一日目~昼~
「で、今朝ポストに入っていた手紙の中の今日の欄に『13時 喫茶 Liebe』と書いてあったので来てみたんですが。」
「そうなんですか……初めまして。」
と、昨日見た写真の中の女性が目の前で微笑む。
やっぱキレイだなぁとか思っていたら
「あなたも何か頼まれます?」
「え、あ、じゃ……コーヒーを1つ。ホットで。」
注文を受けた店員は何事も無かったように奥へと下がっていった。
店員が下がったあとで彼女は話を始めた。
「それにしても……あなたも大変ね。」
「えっ?」
「だって、たったの5日間で判断しないといけないんだから。」
「ええ…………まぁ。」そうなのだ。
今朝届いた予定表には5日分しか載っておらず、5日目のところには『評決』と書かれていたのだ。
ということはつまり、僕はたったの5日で人の、しかも赤の他人の生死を決めなければいけないのだ。
けどまさか、一番初めに会うのが当の『彼女』であったとは。
彼女に会って聞きたいことは山程ある。
「あの…………。」自分でも驚くほど声がかすれてしまった。
「ん?何?」それでも声は聞こえたようで、彼女はちゃんと返事をしてくれた。
「えっと…あなたは、自分が殺されるかもしれないってことを…その…どう、思っているんですか?」
自分でも馬鹿な質問をしたと思った。どこの世界に死を怖がらない人がいるだろう?
しかし、彼女の口からついてでた答えは僕の予想とはかけ離れたものであった。
「………別に、私は私が死ぬことについてどうとも思わないわ。死んでしまえばそれで終わりですし。
……………ただ、家族のことが心配でないと言えば嘘になるわ。」
「あの……ご結婚は?」
「まだよ。ただ、両親と妹がね。」
「そう……ですか…」
どうして彼女の存在が国家に関わってくるのだろうか……それを聞こうとしたら…「時間です。」
先程の店員がそう言ったと思うと
「ごめんなさい。もう行かなくちゃ。」
彼女は席を立って出口へと向かった。彼女の数歩後ろを、注文を取りに来た店員が歩いている。
どうやら、あの店員は僕にこんなことを依頼してきた人物と同じ会社の人間のようだ。
なるほど。彼女には監視付きってわけか。
彼女は店を出るとき
「またね。」そう言って去っていった。
僕は1人取り残されてしまった。
「………あ、コーヒー…」
僕の席から、桜がキレイに咲いているのが見えた。




