■第28話 学園祭5
照れくささを必死に隠しどうって事ない風な顔をして、いまだ手をしっかり
つないだままリョウとマドカはお化け屋敷の出口を出て来た。
出口をくぐり抜けた途端、校舎の明るさに目が慣れなくて、
ふたりはショボショボと眩しそうに瞬きを繰り返している。
やっと通常の視界に戻ると、瞬間、マドカとリョウの目に向かい合う
相手の顔がしっかり目に入った。
自分の手にはまだ、相手のやわらかいぬくもりがある。
『・・・・・。』
『・・・・・。』
ふたり、素知らぬ顔をしてつないでいた手をそっと離した。
離してしまった途端、そのぬくもりが消えてしまったことに寂しそうに
まるで恋しそうにその手は再びぬくもりを求め彷徨う。
(まだ、つないでてくれてたってイイのにさ・・・。)
(まだ、離したくなかったのにな・・・。)
ひと足先にお化け屋敷を出ていたサツキとダイゴは、少し離れて壁に寄り掛かり
話をしているようだった。
お化け屋敷好きのサツキはひとりで勝手にどんどん進んでしまい、あわよくば
サツキの手を取りココは格好良くリードしようと算段を目論んでいたダイゴを、
呆気なく打ちのめした。
しかし、サツキと一緒にいられるだけで充分嬉しいダイゴの顔は綻び常に
白い歯がこぼれていた。
すると、マドカとリョウ、ふたりの姿を出口に見付けたサツキが駆け出した。
嬉しそうにサツキがリョウの隣に並び、そっとリョウの腕を引っ張る。
そして、リョウの肩に手を置き少しつま先立ちをして顔を寄せると、
なにやら小さく耳打ちした。
リョウの骨ばった耳に、サツキの形の良い桃色の唇が触れてしまいそうな
その距離。
『ちゃんと仲直りしたんだね・・・ 良かった。』
サツキは目を細めてやさしく微笑みかける。
リョウはサツキに目線を向けると、照れくさそうに顔を綻ばせペコリと
会釈した。 ほんのり頬を染めて、やわらかい表情で、心から嬉しそうに。
その様子を、チラリと目の端で見てしまったマドカ。
胸がぎゅっと握り潰されたような鈍く重い痛みに、慌てて顔を逸らした。
すると、隣に立つダイゴもまた不機嫌そうにそれを睨んでいた。
苛立ちがダイゴの脳から足先へ伝わり、そのつま先は高速でカツカツと
床を打ち付けた。




