☆メインストーリー 2-2 初クエスト
~仮想空間・ギルドハウス前
淘汰「ギルドのクエスト板に珍しく初心者クエストの張り出しがされてあった。
内容はアダマス鉱山下層を攻略したいというものだ」
織姫「ふーん……」
ギルドハウス前に集まった俺、淘汰と織姫、レイブン、チャラ民は初めての依頼の準備をしていた。
織姫は色々事情がありいつもの不機嫌さを越えさらに不機嫌である。
忙しい為ねこさんは今日は休むらしく、残りのギルマスのじいさんは後述の理由で参加していない。
チャラ民「まあ、2人とも依頼は初めてだと思うけどチャラ民の方から色々サポートするね!」
レイブン「うぃ」
織姫「……」
チャラ民「やりづらいなぁ」
織姫は不機嫌だから分かるがレイブンに関しては素面だとローテンションなようだ。
俺はとりあえず大まかな説明をチャラ民とすることにした。
淘汰「様々な組合や団体、つまり俺らで言うギルドのような存在。
それに属してる場合先程貼りだされていたように依頼を受けることが出来る。
これは信頼された会社が仕事を受けるのと同じように、その団体を信頼した個人や別団体から受けた仕事をここでは依頼やクエストと呼ぶんだ。
結成したばかりなどの理由で信頼が少ない団体はGMが街頭に張り出す体を張った野良の討伐依頼や依頼報酬を規定割合払うのを覚悟で依頼斡旋所に頼み込むしかない」
レイブン「あっしらのギルドで依頼を貰うのはよくある事なのか?」
チャラ民「それがね、うちらは皆訳ありなんだ。
じいさんが言ってたと思うけどこのギルドegoという名前はそんな奴らでも楽しくやってこうって意味でつけたの」
レイブン「なんだ、じゃああっしらは仲間じゃねーか」
色々とあったことを思い出し暗い表情であったチャラ民にレイブンはにこっと笑いかけた。
チャラ民は、はっとした表情を見せると意地悪そうにその表情を返した。
チャラ民「反省してるのか疑問だけど。
まぁこのギルドはじいさんの懐深さや淘汰の力がなきゃ成り立たないから感謝さ」
淘汰「それは少し違うよ。
皆が支えてくれているから成り立ってる。
ねこさんは一人一人の事大切にしてくれるし。
明るいチャラ民がいれば安心感がもてる。
二人もまだ入ったばかりだけどここが少しでも心の拠り所になればいいなと思う」
俺は微かに笑いながら三人を見回した。
チャラ民がニコッと笑うのが目に入る。
織姫はまだ不機嫌そうだったが目を逸らして頷くのが目に入った。
そしてあと一人は
レイブン「いいじゃん。
懐かしいな、野郎もアマも関係なしで組んで縄張り張って殴りに行く。
つい最近までの青春を思い出すな」
淘汰「ねぇ、マジでこの人カタギじゃないよね?
んでそんなことで俺らのギルドとしての信頼度は0と言っていい。
俺らの活動資金はGMが投げた野良の討伐依頼で稼いで賄ったり、たまに赤字となってしまった場合はじいさんが副業で稼いでる武器屋の引出金を資本金として計上してる。
つまりは困った時ギルマス頼りなんだ。
そんな中で初心者の依頼主がダンジョン攻略の為にこんな俺らを信頼してクエストを出してきてくれたって事だ」
チャラ民「へぇ、初心者がねぇ。
初めて依頼を聞いていた時に少し疑問に思っていたんだけどわざわざこんな団体を選ぶなんて、もしかして淘汰の知り合い?」
やはり中途半端にごまかすのはなかなか難しいであろう。
だとするならこちらのペースにB側が合わせてもらうしかないだろうな。
「ああ、しばらく会ってない仮想空間の友達なんだ。
前のアバターをロストして最近やっと復帰したらしい。
名前は依頼主の名前とおりMr.B」
~仮想空間・A17地区西部方面駅
ダンジョンに向かう方法は直接乗り物を使う等があるが実は仮想空間なら瞬間的な移動自体は緊急時において可能ではある。
しかしGMが作った仮想空間とはいえ5年前のシンギュラリティ時に出来たばかりでまだ不安定さがある。
多くの人数が長時間瞬間移動を繰り返すと仮想空間自体に不具合が発生してしまうらしく、だからこちらでも乗り物をよく使う。
とはいえ速さは現実世界の物理法則を都合よく捻じ曲げてる為非常に早い。
チャラ民が奮発してマッハ10の列車に乗りたいと言い、チケットを俺らと依頼主の分を買ってくれた。
ちなみにマッハ10は確か時速1万キロ以上だ。
依頼主を駅構内の指定された場所で待っているとレイブンが口を開いた。
レイブン「へぇ。
あっちの世界がまるで大昔の文化に感じるほど色々ここは発展してるんだな」
淘汰「それについてはじいさんが何時間も語り始めるぐらい長くなる話らしい。
まぁ要約すると仮想空間は『人間の夢をGMが勝手に描いた世界』だと。
んでさっきからなんでお前は俺を睨み続けているんだ?」
織姫「……」
チャラ民「減らず口しか出ない口が閉じてるって珍しいね」
いつもの煽りも全く織姫は動じなかったがじっと見つめると織姫がようやく口を開いた。
織姫「私がなんであなたを指名して人間を知りたいって聞いたか気にならないの?」
淘汰「別に、お前が話すかじゃないか?」
織姫「あらそう、全く興味もないの?」
淘汰「話したいなら話せばいいと思う」
織姫「ああもう質問を変えるわ。
なんで私をタブレットから何日も追い出すことにしたの?」
先程から織姫が怒っている理由はそれだ。
俺はBとの会話後じいさんにアプリのアップデート案を提案した。
じいさんは昔から子供が玩具を気に入ると集中してどんどん改良する人だった。
だからアプリを少なくとも何日もかかるような提案を羅列しそれを提出したのだ。
織姫がタブレットにいる間、通信手段は全てこいつに監視される可能性が高い。
Bの情報について収集するにあたり織姫に伝わればその時点でBの秘密厳守の約束は破られる。
だからこそアプリをじいさんに一時的だが返している。
それについて織姫は過剰と感じる程激怒しているのだ。
チャラ民が織姫をなだめようとする。
チャラ民「落ち着いて、三十路前にほうれい線が伸びちゃうよ?」
織姫「まじでぶっ飛ばすわよ」
レイブン「三十路近く!?
あっしより年上じゃ……っぷ!」
何故かレイブンが腹パンを食らっている。
織姫は落ち着いたのか不機嫌そうな顔をして黙る。
チャラ民はヘイトを軽口で俺から引き離してくれたのだろう。
俺は心配になり声をかけた、
淘汰「レイブンさん大丈夫?」
腹パンをされた人に関しては意外と温厚でお腹を抑えながら冷静そうな表情を見せた。
レイブン「まぁ、軽口も腹パンもいつもの事ってこったろ?」
この人ひょっとしたら飲まなきゃ人畜無害じゃないのか?
そうこうしていると一人コッコッコッと革靴の音を立てて歩いてくる男がいた。
縦に複数の切れ穴が空いた目元だけを隠す銀の仮面。
そして肩近くまでかかる黒髪に長身細身な体型。
服は白と黒を基調とした背広を着ている。
こいつは……!
相手が声をかける前に俺は声をかけた。
淘汰「よう、待ってたぜ。
あんたがアバターをロストしてから久しぶりだなMr.B」
チャラ民達が依頼主が来て緊張する中、Mr.Bは驚く顔はしたもののすぐニコッと笑いこちらの芝居に付き合ってきた。
Mr.B「お久しぶりですね!
モノクロビューティ!
私の名前はMr.Beautiful
Mr.Bとお呼びください」
だがその笑みには影が差しているのを感じ、心がざわつき始めるのを感じた。




