表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/20

§1.2

 甲高い合成音声が、モニターの脇につけられたBOSEのスピーカーから聞こえてくる。それに、金管楽器をベースとした、エキゾチックBGM。さっきまで胸と脇腹に取り付けられていた心拍計のせいか、自分のあらゆる身体感覚が敏感になっていて、血流が早くなり、目が見開かれるのを感じる。微かに漂う、消毒液の香り。


 金色の輪っかの周りには梵字が12個、ぐるっと取り巻いており、ちょうど時計の文字盤のような形になっている。佐藤は干支を表しているのだろうかと思っていたが、世界史は苦手だったので干支が古代仏教に由来しているかどうか怪しいとも思っていた。


「ヨンホンメノ、ハノカタチデ、アナタノ、ウンメイワ、スベテ、キマリマス」


 画面に、これまで抜いた歯の精巧なCGが浮かび上がる。佐藤の親知らずはどれもこれもいびつな形をしていた。あるものは一本だけ歯根が大きく平らで、上下が分からないくらいだったし、あるものはタコのように方々に広がって顎に引っかかっていたし、あるものは脇にちょこんと小さな棘のような骨が生えていた。三つめのやつについては佐藤は勃起したペニスのようだと思った。先端が少し膨らんで亀頭のようなディテイルもついていた。女医もおそらく同じことを思ったのか、「すみません、これが引っかかって中々取れなかったみたいです」という顔は少し恥ずかしそうだった。瞳孔もやや開いていたから興奮もしているようでもあった。


 これまでの3本の歯はそれぞれ曖昧な占い結果を出されていた。


 ・一昨日に向かって走れ、されば汝救われん(上下逆さの歯)

 ・次の山には心してかかるべし(タコ足の歯)

 ・11時が最良の時、19時が最悪の時(ペニス付きの歯)


 どれもこれも、佐藤には理解しがたく、それでいてイミシンな雰囲気があって、佐藤はモヤモヤとこの占いのことが頭から離れないのだった。顎をゴリゴリと削った痛みとともに、頭のなかに居座り続けていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ