩知らずさ、これが人間の黒さの証明だよ。
モノクロの世界の黒。
まさにそれは人の黒さをよく表した、良い表現であるわな」
レイブン「じゃあお前は逆にジェノサイドの対象を人間するってのか!?」
響く声と共に胸ぐらを掴まれる感覚がし、目線を下ろすとレイブンが非常に鋭い顔をしてこちらを睨んでいた。
返事をしようとした途端、大きな笑い声が天裁から響く。
天裁「はっはっは!
当たり前でしょう、彼は元三大PKギルド初代総帥。
この仮想空間では罪に対しての裁きは軽く、重罪人を野放しにされてきたのです。
彼が活躍した時期は正義を称し、処刑人としてそのような罪人を消してきました。
アンスが総帥の地位を退いてからは、無差別にアバターを殺すだけの、PKギルドになったそうですがね。
やはり人間が敵なのでしょう?
だから大義名分を元に、真っ黒な人間達を殺してきた。
あなたには黒派になる理由が無い!」
レイブンから歯ぎしりの音が聞こえる。
俺は目を閉じて肩をすぼめた。
淘汰「さて?
いつから俺が人間が敵だと言った?
黒か白か?
俺はどうでもいい。
なぜなら、もはや諦めたからさ」
レイブンから掴まれた胸ぐらが外れ俺は静かに周りを見回しながら話し始めた。
淘汰「誰かに嫌悪感を持っても仕方がないんだ、誰かを嫌う事を口実に行動を起こす事、それ自体には何の意味もない。
判断基準が主観によるものに狭まるからだ。
好む事はできなくても嫌いになる事に利益はない、だから諦めた。
そして視点を変えただけで、初めて周りの温かさに気付き、触れることができた。
egoのスミスやねこさんそしてこいつらのお陰で」
今のパンダに姿を変えたのは、じいさん達との出会いがきっかけだ。
GMと人間どちらも笑って生きていければいい。
そう願いを込めて白黒のパンダの姿となった。
そして今までの罪のけじめとして、今までの見た目や戦闘ステータスを捨てやり直したんだ。
俺は視線を天裁達の前に向けると強い口調で訴えた。
淘汰「お前が言った無力、無意味、無価値な奴らは、俺に尚も人間の温かさを教えてくれてんだ。
人間だろうがGMだろうが皆笑って生きてければそれで俺はいいと思う。
だってパンダには白も黒、どっちも必要だろ?」
後ろから声がする。
チャラ民「淘汰の人間に対しての思いは、複雑だけどチャラ民は概ね賛成だよ。
皆笑顔が1番!」
レイブン「自分なりのけじめがあるんならはっきり言いな、ぶっ飛ばす所だった」
織姫「人間って何でこうも単純な事実を複雑に述べるの?
でも事実を除いた部分が人間の心なのかも。
あーあ、やっぱ面倒くさい」
各々がその意見に対して口々に述べた。
どれも考え方は違うが完全に肯定する訳でも、否定するわけでもないようだ。
その様子を見て、天裁は少しずつ余裕が欠け始めたのか、明らかに焦る姿が目に入る。
しかしそれとは対照的にMr.Bが不敵に笑い始めた。
Mr.B「はは、あなたの理想は猩騎士団の団長JINYAさんと全く同じだ!
しかしとある点で正反対である。
JINYAは人間を愛し、あなたは人間を愛さない。
ぶつかる点は多そうですが似ているのかもしれませんね」
そしてその言葉を聞いたのか、震えた手で天裁が眼鏡を取り、握り壊した。
蒸気が出るほど顔が赤い。
天裁「本当に、猩の団長さんといい。
淘汰さん、あなたといい。
その言葉の通りですよ!
二人とも似ていて、全く私を怒らせるのが非常にお上手ですね!!
ここまでくるとVipuumと一緒にいる方がマシな位だ!」
チャラ民「淘汰っ!!」
チャラ民の悲鳴が聞こえると、いきなり彼は俺に光の槍を持って肉薄してきた。
なんとか、避けながら攻撃のリズムを見極める。
足元を払いながら上段突きを織り交ぜる。
その型からすると槍術の基本型だろうか。
だとしたら払いをブラフに、必殺を突きに集中させるだろう。
天裁は青筋を立てながら、素早く殺気の込めた攻撃を繰り出していた。
天裁「あなた達はいつもそうだ!
力がある身分の癖に、いつも余裕でいて何の行動もしない!!
何が世界平和だ!
選択肢を選ばず、その真ん中で座り込む臆病者が何を得られるのですか!?」
淘汰「確かに全員が笑える世界は不可能だろうな。
だけどそうなるように努力するのと、しないのとでは違う」
天裁「それすら口だけだ。
行動を起こしてきた私に、あなたが取る態度はそれだけだった。
あの事件でレイブンに一方的にやられた時も口だけ、仲間が裏切られても口だけ、そしてここまで言われても口だけじゃないか!
……槍術『サンドランスファング』!!」
彼は唐突に槍を地面に叩きつけると、地面が隆起し氷柱のようになった、石の牙がこちらを襲う。
タイミングよくステップを踏み、一つ一つ丁寧に避ける事を意識しかわした。
そして後ろにいたチャラ民達に被害を及ばないように誘導する。
織姫は悪態を付いていたが、完全に頭にきていた天裁は人差し指を向け、怒鳴った。
天裁「熱閃魔法!!」
淘汰「それはやべぇ!!
チャラ民、ごめんお前の杖借りる」
チャラ民「え!?」
天裁「『デストラクションフィンガー』!!」
その一本の指から一筋の超高濃度の光が放たれた途端、あまりにもの速さから、予想した軌道に杖を投げることしか出来なかった。
経験則に頼って投げた杖だが、その光に上手く重なったようで、光に触れた途端大爆発を起こした。
降り注ぐ瓦礫を命懸けで避け、気が付くと何とか収まった。
Mr.B「ちょっと、軍師さんやり過ぎですよ。
貴重な鉱山資源が壊れたらどうするんですか?」
天裁「うるさい!知った事か!
私がいくら行動してもこの男は何もしないんだ、力を持ってるはずなのに。
なら本気を出すまで徹底的に攻めてやる」
煙が引き仲間の安否を確認していた俺に、揉めている二人の声が聞こえた。
すると怯えた声と共に、腕に何かがしがみつく感覚がした。
チャラ民「殺されちゃうよ助けて……」
視線を下ろすと、自身の血で汚れたチャラ民が抱きついていた。
瓦礫が落ちて大ダメージを受けたのだろう。
織姫がその後ろに倒れているのを見える
チャラ民が咄嗟に庇ったのだろうか。
すると横からも声が聞こえた。
レイブン「二人で一番の雑魚を庇おうとしたんだけど。
ははは、わりやっぱあっしら無力だわ」
声や顔では笑っても、悔しさだろうか。
レイブンの目から涙が出ているのが見えた。
戦闘は避けたかった。
悲しむ人が必ずいるからだ。
だけどしない事でもっと増えるなら……
淘汰「俺が行く」
震えたチャラ民をレイブンに託し、倒れた織姫を見て天裁の方を見た。
天裁「はっはっは!
やっとだ!
さて礼には報いましょう、朗報です。
私にはもうひとつ奥の手が」
天裁が嬉しそうに表情を変えた途端、声が徐々に止まるように遅くなり始めた。
周囲の動きも止まり、色が消え初め、何も聞こえなくなる。
そこはモノクロのような世界だった。
音もなく、色もなく見えるのは白黒の景色だけ。
淘汰「黒祓い!」
そこにたった一つ変わらないものがいた。
パンダだ、彼は歩みを進めた。
握りしめた拳に、白い光が灯った。
歩くごとにそれは激しく燃える。
その白い炎を振りかざそうとした時。
モノクロの世界でもう一人動く者がいた。
Mr.Bだった。
彼が庇い燃えた途端、モノクロの世界に色が戻る。
Mr.B「これが、あなたの本性ですか」
淘汰「!?」
天裁「体が動くようになった。
今のモノクロの世界は一体!
それに庇うとは何事だ駄美男子!」
Mr.B「あー、私ならこの炎は効かないのでお構いなく。
軍師さん、敵にならなくても良い相手もいます。
そして敵に回してはいけない相手も居るはず、落ち着いてください
その程度の事ならあなたなら言わなくても分かりますよね」
後ろにいた、チャラ民達も一瞬の間に、起きた現象に気付き声を上げている。
織姫も意識が戻ったようで俺に声をかけた。
織姫「安心なさい、気絶してただけ。
ただこの炎は?」
淘汰「黒、つまり人間を焼く炎だ。
魔力を全て消費して使うから、今の魔力は0の状態になった」
天裁「つまり、あなたは人間ではないと?
そういうことですね、Mr.B」
Mr.B「おやバレてしまいましたか」
すると奥から足音が聞こえる。
数は四人だろうか?
まさか、こんな状況に!
とてつもなく嫌な予感がする。
淘汰「お前ら一時休戦だ!
とんでもない奴らが来る!!」
体が急激に冷え全身から汗が止まらない。
俺は走り、入口から現れた者達に対峙した。
課金「ドンドンハローVipuum!
どうも、課金です」
そこ現れたのは四人、仮想空間最強の戦闘組織、Vipuumであった。




