・キャラストーリー「コンビニ店員 織姫編」※挿絵有
~仮想空間・A17地区コンビニ
織姫「Hello!
英語もできる美少女店員織姫よ!
実は学校で習う、いらっしゃいませ
May I help you ?
はコンビニの挨拶にしては重いから普通の挨拶でいいらしいわ。
んで英語ができるのは嘘なんだけどね」
レジに立った小さな背の女、織姫は独り言をしている。
相棒の淘汰が現実世界でコンビニのバイトをしてるので、だったら私も仮想空間でコンビニのバイトを体験しようって思ったの。
だからバイト歴1日目の超新人!
でもまぁなんとかなるでしょ!
すると床から男がニョキっと現れた。
コンビニの入口から入ってくるわけでも、店内からレジに向かって歩いてくるわけでもなく突如だ。
じゃも「うぃぃぃぃぃぃぃぃぃいす!
どーもぉVipuum所属のじゃもでーす!」
織姫「わわ、びっくりしたふざけんじゃないわよ!!
クソデカのっぽ!」
じゃも「俺はね、僕はね、私はね、たばこやお酒はやらんのよ?
アッアッアッアッー!
だからこれをオナシャース!」
私の初めてのお客は褐色の長身、金髪の坊主に黒いグラサンを付けた属性過多な男であった。
しかし意外と親切に、お菓子のクスリフを一つだけ出すと、値段を言う前に細かいお金まで丁度出してくれた。
優しい……、いや。
織姫「お客さん、これ税抜きの価格よ。
私ちゃんと知ってるんだから!
今はここ税率30%だから忘れちゃダメ」
じゃも「あちゃーあるあるだで!
これでええか?……アジャース!
ところでお嬢ちゃん新人か?
営業の人は大変やで俺もなんやけど
無理はしちゃあだめだで。
ほんじゃ、まーたのぅ!」
そう言うと怪しげな男は、再び地面に吸い込まれ姿を消した。
織姫「接客業よ!!」
そう破天荒な男を一声浴びせると、コンビニの入口から意気揚々に歌う、赤髪でジャージを着た女が入ってきた。
レイブン「はったちは辛いね、はったちは辛いね。
だってその先、老・い・るだけ!」
織姫「馬鹿じゃないの?」
冷静に様子を見ていると酩酊状態で更にお酒を買おうとしているようだ。
ドリンクコーナーから大量に缶のお酒を漁る音がする。
レイブン「ひとつ過ぎればシワができ
ふたつ過ぎればシミができ
みっつ過ぎれば化粧が濃い!」
あれは多分頭がやられてしまったのだろう。
テンション上げ上げで、strongと書かれた大量の缶を、胸に抱え持ってくるのが見える。
目が合った。
レイブン「よっつ過ぎれば歳上だ!
それを過ぎたら……
はい!おばさん!」
織姫「せいやー」
レイブン「あだー」
何に使うか分からない手元にあったスタンプを、レジの真ん前に辿り着いた女に投げつける。
女は顔を悲鳴をあげるも、ちゃんと器用に缶抱えながらスタンプを掴む。
そしてたくさんの缶とスタンプをレジに置いた。
レイブン「あれ、あっし何してたっけ?
あぁ、スドロングインフィニティ買いに来たんだった。
10缶くれる?」
織姫「税込で3,900VR通貨よ」
レイブン「なんか現実よりもかかるんだな、まぁいいや。
いくら飲んでもここは体を悪くしねぇし。
ありがとよ、新人さん頑張りな!」
織姫「ありがとうございましたさっさとおかえりください」
レイブン「おう!
ちゃんと接客文句覚えてて偉いな!
じゃあ安心だ」
酔っててちゃんと話を聞いてないな。
入れ違いにお客さんが何人か入る。
やっと店内が賑わってきたようだ。
織姫「らっしゃせー」
確か淘汰の真似をすると、こんな感じだろうか?
なんだ割と簡単な仕事じゃない?
投げたスタンプを手元に戻すと、肘を付きながら次の客を待つ。
すると青髪の小さな女の子が、カゴを持ちこちらに向かって、ルンルンとしながらやってきた。
チャラ民「お、織姫じゃん!
なに~?
淘汰の真似して、コンビニ店員ごっこしてるの?」
織姫「お客様お戯れはお控え下さい」
チャラ民「何そのテンプレのようで違う回答!?」
私は知ってる言葉を頑張って使い、この面倒な客に対処した。
相手はその対応っぷりに、どうやら感心してるように見える。
とりあえず仕事に集中しよう、今回はカゴに沢山物が入ってるから大仕事だ。
チャラ民「ああ、これ先にお願いね!
ヴマイ棒チョコ味10個とシュークリームとカントリーパピー1袋とソフトクリームとタピオカミルク!」
織姫「お客さん糖尿病で死にますよ?」
チャラ民「仮想空間だからいくら食べても平気!
この世界を管理してるGMがそれを言ってどうするのさ?」
織姫「いや、言ってみたかっただけ。
んでこの本は?」
チャラ民「これはチャラ民が袋に入れるから、商品読み取ったらすぐ渡して」
織姫「へぇ、ファッション雑誌ね。
オシャレなのは知ってるけど意識が高いのね」
チャラ民「うん!だから、とりあえず袋に入れさせて!
織姫はここ来て間もないから慣れてないと思うし」
織姫「舐めんじゃないわよ!
こちとら接客業30分目、捌いたお客は3人目の大御所よ!」
チャラ民「初日の舞台を終えた新人以下!」
私はどうでもいいこの三文芝居を行いながら商品を処理していく。
おや?熱心に喋ってるせいかチャラ民は見落としてる。
本と本の間に何やら怪しげな本が見えた。
織姫「ん?成人向け、漫画版【真夏の朝の…」
チャラ民「そういう事だよ」
織姫「年齢確認お願いします」
チャラ民「そこは真面目なんだな!
一応17歳はこの世界では成人になるのでギルド証を見せておくね」
織姫「こんな汚い形で私達のギルドの名前を見ることになるとは思わなかったわ」
チャラ民「うるさい!」
とりあえず確認を取り、ホモ漫画とその他糖分諸々を投げつけて何とか捌いた。
彼はもらった途端直ぐに店を出ていく。
織姫「ホモはせっかち」
並んでいた後ろのじいさんがやっと出番とたった1枚の紙を持ってきた。
赤色の髪にサングラス、そして強面の顔と髭。無精髭。長い。剃れ。不潔。剃れ。
スミス「なんだか、私の扱い悪くないかい?気のせい?」
織姫「お客様の被害妄想でございます」
スミス「そうかそうか。
そうであってくれ。
とりあえず公共料金頼むわ」
そう言われると1枚の紙を渡された。
なんだこれは?
そして公共?料金?
紙にも謎の数字と難しい単語が書かれていて明らかに怪しい。
スミス「すまん、今月忘れるとこだった。
ほい1万VR通貨」
織姫「ここまでの客との戦いで金銭感覚は理解したわ。
この1枚の紙にかなりの額ね!
難しい事も書いてあるしあんたもしかして闇の取引とかしてるんじゃない?」
スミス「おや、初めて見るかい?
これはGMに渡す為のお金で毎月ギルド代表者がまとめて渡すんだ。
そこのスタンプでちょこちょこやってちょ」
織姫「ギルドマスターも大変ね。
あ、もしかしてこれ使うのね
えい!えい!このやろ!」
スミス「ああー紙破れちゃうからそんな強くやりなさるな」
私は一生懸命スタンプを叩きつける。
そしてスミスに指示を受け紙を破り、必要な分を受け取る。
最後に残った紙を渡すという怪しい処理を行うと、私は営業スマイルを見せた。
織姫「ありがとう!
じいさんGMへの闇の根回し頑張ってね!」
スミス「ちょ、勘違いしてないかい!?」
後ろのお客が来たので、彼はもやもやしたような表情で出ていく。
続いてのお客は猫耳でぐるぐるメガネをかけた女性だ。
今度はなんと商品を持っていない!
どういう事だ?と思った時だ。
顔を赤くしてぼそりと話し始めた。
ねこさん「あ、あのその……。
肉、まん……こ下さい」
織姫「ちょっとあんたぶっ飛ばすわよ」
ねこさん「に、肉まん5こ下さいって言ってるんす!!
何勘違いしてるんすか!?」
織姫「いやちゃんと商品を発音できてないから強く言ったのよ。
逆にあんたこそ何と勘違いしたのよ?」
ねこさん「ほ、本当は1人でこんなに食べる女の子は変かなって恥ずかしくて。
そして頼んだら後からヤバい事言ってるのに気付いて……。
ああもう何言わせるんすか!?」
織姫「知らないわよ!
用意できたから持ってきなさいよ!」
ねこさん「分かったっすよ!
てか用意早いすね!」
言葉のドッヂボールを続けながらやっと用意できた肉まんを渡す。
お会計を済ましている間静かになった。
顔を赤くして焦っているねこさんを見つめていると彼女はやっと落ち着いたようだ。
そして今度は震えた声でこう言った。
ねこさん「そ、その淘汰に言わないで」
織姫「何をよ?」
ねこさん「さっきのやりとりっす。
その、多分人生で指折りの黒歴史になったっすから」
織姫「ああ、肉ま……」
ねこさん「ああああ!」
私がその単語を出そうとした途端彼女は恐ろしい悲鳴を上げて去っていった。
織姫「またお越しくださいませ。
あらもう、バイト時間終わり?」
淘汰はこの仕事を嫌いだと言った。
でもやってみれば割と悪くないじゃない。
色んな人がいるんだなって思った。
って話を淘汰にしたんだけど
淘汰「俺ん所よりヤバくない?
ところで折角話す機会貰ったが、オチ用意できなくてごめん」
って言われた。




