夕食後
食後にヘレンが淹れてくれたお茶で一息つく。疲れがどっと出てきている気がする。
「そういえば、お金渡すのわすれてたよ」
売れた魔法薬のお金を袋から取り出し、ケレーレンに渡す。
「ありがと。じゃあこれがリョーダの分ね」
ケレーレンから金貨を一枚受け取る。
「いつも思うけど、多過ぎじゃない?」
「ううん。こんなに売れてお金が貰えるようになったのも、リョーダのおかげだしね」
ヘレンが「やっぱり愛ねえ」と呟き、ケレーレンが必死に否定する。
「ありがたく受け取るよ」
ケレーレンとヘレンはやっぱり愛でしょとか、そんなんじゃないとかで盛り上がっており、全く聞いていない。
金貨を袋にしまった後、話題を変えるのにちょうどいいので魔法の事を聞いてみる。
「そうだ。ケレーレン、魔法っていつ教えてくれるんだ」
俺の言葉に驚いたような顔でケレーレンがこちらを見る。
「え、えっと。明日の午前中にミリーと魔法の練習をすることになってるから。その時、一緒にね。」
若干、ケレーレンの声が暗くなった様な感じがしたが気のせいか。ていうかミリーと約束してたのか、俺の時はいつも「時間があったらね」で終わるのに。
「おう、楽しみにしてるわ」
「うん」
「え、魔法使えないって冗談じゃなかったの?役割は?」
ヘレンが驚いた顔でこちらをみている。
冗談ってなんだ。魔法が使えるのに使えないというのは面白いことなのか。それに役割ってなんだ。
「ほら、俺って記憶喪失だから魔法も使えなくなちゃってて」
「そういえば、前にそんなこといってたわね」
忘れてたのか。
ちなみに俺は記憶喪失ではない。
この世界に来て言葉もなにもわからなかったので、記憶喪失で通しているだけだ。ただ、ケレーレンには俺が違う世界から来たことを話してある。信じているかどうかは知らないが。
「魔法の使い方も忘れちゃったなんて大変ね。なんでも言ってね力になるから」
ヘレンが同情してくれているが、なんか騙しているようでいい気はしない。
「使えるようになるのは、結構大変なの?」
魔法に関する知識はほとんどない。やっぱり修行は厳しいのだろうか。
「簡単よ、すぐ出来るようになると思うわ」
ケレーレンはそういうが、俺はエルフじゃなくて人間だしな。話半分位で聞いておこう。
「……」
「リョーダ、大丈夫?」
ケレーレンが、俺の頬をつねりながら声を掛けてくる。どうやら寝てしまっていたようだ。
溜まった疲れが一気に出てきたのだろう。
「部屋まで連れて行くね」
「いや、一人で大丈夫。先に戻らせてもらうわ」
二人を残し部屋に戻る。さすがにケレーレンに送ってもらうのは忍びない。
部屋に戻るとベッドに倒れ込む。今日は良く眠れそうだ。
ああ、そういえばブレスレット渡すの忘れてた。まあ明日でいいか。