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光魔法

「おめでとう」

「ありがとう。って、え、これで終わり?」

「うん」

 予想外にあっけなく習得できてしまった。

 それにしても嫌な予感がする。さっき光ってたからなー。きっと火系統だと火が出るんだよな。


「系統って、光?」

「うん、光」

 やはり、思った通りだ。


 光魔法が使えるというと聞こえは格好いい。悪霊とかを浄化できそうだ。実際は光るだけだが。

 ん、もしかしたら「カッコいいポーズ」ならできるかもしれない。いや、あれは勇者だけが使える魔法だったか。


 まあ、真面目な話、雷じゃないのは残念だ。

 ただいくら光系統が残念な系統とはいえ、未知の力が使えるようになったのはすごいうれしい。きっと魔法を使った初の地球人だろう。テンションが上がってくる。


「先に戻って食堂で待ってるね。うれしいのはわかるけど練習はほどほどにね」

 ケレーレンはそう言うと、先に宿に戻って行った。


 練習のつもりは毛頭なく、手を光らせて遊んでいるだけだ。


 右肘から先を光らせ、だんだんと右手に光を集中させる。これこそ必殺のシャイニングフィンガー!

 右手を光らせたまま河原の石を殴る。痛い。右手が砕けそうだ。

 石が割れない原因は、恥ずかしがって技名を叫ばなかったからかもしれない。いやそんなことは無いか。


 もっと色々やってみたいが、ケレーレンが待っているはずなので、切り上げて宿に戻る。

 

 食堂に入り、ケレーレンがいるテーブルに着く。

「待たせちゃってごめんね」

「ううん、大丈夫」

 そのまま食事を始める。昼食にはお祈りが無い、理由は興味が無くて聞いてない。


 食事を終えるとケレーレンは用事があるといって、先に部屋に戻って行った。やはり昼食前に魔法を習っておいてよかった。


 お茶を飲みながらゆっくりしていると、先ほどまでケレーレンが座っていた椅子にヘレンが座った。

「ケレーレンから聞いたけど、魔法使えるようになったみたいね、おめでとう」

 ヘレンが微笑みながら祝福してくれる。


「ありがとうございます」

「やっぱり、元々魔法が使えるようだと早いわね」

「え、どういうことです」

 ヘレンから魔法の習得方法について聞いてみる。記憶喪失設定はこういう時に便利だ。

 

 先ほどケレーレンが俺にした方法は正規のやり方ではないらしい。

 正規のやり方は精神統一などで自分の魔力を認識、時間を掛け自力で魔法を出せるようにするようだ。ヘレンもミリーもこのやり方だったという。


 唯一この話を聞いて危惧していたことがあった。

 正規の方法じゃないから、これが出来ないとか、もしくは弱いといったことだ。ただ、そういうことは無いようなので一安心だ。

 

 そう聞くとケレーレンがとった方法はメリットが大きく思えるが、相応のデメリットもあるらしい。

 系統がわからない状態で相手の魔法を引っ張り出すことになるので、魔法の熟練者で無い限りかなり危険だという。


 危険というのは引っ張りだした魔法を必ず食らってしまうことだ。

 俺は光系統だったので光るだけで済んでいる。

 だが俺がもし雷系統だったらケレーレンは感電していただろう。

 引っ張り出す力が弱ければ、ダメージもたいしたことは無い。

 ただこの調節が難しく、強めに引っ張り出してしまえば、最悪死ぬこともあるという。


 何故、ケレーレンはそんな危険な方法をとったのだろう。よほど魔法を引っ張り出す力の調節に自信があったのだろうか。それとも人間の魔力なんてたかが知れているといったことなのだろうか。


「それで、系統はなんだったの?」

 魔法の習得方法に関する話にひと段落ついたところでヘレンが系統を聞いてくる。

「光です」

 系統を聞くと、ヘレンがそれは残念ねみたいな顔でこちらをみている。

 はずれとは聞いているが、そんな顔をされるとヘコむ。

 

「機嫌悪くしないで欲しいんだけど、光魔法って使いどころが少ないのよね」

 確かに少なそうだ。ぱっと思いつく所では戦闘では目くらまし、日常生活では明かり代わりといったところか。

「使いどころというと?」

 帰ってきた答えは、俺が思いついたことと同じだった。


「明かり代わりは便利そうに思えますが」

「まあ、魔窟に潜る時に明かり用の油を大量に持ち込む必要無いっていう利点はあるけど、火系統でも同じことできるから」


 魔窟という聞いたことが無い言葉が出てきた。話から察すると洞窟みたいなものだと思われる。あとでケレーレンに聞いてみよう。


 それにしても光魔法は聞けば聞くほど微妙だ。

 基本的に他の系統で代用可能であり、独自にできることは目くらまし程度だという。


 やっと魔法を覚えることが出来たが色々と前途多難そうである。


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