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そして、メイドはほほ笑んだ

作者: トム男

私は、とある貴族の家にお仕えしております、メイドのアンナと申します。

そんな私の仕事は主に、今年10歳を迎えられます。坊ちゃまのお世話をいただいております。


私がお仕えしております、坊ちゃまは、お家柄ゆえでしょうか。少し尊大な態度、言動をとるご子息で、

金髪、碧眼の小悪魔系美少年でございます。もう一度言いましょう。美少年であると。


私はそんな坊ちゃまのお世話係。つまり、「おはよう」から「おやすみ」までを堪能・・ゲフンゲフン、・・サポートいたしております。


ですが、坊ちゃまには最近悩み事があるようで・・・。


--チリンチリン


おや。坊ちゃまから呼び出しが。


「おはようございます。坊ちゃま。」


「・・おはよう。」


「お散歩をされますか?朝のお茶になさいますか?それとも・・・」


「その前に、アンナ。」


「はい。」


「私は、以前から聞かねばならぬ事があるのだ。」


「何でございましょうか。坊ちゃま。」


「うむ。アンナ・・そなたは、この部屋にどうやって入っているのだ?」


坊ちゃまの問いかけに、私は考え込む。

はて、メイドとして主人の呼び出しに応じるために、いつも通り坊ちゃまの寝室に入室したのでありますが、何かしら失礼を働いたのであろうか。

自分の行動を思い起こしてみる。


1.ベルによる呼び出し・・・・・・・・・・メイドイヤーで感知。

2.内側より鍵がかかっている寝室の扉・・・メイドスキルで突破。

3.入室。そして、朝のご挨拶・・・・・・・今ここ


何も問題はないように思えますが。一体・・・。

しばらく考えた私はある考えにたどり着いた。


「申し訳ありません。坊ちゃま。」


「ふむ?」


「メイドとは、常に主人の背後に控えるべきもの。」


「ふむ・・・・・背後?」


「そのためには、隠し通路の一つや二つ常に開発し、常に背後に回れるように努めよ、という事で・・」


「お前は、どこぞの殺し屋か!!」


坊ちゃまから、なぜかツッコみが入る。まさか、一介のメイドである私が、アサシンに見えるとでもいうのでしょうか。少々混乱されているご様子の坊ちゃまに、私は提案する。


「坊ちゃま。よろしければ、私の経歴をご説明いたしますが。」


「・・いや。結構だ。」


「結構な事。・・すなわち、喜んでお聞きに・・」


「本当に結構だ。」


謙虚な坊ちゃま。ご立派になられて。


「かしこまりました。ところで、坊ちゃま。」


「なんだ。」


「この状況をどう思います?」


「・・っ!」


私の視線に気が付いたのでしょう。サッと羞恥に染まった表情で、襟元をただしシーツを胸元に抱き寄せる坊ちゃま。


説明しましょう。


坊ちゃまは美少年である。そして、羞恥により色気が増している。更に、寝起きによって色々と見えているのです。

つまり・・


美少年×羞恥心×無防備=「はい可愛い」


黄金の公式が成立するのでございます。


ちなみに、今日の坊ちゃまの御召し物は、大きめの白いワイシャツとホットパンツという組み合わせでございますが・・・・・・ええ、偶然でございます。


「そろそろ着替えを・・」


「右目に眼帯ですか。左腕に包帯ですか。手取り、足取り、腰・・」


「一人で着替えるよ。」


「・・・・・・・・かしこまりました。」


最近、私とのスキンシップを華麗に避けてくる坊ちゃま。

これが、自立心に目覚めてきた・・という事なのでしょうか。ホッコリとした感情の中に一抹の寂しさを覚えながら坊ちゃまの要望に従い、退室しようとすると。


「・・アンナ」


坊ちゃまから、お声がかかる。

はっ・・まさか、上目遣いからの・・・


『や・・やっぱり、手伝って・・・くれる?』


とか、あざといですね・・でも、それが可愛いのです。


いや、それとも振り向きながら・・・


『アンナ。やはり、手伝う事を許可しよう。』


とか、もう喜んでご命令に従います。


いや、落ち着け私。ビークール。ビークール。ビーク―。ビーク―。ビークーん。・・何だか気持ちよくなってきました。ビクンビクン。


これはいけないと、息を大きく吸い込み、精神を落ち着けようと試みる私。


「すうっ・・・・・はあっはあっ。・・いかがなさいましたか。坊ちゃま。」


「あ、アンナ。」


坊ちゃまの同じ部屋で、空気を共有している事実に気が付いてしまうハプニングがあったものの、精神を落ち着ける事に成功した私。おかげで空気が美味しいです。

ですが、どこか距離を置かれているのは気のせいでしょうか。

だがしかし、そんな事は些細な事。そうです。先ずは・・ご命令が大事なのです。


「いかがしましたか。坊ちゃま。」


「そ・・・その。」


「はい。」


「き、着替えが・・女物に、変わっているのだが?」


震える声で尋ねてくる坊ちゃま。そんな坊ちゃまも以下省略。

ですが、女物?

クローゼットの中を確認する私。そして、さりげなく扉に近づいていく坊ちゃま。ですが、その扉はデコイなのです。


「なっ・・開かない・・だと?」


「・・坊ちゃま。」


「な・・なんだ!?」


「坊ちゃま。そんな防御力の低さでは、野生のメイドの餌食になってしまうではありませ・・・」


「野生のメイドって何だ!?」


ああ。坊ちゃまからキレの良いツッコみが。成長されましたね。

ですが、これで寝間着のまま外にでかける危険性を示唆できたと思われます。


「私の口からはとても・・ですが、坊ちゃまがそれでもお望みでしたら、私は・・」


「やっぱりいい。」


「かしこまりました。それでは、先ほどのご質問。クローゼットの中身が女性物になっているのではないか。という疑問にお答えしたいと思います。」


「・・ああ。」


坊ちゃまが、何だかくたびれている様な気がしますが、体調に問題がないようなので説明を優先する事に致します。


「ぼっちゃま。先ず、流行を知る事やあらゆる事象を学ぶ事は、上に立つ者にとって大切な事である。と、私は愚行致します。」


「ふむ。」


「また、最近『男女平等』という言葉が市井で流行っているようでございます。」


「そうなのか。」


「さようでございます。ゆえに・・」


「ゆえに?」


「清楚なお嬢様の勝負服、ワンピース。月の光に導かれた水平服。ぶひぃ・・姫騎士。闇夜に美しく舞う、ミニスカくのいち。と、幅広くご用意・・」


「やはりお前の仕業か!?」


私のごり押し二段論法に翻弄されずに、答えに辿り着いた坊ちゃま。


「一体何がご不満なので?」


「全部だ!!」


「猫耳ローブ。ふんわり妖精ドレスと、愛らしい衣装をサラリと着こなしてきた実績をお持ちの、坊ちゃまが今更何を・・」


「それを言うな!!」


全く・・今日に限って、難色を示されるとは一体何が?メイドとしての技能を駆使し衣装を確認していく私の脳裏に、ある考えが浮かびあがる。はっ・・・まさか。


「はっ・・まさか、メイド服をお求めに?いけません!坊ちゃまには、まだ・・」


「違う、それだけは違うぞ!!」


聞いた事がある。主人たる者があえて、従者や給仕の恰好に扮し、他者にかしずくという背徳の遊び。『下剋上プレイ』なる遊びがある事を。

そんな不健全な遊びを坊ちゃまが?そんな・・・メイド姿の坊ちゃまだなんて・・・くっ、鎮まりなさい!邪心よ!!


「・・そういったプレイは、大人になってからです。」


「アンナ。キリッとした表情をする前に、鼻血を拭こうか?」


メイド服姿の坊ちゃま。そんな幻想を胸の奥に大切に仕舞いつつ、メイドとして主人を真っ当な道に戻すべく、私一押しの服『闇夜に美しく舞うミニスカくのいち』を手に熱く説明を開始する事にする。


「今回、坊ちゃまだけに特別にご紹介する衣装は、こちらっ!!『闇夜に美しく舞う、ミニスカくのいちセット』のご紹介となります。」


「先に行っておくが、着ないからな。」


――カラン


『闇夜に美しく舞う、ミニスカくのいちセット』がむなしく床に転がる。まさか、そこまでメイド服にこだわりがあるだなんて。ですが、ここで諦めては・・


「そんな・・坊ちゃま。見て下さい、このボディー(右上がり)!!坊ちゃまの体型にしっかりとフィットしながら、可愛らしさを忘れていない、このデザイン!更に、見て下さい。この、ミニスカの、驚きの、短さ!」


「いつ測っ・・・短すぎだろう!?」


さすがの坊ちゃまも、膝から10センチ上の短さに驚愕を隠せないご様子。ですが、初めに何か言いかけていたように思えましたが・・問題ないようですね。

さて、ここまでの掴みはバッチリ。後は、使用状況を・・・でございます。


「では、実際に着用いただいた状況をご覧いただきましょう。ドジっ娘斥候のナタリーさーん。」


「むーむーむー!」


「縛られてる!?」


「こちら、今回、快く、モデルに、ご協力いただけました、ドジっ娘斥候のナタリーさん。15歳(推定)です。15歳・・・いい響きですね。」


「むぐー!」


「・・えっと。一体どこから斥候が・・・うん。もう嫌な想像しかできないから、説明はいらないからな。」


「かしこまりました。さて、ただ今、ナタリーさんが着用している衣装。『闇夜に美しく舞う、ミニスカくのいちセット』略して『闇美ち(やみうち)セット』でございま・・」


「嫌な省略の仕方をするな!?」


「こほん。失礼いたしました。では、『くのいちセット』で省略させていただきますが、この衣装は、ご覧の通り、動線を妨げない、機動性に、優れた、構造となっております。」


「ふむ、確かに・・」


「そのようにじっくりと食い入るように観察されるとは、坊ちゃまも、おとこの娘でございますね。」


「むー!」


「なっ・・・ちが・・・今、何かおかしな発言がなかったか?」


「気のせいでございます。この衣装の優れた所はそれだけではありません。なんと・・」


――ぴらっ


「むー!?」


「アンナ!?ちょ・・・見え・・・ない?」


ナタリーさんのスカートをめくると、窓から謎の光線が、ナタリーさんの絶対領域(スカートの中)を覆い隠す。


「さあ。ご覧下さい。なんと、ある時は光!また、ある時は湯煙!時に不自然な観葉植物といった具合に、時、場所、時間に応じて、精霊が24時間ガードを行うという、契約が施されており・・」


「無駄に手が込んでいる!?いや、後で色々と話し合わないといけない事があるが、つまり・・何が言いたいのだ?まさか、『精霊に守られてるから恥ずかしくない』とでも、言うつもりじゃあ、ないだろうな?」


「まさか。これは、男性用ですので。」


「・・・男性用?」


ふと、ナタリーさんを見つめる坊ちゃま。


「・・・・。」


「・・・・」ぽっ


もじもじと頬を赤らめるナタリー(源氏名)さん。15歳(推定)。


「お察しの通り、ナタリーさんは・・」


「やめろ。聞きたくない。」


「奥様を始めとした、『おとこの娘を愛で隊』のメンバーの努力(技術)、友情コネクション、愛(欲望)を結集した、渾身の作!!」


「聞きたくないと・・・まさかの母上ぇええ!!」


母親の参加に驚愕を隠せない坊ちゃま。一体いつから錯覚していたのでしょうか。一介のメイドに、このような事ができるはずがない事実に。

ですが、『おとこの娘』をスルーするとは、流石は坊ちゃま。おとこの娘としての自覚がすでに芽生えて・・・


「今、何か不穏な事を考えていないか?」


「気のせいでございます。坊ちゃま。」


「アンナ。前から思っていたのだが、『坊ちゃま』という言葉を付けていれば、大体の事をごまかせると思っていないか?」


「・・・まあ、それは置いといて。」


ここでメイドスマイルを浮かべる私。まだ、話を掘り下げるようならば、無理やりという路線も・・ニヤリッ。

おっと、いけません。よだれが。


「むー!?」


「ひいっ!?」


「また、データを収集するために、通りすがりの衛兵にもご協力をいただいた所・・」


「衛兵までもが犠牲に・・」


「『初めは抵抗があったけど、新しい世界が開けた。』と、喜びの声が寄せられております。」


「まさかの反応!?」


「以上で説明を終えますが、質問はございませんね。さあ、これで大丈夫です。・・・もう、何も怖くありません。優しく・・そう、優しくしますから。」


説明を終え、手をさわさわと(エアーお着替え)させながら坊ちゃまに、にじり寄る私。

本当はこんな事、したくないのです。ですがこれは、奥様に・・そう、奥様に詳細な報告を行う上で、必要不可欠な事なのだ。報告は大事である。

・・まあ、確かにお着替えを嫌がる坊ちゃまのご様子に、正直心が躍る・・・ゲフンゲフン、良心が痛むが、これは仕事。そう、お仕事なのです。仕事なら仕方ない事です。ですが、せめて・・・


「さあ。可愛くなりましょうね。」


そして、私、アンナは坊ちゃまに微笑みました。まあ、今手にしている猫耳カチューシャは、私物ですので、何も問題はありません。


「誰かー!!」


ドンドンとデコイを叩く坊ちゃま。そんな無駄な努力さえ、愛しいので・・


「お呼びですか。」


「お・・お前は、セバスチャン!?」


「誰がセバスチャンですか。」


私達の野望は執事に、阻止されてしまいました。ついでに、ナタリーさんは、執事に回収されてしまいました。


「怖かったよぉぉ。」


「もう大丈夫です。メイドはご覧の通り、きっちりと締めておりますので。」


「くっくっくっ・・・。坊ちゃま、今回は大人しく倒されよう。だが、忘れるな。この、私が倒されたとしても・・・第二、第三のメイドが、必ずや・・」


「メイドコワイ。メイドコワイ。メイドコワイ・・・」


「全く、お仕えしている主を怖がらせてどうするのですか。まだまだ締め方が足りないようですね?」


「し・・・塩は駄目!何だか新しい感覚が・・あんっ♡」


「ひぃっ!」


この後、私は執事にしっかりと締められました。


-----


――チリンチリン


「お呼びでございますか。坊ちゃま。」


「う・・うむ。」


あれから、1週間。私、メイドのアンナは引き続き、坊ちゃま専属のメイドをしております。まあ、流石に衣装選出の任からは外されてしまいましたが。


「そういえば、執事の・・」


――ガタンッ


「だ、大丈夫か!?アンナ!!」


「も・・問題ございません。坊ちゃま。」


「いや、全身が震えているではないか!?」


「すうっ・・・はぁ。失礼いたしました。坊ちゃま。」


1週間、されど1週間。私、メイドのアンナは、執事による再研修を経て、戻ってまいりました。おかげさまで、『執事』という言葉を不意に聞くと、少々・・ええ、少々、心身に乱れが生じるようになりましたが・・・何も問題ありません。


「そ、そうか。」


「はい。坊ちゃま、どういった御用でしょうか。」


「ああ。それはな・・・」


楽しそうに今日の予定を話し出す坊ちゃま。そして、私は・・。

そんな坊ちゃまの・・・『おとこの娘を愛で隊』隊員ナンバー3。執事のセバスチャン監修。『月の光に導かれたハーフパンツに水兵服』というお姿に、内心ハアハアしながら、ほほ笑んだ。

初めは、執事とお嬢様という設定で、書き始めたのです。ですが、なぜかしっくりとこなかったので、試しに性別を転換させてみたところ、するするとこのような結果にw

あとは、色んな方が物語を投稿されているので、実際のところ、どれくらいの時間をかけて書いているのだろうかと、気になった結果、描いてみたものです。

正味、1週間かかりましたw

まあ、感想としては、達成感よりも疲労感の方があります。皆さんこんなにも疲れてまで書いているのか・・と。

皆さま方、お疲れさまです。

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