表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/50

■第46話 最初で最後のデート4



 

 

 

散々お腹を抱えて笑い合い、笑い疲れたマドカがそっとリョウを見つめる。


遠く水平線を見つめているその銀縁メガネの横顔。

 

 

 

 『あ。 ねぇ、まつ毛になんかついてるよ・・・』

 

 

 

ほらほらと指でリョウの目元をさして、教えようとしている。

『ん??』 リョウが銀縁メガネをはずし、目元をこするように手の甲で

やさしく撫でた。

 

 

 

 『ん~・・・ 取れてないなぁ・・・


  ぁ、あたしがとってあげるからさ・・・ ちょ、目ぇつぶって・・・。』

 

 

 

頷いて、リョウが目をつぶった。

スッと通った鼻筋、薄くて形のいい唇、切れ長の目元、痩せて浮き出た喉仏。

 

 

 

 

  (やっぱ、裸眼のリョウはカッコよすぎる・・・。)

 

 

 

 

すると、マドカはそっと顔を傾けるとリョウの顔に近付いた。


唇に触れようとして、一瞬ためらうと、急に恥ずかしくなってしまって唇の横の

やわらかい部分に、目をつぶって自分のぽってり厚い唇をぐっと押し付けた。

 

 

 

 

 

 

   その突然の感触に、慌てて目を見張るリョウ。


   一時停止ボタンを押したかのように、かたまっている。

 

 

 

 

 

マドカは人差し指と親指をくっ付けて、まるでなにか掴んだような

素振りで言う。

 

 

 

 『ほら、綿ゴミ。』

 

 

 

リョウが真っ赤になって、シドロモドロになりながらたじろぐ。

 

 

 

 『いや・・・ わ、綿ゴミの問題じゃ、なく、て・・・ですね・・・。』

 

 

 

『ん?』 マドカがとぼけ顔で小首を傾げる。

 

 

 

 『いいいいいいい今・・・・ 僕、に・・・・・・・・・・・。』

 

 

 

『なに? どした??』 マドカはいつまでもケラケラ笑っていた。

 

 

 

 

 

生ぬるい海風がやさしくふたりにそよいでいた。

気が付けばもう夕暮れで、水面は目映いオレンジ色を飲み込むように

キラキラ輝いている。


更にぴったり互いの体の側面をくっ付けて防波堤に座る、ふたり。

マドカがリョウの肩にそっと頭を寄せ、絡め合う指は決して離れないよう

力を込めて。

 

 

 

 

大きなオレンジは完全に濃紺に沈んだ。

 

 

 

最初で最後のデートが幕を閉じようとしていた。

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ