☆メインストーリー1-4 新たなメンバー
~仮想空間・事件後のギルドハウス内
淘汰「多分納得してもらえないだろうが
本人の意向も含め、修繕費と医療費を払わせるからこいつをここに置いて欲しい」
チャラ民「じょーだんじゃないよ!
確かにチャラ民達は怪我しなかったけどギルドの門は破壊されるわ淘汰はやられるわ。
こいつのせいで散々だよ!」
円卓でギルドegoのメンバー5人に加えレイブンは座っていた。
外にはGMも集まってきたが今はギルマスのスミスが処遇を決める為待ってもらっている。
レイブンはというと先程の事件を起こしたとは全く思えないほど大人しかった。
このままGMに引渡し裁いてもらうこともできる。
だが話を聞くと酩酊時にこのギルドへ突っ込むよう誰かに唆されたと聞いた。
GMは緩いから手放せば黒幕にこいつごと証拠を消され犯人を探すのは難しくなるだろう。
だからこそここに置きたい。
監視と言うと本人も警戒し理由としては話しづらい。
結果として曖昧な理由しか述べられずレイブンの処遇はこうして荒れていた。
ねこさんもログインし建物を見て驚いていた一人である。
ねこさん「乱暴者すぎません!?」
スミス「はっはっは、パンダを倒すとかVipuum全員相手にするレベルじゃけ」
チャラ民「それは言い過ぎ」
力を抜いたねこさんとスミスの雰囲気から一応こちらの考えは察してくれたようだ。
チャラ民を如何に納得させるのが今回の話の焦点になるだろうな。
この微妙な話の中で面倒なやつは織姫。
な、はずだがやけに静か。
チラと目線を移すと睨みつけるようにガン見している。
何もなければ喧嘩売られていると感じるが先程あった出来事から本人としては心配してくれているのだろうか?
すると鋭くねこさんが話題に問題提起をする。
ねこさん「マスター、分かってます?
人一人ギルドに雇うだけでもかなりのお金かかかるんすよ?
この織姫だって入ってそうそう一日二回牛乳と塩漬けのキュウリまるまる一本をねだってきて……
だから私慌てて仮想スーパーで大量買いして大変なんすから!」
織姫「私カルーアミルクがいいって言ってるのにこの女、ただの牛の乳投げてくるのよ!」
スミス「いや、成人と自称してるがお前さんの見た目じゃ酒アウトじゃろ」
得意の局地的マシンガントークで雇うことを反対するねこさん。
勢いが速くて一瞬どういう流れか分からなかったが周りの反応を見てだんだんこれが切り口になる事に気付く、チャラ民がいつも通りヤジを入れたのだ。
チャラ民「そいやもしかして三十路?」
織姫「そんな訳ないじゃない!
ほんとぶっ飛ばすわよ」
チャラ民「焦る時点で三十路手前なんだよなぁ」
こちらにアイコンタクトを取るねこさん。
おいまじかよ、この流れで俺に空気を読めって言うのか?
公開処刑じゃないか。
しかしなるべく口数少なめに話題の火種らしき物を祈りを捧げて投げた。
淘汰「てか食事猫と変わんねーな」
チャラ民「え?まじで!
猫ってきゅうり食べんの?」
よし、乗ってくれた。
後は他の奴が上手く回してくれるはず。
スミス「よし、織姫。
私のきゅうり食べるか?」
いやじいさん無理に下ネタを入れるなよ!
お陰で空気が最悪……
ねこさん「じゃあこの変質者はGMに連行してもらって
新しいギルマスどうするすかね。
私淘汰がいいなーって」
チャラ民「そうだね!てかGMに連行されるのはスミスだけでいいかも
チャラ民もそれで賛成!」
上手くねこさんは話題を繋げるとなんとチャラ民はニコッとレイブンに声をかけた。
そのさりげない言葉にレイブンの無感情な表情が一気に熱を帯びて口を開いた。
レイブン「お前達に酷いことをしたのに
こんな奴を引き渡さないのか?」
チャラ民「はぁ、今更?
それになんか皆チャラ民にすっごい気を使ってんのバレバレだよ?
普通に考えて淘汰やスミスみたいにもっと被害を受けてる人が許しているのにチャラ民だけ生真面目に怒るのはおかしいっしょ
たけどちゃんと皆に謝るんだよ?」
その言葉を聞きレイブンの目は潤んだ。
すると急に彼女は膝を付き額からゴンという音を立てて土下座をした。
周りが息を飲む。
レイブン「申し訳なかった。
あっしには今はこれしか出来ない。
だがここでちゃんとした事にケジメを付けたい」
「……」
それは清々しい程の潔さ、しかしそれはあまりに胸を刺す物だった。
俺は心が痛くなり目が熱くなる、そう感じた時一人だけそれを理解してない奴がいた。
織姫「ねぇ、これって何?
頭踏んで欲しいの?」
淘汰「お前とりあえず今は、何もするな、何も喋るな」
織姫「ステイ、ってことね!
分かったわ」
さっきの流れで猫を持ち出すな。
空気を読んだと勘違いしたのか本人の満足気な表情が見えさらにむっとした。
スミスが膝を付きレイブンに穏やかに声をかけるのが目に入った。
スミス「顔を上げて、美人さんがそんな事をするんじゃないよ?
土下座自体私の世代のヤンキー共がケジメを付けるのにやってた遺産やし」
レイブン「うちの暴走族は本気で謝る時はこうしていた」
スミス「……」
仮想空間では厳つい見た目のスミスだが現実では穏やかで紳士なおじさんだ、リアルヤンキーは得意ではなく絶句している。
顔を上げたレイブンはギルマスのスミスを真っ直ぐな目で見つめていた。
スミスはテンパりながら指を立て笑った。
スミス「うちのギルドはego、エゴの塊じゃけえ、皆自己を大切にしている。
来る者拒まずだ!
だけど出てくのは私が寂しいから拒むけどね?」
レイブン「なんだそれカタギじゃねぇな。
好きだわそういうの」
スミスがニコッと出した手をレイブンは爽やかな表情で掴んだ。
この後ギルドハウスからGMに引き渡された奴は誰一人いなかった。
~仮想空間・ギルドハウス付近の屋根の上
天裁「なるほど、人に無傷で勝つ。
それが彼のやり方ですか。
余程の実力がなければそのような事は行えない。
ですが戦う気が全くないから如何に強いか正確な強さも不明。
今回に至ってはあの危険物を放ちそれに対する対応を見れたので成果とは言えます。
まぁ実験という観点としては数値が取れないのは大失敗ですね」
感想をひたすら述べホログラムに浮び上がるメモに記す今回の黒幕。
しかし先程までうるさかったガヤがない。
はっとして後ろを振り向くと長文の手紙が置いてあった。
『油断大敵すぎるのもまた様式美ともいえるね、beautiful!
美しさも種類がある、完璧な滑稽さから生まれる美は笑いという芸術。
しかしあのモノクロビューティには興味が湧いたよ!サンクスマイフレンド!
お礼に帰り際友人のバーでカルーアミルクとピクルスを君の名で頼んでおいた。
それじゃあ、また会いましょう。
バイバイビューティー!
今日もあなたのMr.Beautifulより』
天裁「私未成年なんですが
いやてか勝手に頼まないでくれます!?
モノクロ……あの白黒パンダの事でしょうか。
これから彼も動くことになりそうですね」
天裁はメガネをクイッと上げると屋根を飛びながら夜の街へ姿を消した。




