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最終日~判決~

「会場はこちらになります。」

そう言って僕を会場まで案内してくれたのは、昨日までとは別の人だった。

「あの………!」

「何かご不明な点でもありましたか?」

「え?あ、いえ………大丈夫です。」

「そうですか。では、私はこれで。」

あの人はおそらく別の仕事をしているのだろう。昨日、本人も言っていたことだし。そう思うことで、僕は会場となる会議室の扉と向かい合う勇気を得たような気がした。

会場は今までと同じホテルの同じ会議室であった。

僕はそこで1分くらいかけて、この5日間に出会った人たちの顔や言葉を思い返してみる。

最後に浮かんだのは、彼女の笑顔とキレイな桜だった。

「……………よし!」

僕はドアを開けて中へと入っていく。

「………!」

会議室の後ろの扉から入った僕の目の前に広がっていたのは、まるで裁判所の法廷だった。

僕から見て部屋の右側には、おそらく賛成派の人たち………てことは、反対派の人たちは左側かな?

「えっと………。」

僕がどうしていいか分からず困惑していると

「こちらにお座りください。」

と、正面に椅子が用意されていた。

座ってみると、ちょうど目の前に彼女が向かい合って座るかたちになっており、彼女を挟んで左側が賛成派、右側に反対派という形式をとっている。

「……まるで裁判ですね。」

思わず僕は呟いていた。

「ええ。これは裁判ですので。

では、中立派の皆さんは委任状を提出されておりますので、始めさせていただきます。」

こうして、彼女の生死を決める裁判が始まった。

裁判ではそれぞれ、賛成派と反対派の主張を5分間ずつ聞き、その後お互いに質問や反論をするという

ディベートに近い形をとっていた。

主張に代わり映えはなく、その他もお互いの足の引っ張りあいであった。

その内容は、2日目に聞いたものとほぼ同じであった。

違いがあったとするなら、反対派は開き直って

「彼女を殺す前に、我が国の利益のために活用すべきです。」といったことくらいだ。

そんな感じで裁判は進行していき、

「では、裁判長の方から、判決の言い渡しをしていただきます。」

と、どうやら僕の番であることを知らせるアナウンスが入った。僕は、進行役からマイクを受け取り、部屋全体を見渡しながら話始めた。

「………最初、話を聞いたときは大変驚きました。双方の意見はごもっともですし、だからこそすごく迷いました。」

話している途中、彼女と目があった気がした。

目があった彼女は、メガネをかけていた。

「そして……………ある1つの結論にたどり着きました。」

部屋中の注目が集まる。

「それは……………『彼女の意思に任せる』ということです。」

「えぇ?!」「何だって?!」

部屋がざわつき始めた。

「そんな!この国の災いですよ?!何言ってるんですか!即刻死刑でしょ!」

「ふざけるな!コイツを利用すれば……」

「そんなことしたら世界のバランスが…」

「……うるさい!黙れ!」

「……………………。」

僕の一言で部屋は静まり返った。

「お前ら…………好き勝手言いやがって!

彼女の考えを!思いを!聞いたことがあるのか?!

彼女はなぁ…泣きそうになりながら、こう言ってたんだぞ。」


*********************


一昨日、彼女は公園で僕にその思いを告げ始めた。

「あのね………死んでもいいって言ったら嘘になる……かな。

私はさ、死んで人の役に立つよりも、人の役に立ってから死にたいんだ。」

「そう………なんだ…。」

僕の口からはそんな言葉しか出てこなかった。


**********************


「僕は彼女に何も言えなかったんだ……!

だから……決めたんだ。

僕は、彼女の意思を尊重する。」

それが、僕の仕事だと思うから。

僕が話終えても部屋は静かだった。

その静寂をやぶったのは、彼女だった。

「ありがとう…………。

ねぇ、私は……あなたの役に立てた?」

彼女は目に涙を浮かべながら尋ねてきた。

(もちろんだ!君は僕を救ってくれたんだ!)

心の中で叫んだ。でも、口には出せなかった。

いや、出してはいけない気がしたのだ。

「そっか………良かった。」

そう言って笑う彼女の目からは、大粒の涙が流れ出していた。

「……メだ。ダメだ!」

僕は知らないうちに叫んでいた。

「私の意思は……こうです。」

そう言うと、どこから取り出したのか彼女の右手には拳銃が握られていた。

僕は思わず走り出していた。その姿は、彼女の目にうつったのだろうか。

「ごめんね……………ありがとう…。」

それが、僕の聞いた、彼女の最後の声だった。

同じ日、僕の街の桜は、すべて散ってしまった。


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