☆メインストーリー2-5 裏切り ※挿絵有
~仮想空間・アダマス鉱山採掘場
淘汰「おい、何があった!?」
俺、淘汰は織姫と地鳴りが鳴った場へ走ると、そこには崩れた大きなゴーレムが見えた。
近くには杖を構えるチャラ民と服が真っ赤に染まったレイブンが立っていた。
この世界では傷は発生しないものの、血は出るため相当ダメージを受けたのがわかる。
俺は真っ先にレイブンの方へ走ると、彼女はかなり興奮した状態だった。
肩に軽く触れると瞳孔が開き切った状態でこちらを見た。
レイブン「Mr.Bが裏切った」
淘汰「なんだって!?」
俺はレイブンに回復薬を用意し手当をしていると後衛にいたチャラ民が説明した。
チャラ民「あいつ姿を消したと思ったらこんなゴーレムが現れてレイブンが庇ってくれたんだ。
彼女はガッツがひたすらかかる特異体質だから……」
淘汰「だがLv1には変わりない。
無理に戦わず逃げるのが最善だったな」
チャラ民「ごめんね」
淘汰「そもそも奴を信じ切ったのが悪い。
俺こそ本当にごめんな」
傷が消えたのを確認すると、静かにチャラ民と自分の行為を諭した。
どうやらレイブンを的にして、魔法を放つのに集中が必要なチャラ民は、後衛で戦っていたのだろう。
俺の独断で申し訳ないことをした。
心の底から落ち込む中、奴の陽気な声が響く。
Mr.B「beautiful!
まさか彼の魔術宝札を倒すとはお二人は実にビューティフルコンビですね!」
淘汰「裏切りとはどういうつもりだ?
まさかギルド襲撃事件の黒幕はお前か?」
織姫「黒幕にしては間抜けな口上ね」
暗闇から拍手をしながら現れたMr.B。
俺は流石に仲間をやられて、それでも黙る程人間が出来てなかった。
問答無用にその話題に触れると、織姫が反応した。
Mr.B「先に讃えさせてください。
Vipuumの大魔女・ねるの弟子チャラ民。
淘汰に勝ったLv1、レイブン。
あなた達は伸びしろがあります」
チャラ民「なんでその事を……?」
レイブン「あっし実質パンダに負けてんだよな。
てかなんでその事も知ってるんだ?」
Mr.B「襲撃事件の現場を黒幕さんと観ていたからですよ」
俺はMr.Bの前に立つと睨みつけた。
不思議だ。
奴は先程に比べ能力が急上昇している。
覚悟を決め、踏み込みを入れた。
今まで会った奴らで、最低でも指折りにこいつは強い。
一瞬気を抜けばロストもありうる。
淘汰「悪いことしても煽てれば許される、と思ってるなら随分と都合がいいよな?」
不敵に笑うMr.Bを真剣に見つめ、いつ来るか分からない攻撃に身構える。
すると彼の背後から別の男の声がした。
天裁「そこまでです。
ここまでありがとうございました。
駄美男子さん」
Mr.B「厄災軍師さん、礼には及びません。
思ったよりこのギルドの皆さんは、とても暖かいですね。
久々に心が暖かくなりましたよ」
突如首元に何かが飛ぶのが見え、後方に跳躍しギリギリで避ける。
先程立っていた場所に、光の槍を持ったもう一人の男が見えた。
天裁「本気の奇襲でしたが流石の実力ですね」
彼が手放すと、その槍は姿を消した。
魔法の一種であろうか?
そして彼はメガネをずり上げると、俺を指差し声をかけてきた。
天裁「私の名前は天裁。
レイブンによるギルド襲撃事件。
そしてMr.Bの裏切り行為。
あなた達が持つ疑問に対して。
単刀直入に言いましょう。
……全て、私が黒幕です」
俺は初めて見る男に驚きを隠せなかった。
白髪に白い服、そして印象的な赤縁眼鏡。
黒幕には見えない、明るい誠実な容姿だったからだ。
Mr.Bが畳み掛ける。
Mr.B「ついでに言わせてもらいます。
私とモノクロビューティが、知り合いであるように強要したのも、厄災軍師さんの提案です。
バラせば今回の事件を迷宮入りにすると」
チャラ民「酷いよ!
淘汰はすぐ一人で抱え込むから、そんな事したら」
天裁「ええ、知っての上です。
淘汰さんは計画において一番必要で、一番邪魔でありました。
なので性格から過去まで、念入りに調べさせてもらいました。
まあ、前から話さなきゃいけない事を隠すようなブラックな方でしたからね」
織姫「ちょっと、どういうことよ?」
仲間が俺のことを見つめる。
何が目的だこの男は。
どこまで俺の事を知っているのか?
途方もない不安感が拭えない。
その時だ、太く強い声がした。
レイブン「うるせえ!
他人の過去を、手前がベラベラ喋るんじゃねぇ」
天裁は一瞬怯んだが不敵に笑った。
天裁「それが話さなければ進まないんですよ。
ねぇ、三大PKギルド初代総帥アンス」
みんなの声が消える。
心臓が止まるように感じた。
天裁の言葉は止まない。
天裁「PKギルド、つまりアバター殺しを主とした、暗殺集団の親方ですよ。
名前や姿を変えてカタギに戻ったつもりですが、隠しきれませんね。
あなたの過去については大量に出てきますよ。
猩騎士団精鋭部隊、一番隊隊長。
Vipuum副顧問。
地獄最古参の生き残り。
一人で複数のVipuumを倒し、初代最高顧問のゼウスにも牙を剥き、GMから権限をいくつも奪った人間。
等キリがありません」
チャラ民「ど、どういう事?」
Mr.B「まぁ、流石に多くはフェイクと私は信じたい。
しかし淘汰ではなく、その"アンス"という名前の人物は、確かに猩騎士団の精鋭に所属してました」
天裁「まぁ2年前のお話ですから。
何者かに消されていた情報が多いので、定かではないです。
その何者かは明白ですが。
さぁこれが本当なら私達は、その本人に関わってはいけません。
それでも関わらないといけない理由があります」
淘汰「人のこと散々言っておいて、仲間まで傷付けて、何も無いなら容赦ないしな」
織姫「淘汰……」
天裁「これから仮想空間最強の団体であるVipuumはGMを壊滅させようとしてます。
あなたはこれから重要な決断をする必要があります」
「!?」
俺たちは思わず息を飲んだ。
その反応に天裁は眼鏡を取り、軽く握ると話を続けた。
天裁「猩騎士団は中立な立場を取っていますが、内部分離が避けられないでしょう。
GMを恨む者があまりにも多いのです。
シンギュラリティが起こり、たったの5年で人類の在り方は変わりました。
彼らは生活だけではなく、家族構成まで介入し人生を変えたのです。
それに対して恨むものが多い。
Vipuumは最高顧問、つまりリーダーの課金を筆頭にGMを嫌悪してます。
近いうちにVipuumが猩騎士団と協力しGMのジェノサイド計画を実行するでしょう」
チャラ民「じ、ジェノサイドって大量殺害ってことだよね?
そ、そんな!織姫達殺されちゃうの?」
チャラ民は無表情な織姫を見つめる。
天裁は笑いながら、その言葉に追い討ちをかけた。
天裁「ええ、GMも仮想空間においては人間の体を持っております。
苦痛を味合わせながら一人一人嬲り殺しするでしょう。
でも可哀想な事に感情を持ってないので、無機質な『ヤメテクダサイ』という声と共に、死体が積み上がっていくでしょうね。
……おや?恐ろしい殺気ですね?
さすが闇団体の元総帥なだけあります」
唇を噛み血が滲むのが感じた。
悪い癖だ、いつもこうして言葉を殺している。
言葉を殺してるはずなのに言葉を思いつかない。
ただ叫び、怒鳴りたいだけなのかもしれない。
その時だ。
織姫「言葉にも限度があるわよ、雑魚!」
天裁「はい?」
織姫「淘汰は悪いやつじゃないわ!
散々陥れようとしてるけど、少なくとも私には全く効果は無いわね!」
俺は最前線に立ち腕を組む、無謀な織姫を止めようとした。
しかしそんな俺を遮るように、チャラ民も前に立った。
チャラ民「チャラ民は怒ってる。
隠し事や嘘は良くない。
けれどそれは関係なくて、下手に気を使って、抱え込んでる淘汰に怒ってる。
ただそれ以上にそんな淘汰を利用して、騙したお前達に怒ってる!」
2人が前に出て俺は焦った。
ここは俺が引き受けて、彼らを守らないといけない立場なのに。
すると横からレイブンに肩を叩かれた。
前の2人が心配で目線は逸らしたまま動かせない。
それにも関わらず、横に並ぶと一言声をかけてきた。
レイブン「けじめは付けたのか?」
それは俺は過去に起こした行動へ問いだとすぐ分かった。
怒りも心配が渦巻く感情の中、確実に間違いではないその思いを言葉にする。
淘汰「ああ」
するとレイブンは俺の視界に入り、にやっと笑う。
そして歩き出しチャラ民と織姫よりも、前に立つと、チャラ民から貰ったアイスで出来た片手剣を取り出す。
淘汰「お前ら……」
織姫「私達そんなに頼りないかしら?」
天裁は落ち着いた表情でため息をついた。
そして一呼吸おいて、俺の心を勝手に代弁するように答えた。
天裁「立ち向かう相手が悪過ぎて、信頼してもってのが答えでしょう。
しかし最近のGMはおかしいですね、感情を持っているなんて。
よろしいですか?
あなた達は現実世界に慣れすぎて、仮想空間において一人の力に何百、何千倍も差がある事を知らない。
あなた達3人が束になっても無力、無意味、無価値なのです。
あなた達が合計数百人いて、やっと私に並ぶ程度でしょう。
そこにいるパンダはそれ以上の価値があるのです」
無力、無意味、無価値か。
俺はその言葉が自分に非常に刺さる気がした、短い人生においてどれも言われ続けた事だ。
すると天裁はやっと本題に入った。
天裁「さて淘汰さん、GMジェノサイド計画の話を聞いた上で重要な決断です。
白と黒どちらかをあなたは取るか?
つまり……」
様子を黙って見ていたMr.Bが天裁とアイコンタクトを取った。
そして同時に問いを投げた。
天裁「モノクロの世界に白はあるべきか?」
Mr.B「モノクロの世界に黒は必要かい?」




