☆メインストーリー 2-4 リビングデッド
チャラ民「ほら、そこらを歩いてるのがGMが指定してる有害なAI、LDだよ!」
鉱山に早速入るとチャラ民が奥に点在している物を指さしそう言った。
宝箱や岩、水でできた球体、ろうそくの火などのオブジェクトから白目を向いたゾンビのような見た目のアバターが不規則に徘徊している。
レイブン「なんか予想と違うな。
モンスターのような印象だったんだが」
淘汰「この世界では壊れた物や死んだ物が動き出すことがある。
しかも倒したところでいずれ復活しこの世界に居座る。
こいつらをリビングデッド、LDと呼んでいる。
普通に襲いかかってくるから倒すのが定石だ。
奴らを少しでも無力化するだけで、GMへの手柄になるからな」
俺は特に白目を向いたゾンビを見つめため息混じりに解説をした。
その内容に気になる点があったのかMr.Bは俺に質問をなげかける。
Mr.B「居座る?
彼らは特例を除いて倒されれば粉々になるはず」
淘汰「意志を持つ核があるんだよ。
そいつが納得しなきゃ復活する。
長話は置いといてMr.B、お前ここを攻略しに来たんだろう?
どこまで行くのか教えて欲しい、それ次第で俺達の行動が変わるからな」
Mr.B「おっけー、モノクロビューティ。
さぁ、ビューティフルフレンズ聞きたまえ!
今回は鉱石採取フロアを目指す!」
淘汰「お、中間地点か。
丁度いいさっきに行っててくれ。
ここの範囲の敵は俺がヘイトをとるから」
レイブン「ヘイト?」
淘汰「敵の目を盗むって感じの意味だよ。
2人とも後でチャラ民から貰った武器見せてや。
そんじゃ」
俺は早速走ると足元の石を蹴ってLDに1体1体に的確にぶつける。
ダメージはたったの1だが20体程が一気に集まり追いかけてきた。
織姫「あ!淘汰がやられる!」
チャラ民「パンダなら大丈夫!
行こう!」
織姫「私も残る。
そこまで淘汰を信じるなら私が居ても平気なはずよ?」
Mr.B「仕方ないですね。
緊急時は即遠隔チャットにて連絡をお願いします。
では私達はレイブンさんにダンジョンにおいての心得を」
チャラ民「じゃあ先にこの武器をあげる。
列車内でちょっと教えた事やるんだよ?」
Mr.B、チャラ民、レイブンの3人がダンジョンの奥へ進んでいくのを確認した。
俺は30体程集めた時点で立ち止まる。
織姫「淘汰!
今守るわ!教えて貰ったの!
この杖を振るうだけで使える、守りの魔法!」
織姫はチャラ民から習った支援術を早速試してきた。
戦いが嫌いな人は、戦ってくれる人をアシストする事が戦いだ、と彼が車内で、言っていたのを聞いたな。
チャラ民から貰ったらしいペロペロキャンディの杖を一生懸命振り、こちらに青いオーラを飛ばすのが見えた。
だが、
Miss
織姫「え!そんな!淘汰!」
何度やってもMissという表記が出る。
そいやバフデバフ効かない体質なの知らせてなかったな。
すると集まったLDから攻撃が集中する。
ロウソクの炎が襲い、岩が顔に飛び、剣のように尖らせた水の塊がつ腹に斬りつこうとし、宝箱が足を食おうとし、ゾンビが槍で突こうとする。
万事休すだ。
まぁ、そこが地獄だとしたらの話だが。
Miss Miss Miss Miss Miss Miss
淘汰「痛くなーい」
俺はくねくねしながらその攻撃を避けていく。
織姫「あんた!
HPが極端に少ないって聞いたわ。
ふざけてる場合じゃないでしょ!」
連続するMissの表示。
背後からの攻撃を避けながらも、肩を竦めて俺は織姫の方をみた、わざとふざけたのは安心させる為だったのだが。
しかし彼女の反応初めてだった。
大体皆は安堵や苦笑いなどといった物だが、織姫が見せた表情は悲しみだった。
織姫「淘汰」
淘汰「ん?」
織姫「今のあなたの姿に私はずっと憤りと悲しさを感じてる。
あなたの他の人から離れて、何でも背負って、いつ最悪があるか分からない中強がりに笑う、その行為。
私を引き離したのは理由があるんじゃないの!?」
淘汰「……。
すまんなLD達、1人残して全員1度塵にする。
今度会う時ゆっくりしようや」
俺は予想外の事態に行動を変えることにした。
前方宙返りをして織姫の前に立つと石を掴み一体一体の急所を精密に狙い投げる。
近い奴らから頭に直撃すると、次々とDCの表示が出て塵となった。
残りの1人ゾンビとなっているアバターは頭の中心から少しずらして当てると気絶との表示が出る。
これで少しは時間を稼げるか。
織姫「あなたの事はまだよく分からないけど
一連の動きでなんとなく感じるの。
あまりにも殺し慣れている」
その言葉を言う人間は憎悪や憤りや失望の表情をする。
だがこのGMやはり人とズレていて寂しさや悲しみの表情を見せてきた。
織姫「確かにあなたに比べ周りは出来ないことは多い、それでも頼れることは必ずあるわ。
だから今まで頼らなかったって事は周りがあなたを信頼しても、あなたは周りを信頼してなかったってこと。
それがなんか胸を刺すというか」
淘汰「悲しいのか?」
織姫「それとも違うの。
こう青色だけど薄い、何かを足したいくらいの。
これが寂しさなのかも。
……あ、淘汰!」
するとLDが立ち上がりこちらに飛びかかって来た。
しかし俺はそれを目の前に手を広げる。
淘汰「俺は戦う意思はない」
織姫「え?」
LD(死因:集団暴行死)「僕の死んだ理由が分かるかい?
自分の死因を思い出せば記憶をとりもどせる気がするんだ。
僕は自分の名前も分からない」
織姫「え、え?」
織姫は急に武器を落とし話し始めたLDに驚く。
淘汰「LDはどんな姿でも死因を知らせ、会話をする事によって救うことが出来る。
どうやらお前の体の主は複数の何かに攻撃を受けたようだ。
ダンジョン内では人間同士殴り合う事も可能である。
PKつまり、プレイヤーキルの可能性が高いな」
LD「ああ、そうだ!
ここの警備をしてたんだ!
僕は下っ端だったから。
でも弱くて何回も負けたある日。
ダンジョン内で集団リンチを受けたんだ。
痛みのあまりに体の持ち主はログアウトしちゃって。
そしてロストした訳か!」
織姫「な、なんて酷いの」
淘汰「あんた、色々思う事はあるだろうがこれは決まりでな。
本来の経緯を思い出したら天国に戻る事になってる、何か言い残すことはあるか?」
LD「猩騎士団に入れてよかったって本人が言ってた。
彼に見合う強いアバターで居られず、迷惑をかけた僕がこんな形で、また人様に迷惑をかけて申し訳ない。
でもすっきりしたありがとう」
彼は最後には白目が戻り、生前の姿を見せ笑うと、光と共に消えていった。
俺と織姫は立ち尽くしていた。
織姫話しかける。
織姫「あんたこういう事を裏でやってたのね」
淘汰「ああ、LDは倒しても殺せない。
納得させなきゃだめなんだ。
だがそれをするのには適正レベルは倍以上に跳ね上がるがな。
じゃいくか」
俺はため息をついて、先に行ったチャラ民達を追いかけようとした。
その時織姫は立ち止まり話しかけた。
織姫「ねぇ」
淘汰「どうした?」
織姫「なにも思わないの?」
淘汰「なにを?」
織姫は眉を釣りあげて強い口調で言う。
織姫「猩騎士団の事よ!
逆にここまで気になる私がおかしいの?
だってさっきの話、絶対あのLDもアバターの持ち主も悪くないじゃない!
なのに集団で襲われて殺されて……」
顔を覆う織姫に、歩み寄るとこう言った。
淘汰「正直、猩騎士団の存在自体も悪くない。
悪いのは人間誰もが持っている心の闇だ」
俺は奥歯を噛み砕くように言った。
そして織姫の肩を軽く叩くと
淘汰「いくぞチャラ民たちが待ってる。
後今回お前を引き離した理由は、この依頼が終わったら話すわ。
ついでにぷち姫も速攻で戻してもらうようにじいさんに懇願する」
織姫「絶対よ。
嘘ついたらぶっとばすわよ」
淘汰「お前ほんとそれ好きだな」
ここまで言ってやっと動き始めた織姫に、苦笑いすると大きな振動に気づいた。
奥から地鳴りと声が聞こえ、嫌な予感がする。
俺らは静かに頷くと、先に進む彼らを追いかけるように走っていった。




