商店とヘレン
2015/01/04 改行を本編に近い形に修正。字下げ、句読点の位置を修正。
ヘレンの経営する商店の前についた。
この村ではこの商店だけが石造りで他は全て木造だ。石造りの家を建てられるのは金持ちだけと聞いているので、相当儲かっているのだろう。
ケレーレンと並んで商店に入る。
「ヘレン、薬持ってきたわよ」
ヘレンを見つけたケレーレンが声を掛けた。
「あらケレーレンじゃない」
ケレーレンとヘレンが抱き合って再会を喜んでいる。
数年ぶりに再会したような反応だが、実際は半月ぶり程度だ。大げさに思えるが、前回来た時もこんな感じだったので風習なのかもしれない。
ヘレンはこの商店の店主であり、以前は各地を旅する凄腕の冒険者だったという。年は三十代中盤らしいが、見た目は二十代後半のおしとやか系のお姉さんといった所でこちらもケレーレン程ではないが美人だ。ちなみにエルフでは無く人間である。
二人の付き合いは長いらしい。
ケレーレン曰く、ヘレンのことは赤ん坊の頃から知っており、冒険者になる前のヘレンに剣と魔法の指導をしたり、ヘレンが冒険者になった後は一緒に冒険に出たこともあったという。
ヘレンが俺に気が付いて笑顔で声を掛けてくれる。
「リョーダも。二人ともいらっしゃい」
俺とは今回も抱き合ってはくれないようだ。残念。
ちなみにリョーダは本名ではない。
この世界に来た当初は言葉が全く通じず、なんとか手探りでやりとりしていた頃に間違って伝わってしまいリョーダになってしまった。今は日常会話程度であれば問題無く話せるレベルになっている。
「はい、今日から二日間お世話になります」
ケレーレンの家と村は片道十二時間程度の道のりなので、村に来たときはヘレンが商店と一緒に経営している宿に泊まり二日後の朝に村を出るのがいつものパターンとなっている。
「じゃあ先に清算と契約をすませちゃいましょうか」
ヘレンが思いついたかのように、パチンと両手を合わせて言う。
「よろしくね」
ケレーレンが微笑みながらヘレンに応えた。
「コリン、ちょっとこっちに来てー」
ヘレンが、従業員であるコリンを呼んでいる。
「は~い、今いきますー」
返事と共にカウンターの奥の部屋からコリンが小走りで出てきた。