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貨幣

2015/01/04 改行を本編に近い形に修正。字下げ、句読点の位置を修正。

「終わりました、全部で三十六個です」

「しゃべりながらも素早くて正確。さすがだね」


 そんなことないですよ、とコリンが謙遜しているが、たいしたものだと思う。残念ながら俺にはしゃべりながら液体をこぼさずに移し替える器用さは無い。


「確認お願いします」


 コリンが魔法薬の入った瓶をカウンターに並べていく。


「うん、確かに三十六個」


 信用しているので別に確認しなくてもよかったが、確認してくれといわれると確認してしまう。そういう性分だ。


「では、この三十六個はのちほど店頭に並べておきます」

「よろしく」


 俺がそういうと、コリンが紙に何か数字や文字を書き、店の印鑑のようなものを押す。これは契約書である。ただ紙といっても俺の知っているコピー用紙やノートの様なものではなく、パピルスと呼ばれるものだとは思う。まあパピルスを実際に見たことが無いので、確かなことは言えないが。


「こちらが契約書になります、ご確認お願いします」


 またお願いされたが、この世界の文字はまだ読めないので目を通す振りをする。数字程度ならまだ解るが、それでもこの世界の数字は変な表現の仕方をするので読み解くのに時間が掛かる。


「うん、大丈夫」

「では、お納めください」


 丸められ紐で結ばれた巻物状の契約書をコリンから受け取り鞄の中にしまった。


「じゃあ次は前回の清算をよろしく」


 前回の契約書を取り出しコリンに渡す。


「はい、前回分の三十二個ですね」


 コリンは渡した契約書と伝票の様なものを確認している。


「えーと、魔法薬一つが銀板一枚と銀貨二十枚で、全部売れてますので……銀板三十二枚と銀貨六百四十枚ですね」


 計算が早いさすが商人だ。


「両替すると……ちょっとまってください」


 さすがに両替となると少々時間がかかるようだ。


 ちなみにこの国の貨幣は、下から銅貨、銀貨、銀板、金貨、金版の五種類であり、銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨五十枚で銀板一枚、銀板十枚で金貨一枚、金貨十枚で金版一枚、といった形で上位の貨幣に繰り上がる。それにしても繰り上がりの個数が貨幣によって違うのはとても面倒くさい。成分の含有量の差だろうか。


 先に計算が終わった。金貨と銀板が四枚ずつ、それと銀貨四十枚だ。


「えーっと、金貨四枚、銀板四枚、銀貨四十枚ですね」

「ああ、俺の計算と同じだな」

「え、暗算でこんなに早いなんてすごいですね!」


 コリンが羨望のまなざしで見つめてくる。この程度でこの反応はちょっと恥ずかしい。


「ま、まあ計算は得意だから」


 ちょっと狼狽えてしまった。


「コツがあれば教えていただきたいです、それじゃお金もってきますね」


 そういってコリンは店の奥に入っていった。


 待っている間に、商店で扱っている商品を見て回る。

 この商店は各種武器防具、今回売りに来た魔法薬のような医薬品、旅に持っていくと便利そうな雑貨類を取り扱っている。


 様々な商品の中でも、際立っているのはカウンターの奥に飾られている剣と盾だ。薬草に魔法を封じ込めて魔法薬を作るように、武器防具にも魔法を封じ込めたものがある。スキル付きと呼ぶらしいが、見た目も値段も普通の武具とは格が違う。


 まるで芸術品のようで、スキルが付いていない武器で一番高いものが金貨二枚なのだが、この武器は金版五枚で別格の価格設定だ。


 銀板一枚で人ひとりが十日食べていけるだけの食料を買うことができることを考えると十年分以上である。


 スキルの効果が値段の下に書いてあるようだが読めなかった。


 コリンが俺を呼んでいる。お金が用意できたようだ。


 ウィンドウショッピングを切り上げカウンターに向かった。


「こちらになります、手数料の銀貨三十二枚は引いてありますのでご確認ください」


 手数料は魔法薬一つにつき銀貨一枚だ。

 ちなみに容器に使っている瓶代については魔法薬の売値に上乗せされて店にならんでいるので、引かれることは無い。


「金貨四枚、銀板四枚、銀貨八枚、たしかに」


 受け取ったお金を種別毎に分けて袋にしまった。


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