子の心、親知らず
「良、お前も5年生になったのだからそろそろ見に来るか」
「いやごめん、その日予定あるから」
久々とも言える父との会話に少年は
親の敵並みに己が父を嫌う杉延 良は
いつ、どこで、何を、見るのか聞く前に断っていた。
父はその言葉を酷く傷ついたようで
眉を潜めながら嗜めるように言った。
「良、父さんは最近の流行はわからない。だが男子たるものツンデレはないと思うんだ」
良は一瞬、いや下手をしたら冷静になるのに数分は要するであろう動揺をおぼえた。
一刹那の間に良の心は疑問、殺意、疑念、殺意、猜疑、殺意、怒りそして殺意と殺意に満たされていった。
とどのつまり
(何を言っているんだ、こいつは)である。
嗚呼、悲しきかな息子の思いは父には届かない。
「確かに可愛い女の子がツンデレをするのは構わない。タイプの娘ならツンツンでも良いくらいだ。むしろ罵って貰いたいくらいだ。クーデレもいい。ヤンデレもまたそそるものがある。母さんにも何度かそういうプレイを頼・・。だがな10歳とはいえ男子がそのようなことをするのは恥ずべきことだと知りなさい」
父の言葉に良は言い返せなかった。
否定したいことは多々ある。
ようするに
(もっとも否定したいのは父の存在である)
良が言葉を発する前に父の追撃が始まった。
「しかし、息子がデレてくれるのは父として嬉しくも思う。では明後日、土曜を楽しみにしているがいい」
父はそう言い残し出かけて行った。
良は己が無力を恨んだ。
良は己が父を憎悪した。
良はこの世界が今すぐにでも崩壊してほしいと心から願った。
結局は
(お◯◯◯には勝てなかったよ・・・)ということである。