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第9話

 僕の暗澹(あんたん)とした心情とは対照的に閑散(かんさん)とした放課後の屋上と雲一つない大空。そんな爽快感あふれる日常の風景も今の僕にはうっとおしく感じる。


「凛。モテ男はそういう奴だ」


 凛を屋上に呼び出した僕は昨日のあらましを大まかに話した。


 凛はその間目を(つむ)り思案に(ふけ)っていたようだが、直に眉を微かに動かし目を開けた。


「はあ、そういう奴でしたか。私もなんだかんだで結構好きでしたけどねモテ男のこと」


 恋愛対象ではありませんでしたけどね、っと笑ってはいる凛だが、笑顔に影が差しているような気がした。


「で、どうするんですか? おさなちゃんに全部話すんですか?」


 自ずと手に力が入ってしまう。


「いや、そうはしない」


「でも、この件を明かさないならおさなちゃんは何も知らないままモテ男に接触して、彼の毒牙にかかる事になる……。本当に明かさないの?」


「出来るわけないだろ! 見ただろあの小魚の笑顔。あの笑顔を裏切れっていうのか!?」


 あっ、思わず口調が強くなってしまった。凛にあたっても仕方がないのに……。


「ごめん熱くなりすぎた」


「いや、いいんです。私もこのままじゃ怒りが収まりそうにありませんから」


 そう言う凛は固く手を握り締めていた。そして


「私は一度モテ男をぶん殴りますね。モテ男の虚像に()れてしまった女の子たちの分です」


「ああ。俺もそれは同感だな。ただでさえモテる、なんていう男子高校生が誰でも羨むアドバンテージを持ちながら、これはあんまりだ」


 正直モテ男のこと嫉妬もたくさんあったけど、嫌いじゃなかった……。


「モテ男の件が片付いたあとはどうするんですか? おさなちゃんは……」


「それなら大丈夫だ小魚は俺が落とすからな」


 あっと、目を見開く凛。そして何を思ったのか腹を抱えて笑い出す。


「っくす、っくく。流石ですね先輩面白すぎます。でも……、冗談じゃないんですよね?」


「ああ、本気だ」


「先輩のその何の根拠もなしにひたむきに努力する性格……、嫌いじゃないですよ」


「ん? お得意のデレか?」


「っば! 何で先輩にデレなくちゃいけないんですか!? お得意のとか言わないでください!」


 腕を組みながらそっぽを向いた顔を紅潮させ、僕を睨む凛。


 はっはー。それがデレって言うんだよ。


 珍しいこともあるもんだ。僕が凛をからえるなんて……。


 なんでもやれそうな気がしてくるじゃないか。


「よし、取り敢えずモテ男の野郎をここに引っ張り出してもらえるか?」


「了解です。すぐにでも連れてきます!」


「ありがとな」


「いえいえ、お安いごようです」


 そう言って揚々(ようよう)と校舎へと走って行く凛。


「覚悟しろモテ男。モテない男の本気を見せてやる!」


 最初はうっとおしく感じたこの青空も今は気持ちよかった。







 ✽      ✽







「それで何の用?」


 しばらくして屋上に来たモテ男は怪訝(けげん)な表情を浮かべる。


 なるほどな。まさにイケメンなんて言葉がそっくりそのまま当てはまりそうな顔だ。おまけに背も高いし、スラッとしていて今流行りの細マッチョ。


 ったく。どんだけイイトコ取りしてんだよ。僕たちを泣かせるな。


 今まで僕はこのモテ男に憧れて、尊敬して、嫉妬してきた……。でも今はもう違う。真実を知ってしまった。


 だからこそ今モテ男を追い詰める!


「お前はそういう奴だったのかよ」


「はあ、そういう奴だったのかと言われても……。まずは説明してくれないか?」


 ああ。ゆっくりと説明してやるよ。心して聞きやがれ!


「お前を好きになった女の子はたくさんいた。きっかけはほんの些細(ささい)な出来事だったのかもしれない。でも好きなった……。しかしお前はそんな彼女たちを裏切り利用した……。そんな純粋な心を踏みにじったんだ」


 言動だけじゃなく心も熱くなっていく。


 まあ、そりゃそうか。僕は今コイツに心底イラついているんだから。


「何を言ってるのかさっぱりなんだけど」


 っか! いちいちカッコよく髪を掻きやがって!


(とぼ)けるなよ。お前のような奴がいるから僕たちが不幸を見るんだ。まあ、お前にはその不幸はわかりっこないだろうけどな」


 いつも女の子を根こそぎ持っていきやがって。俺たちにも少しくらい分けてくれたっていいだろ。


「君の話からは要領を得ないな。何が言いたい?」


 疑問を浮かべるモテ男。


 だがここは押し切らせてもらうぜ!


「っは。お前のせいで僕が不幸を見るだけならいい……。僕が努力すればいいだけの話だ。……だがなそんな私怨(しえん)を除いても一番僕がイラついてるのは……。


 お前に恋した女の子達までもが不幸を見ることになる


 っていうことなんだよ!」


 思い出すのは小魚のモテ男を好きだと言ったあの笑顔。陰りも疑念も何も感じさせないただ純粋な好意からなる笑顔。


 小魚はあの時嬉しかった、と言った。今まで僕たちには見せなかったような笑顔で……。僕には実感はないがそれはおそらく恋というものなんだろう。奥手な少女の初めての恋。


 だから……。


 それを踏みにじりやがったコイツは絶対に許せない!


 目を見開き瞠目(どうもく)するモテ男だったが、やがて悔しげに顔を歪めると僕を睨みつけ口を開く。


「ったく。そういうことか……。どこでそんな情報聞きつけやがった? あーあ、このまま誰にも言わずに終わらせようと思ったのにな」


 口調が崩れ、話し方が荒くなる。


 だがこのまま引き下がるわけにはいかない。ここで機先を制することができればこっちのものだ。慎重に頭の中から言葉を選ぶ。


「昨日の放課後。昇降口でだ」


 はあ、と嘆息し首を振ると今度は僕を感心したような眼で見下す。


「あんな遅い時間まで残っている人がいたとはな。うっかりしていた……。完全にこっちのミスだ。まあ、取り敢えず君は関わらないほうがいいさ。……まあ、一応聞いておくか。君、名前は?」


 あくまで余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の笑顔で僕を見る。


 まあ、この笑顔といい正直モテ男の言いなりになるのは釈然(しゃくぜん)としないが名前を名乗るくらいなら別に構わないだろう。


「僕の名前は……」


 突然僕の口が止まる。しかし僕の脳にはいつかの凛の言葉がフィードバックしていた。



 先輩大事なのはファーストインプレッションです。


 まずは相手に強烈な印象を持たせることが大事。


 凛はそう言っていた。


 凛を信じてみよう。前回は酷い目にあったが今回はうまくいきそうな気がする。


 根拠のない自信。凛はそれを自然と感じさせてくれる。凛と一緒に部を設立できてよかった。


「俺はこの世の全てのモテ男という名の神に逆らい、涜神(とくしん)するもの。俺は『モテ男=神部』の部長……。


 坂上(さかがみ) 督志(とくし)だ!!」


 名乗りあげた勢いそのまま拳を固く握り締め、モテ男に殴りかかる。あまり人を殴るのは好きじゃないがボディぐらいなら構わないだろう。


 喰らえモテ男! お前に恋した女の子たちの苦しみを知りやがれ!


 トスッ。


 首筋に軽い衝撃。しかしそれだけで体から力が抜けその場に倒れてしまう。


「ゴメンな。少し時間をくれ」


 僕の意識はモテ男の言葉の意味を考える間もなく落ちてしまった。







  ✽      ✽







 頬に伝わる冷たく、硬い感触。ん? あれこの感触どこかで……。


 目を開けてあたりを見回してみると、何度も目にした高く積み上げられた椅子や机があった。


 どうやらここは部室らしい。そして今僕は机を並べて作った簡易ベッドに横たわっていた。


 状況としては上崎さんに殺されかけた時と同じか。でもひとつだけ違うことがある。


「気がついたか。あんま力入れないでやったんだけど、痛かったんならゴメンな」


 僕と反対の位置の椅子に座るモテ男。相変わらず人あたりの良さそうな笑顔を浮かべていた。


 モテ男の言葉から察するにどうやら僕はモテ男から一撃をもらい気絶させれていたらしい。その証拠に首筋に微かな痛みが残っていた。


 っく。情けない。やっぱ慣れないことはするもんじゃなかったか……。


 しかしなぜコイツは僕の前で悠長(ゆうちょう)に笑っているんだ? もしかして僕今から脅されたりするのか?


「ああ、いやそんなに身構えないでくれ。取り敢えず俺の話を聞いてくれないか?」


「今更聞くようなことはないぞ。お前の罪状はしっかり把握してるんでな」


「まあまあ、そう言わずに」


 そう言うとモテ男は浮かべていた笑顔をふっと消す。


「余計な誤解を与えてしまってごめん。この件は俺だけで片付けるつもりだったんだ」


 っと、言うやいなや僕に頭を下げてくる。それも最敬礼といっても差し支えないぐらいの角度で。


 うん? どういうことだ。この件ってなんのことだ。そもそもなんでモテ男が僕に謝るんだ? モテ男は自分のモテ度を利用して女の子のメアドをあの下衆に売る最低な奴だったんだろ?


 頭の中が混乱してくる、状況の分からない僕にできることはモテ男の次の言葉を待つくらいだった。


「まあ、まずは一から説明しよう。俺があるツテから聞いた話にうちの学校で女の子のメアドを集めて、他の高校の似たような活動をしている連中に売ったり、それを使って如何(いかが)わしいことをしようとしている連中がいるとかいうのがあったんだ。おまけに奴らはそこそこ女子に人気がある男子を脅して女の子のメアドを聞き出していた事もあったそうなんだ。たくっ、女の子のメアドぐらい自分で聞けってんだよな」


 それができたら苦労しません。


 いや、そんなことよりどういう事だ? なんでモテ男が自分の属するグループのことをベラベラとしゃべる? モテ男はそいつらの仲間なんじゃないのか?


 そんな僕の頭に浮かぶ疑問をお構いなしにモテ男の話は続いていく。


「俺はそれを聞いて心底腹が立ったんだ。不当な手段を使って得た女の子のメアドをそんなことに使っていた事にな。だから俺はその組織を潰してやろうと思ったんだ」


 ん? どんどん僕が考えているモテ男の人物像とずれていく。まさか僕、何か決定的な勘違いをしているんじゃ……?


「敵を知るには敵情視察ってな。だから俺は奴らの中に潜り込むことにしたんだ」


 はい、僕の間違いであること確定です。


「奴らの仲間の一人にお小遣いが欲しいからメアド買いませんか? って言ったらすぐに相手も乗ってきたよ。それですぐに取引開始」


「ま、待って。……なら僕が見た光景は?」


「俺が奴らを釣るための取引現場だな」


「ああああああああーーーー!!」


 嘘だろ!? モテ男が自分のモテ度を利用して金稼ぎしている事も、モテ男があの下衆の仲間だということも全部僕の早とちりだったのか!?


「な、ならあんなに弱々しそうにしてたのは?」


「相手に付け入るには相手からナメられることが一番だからな。奴らは脅しておけば自分たちの言いなりになる、とでも思うだろ」


 だからかー。紛らわしいことすんなよなー。


「ごめん……」


 ……っく、恥ずかしくてモテ男と目合わせられない。


「いやいや、君が謝ることじゃないんだ。さっきも言ったあとおり俺が余計な誤解を与えてしまった事に非があるんだ。それに……」


「それに?」


「俺感動したよ。君の女の子のために怒るあの姿に!」


「それは言わないでくれ!」


 思い返してみれば僕相当恥ずかしいことを口走ってないか?


「特に女の子が不幸になる、ってとこらへんが良かったな」


「分かった! 分かったからそれ以上言わないでくれ!」


 僕を羞恥心で殺す気か。あんな恥ずかしいセリフは人生一度きりだ。


「なあ、ところで提案、というよりお願いみたいなものなんだが……」


「はい? 何ですか」


 あ、知らずのうちに敬語になってる。


「今からあの下衆共の所に女の子のメアドを悪用するのを止めるよう説得しに行くんだが、坂上君も来てくれないか?」


「なんで僕が?」


 純粋に疑問だ。なんで僕まで必要なんだ? 僕必要ないだろ。


「いや、俺一人で行くと一対多数になっちゃうだろ。だから数に押されちゃうんだ。もし囲まれでもしたらそれで終わりだろ」


「まあ、確かにそうだが。僕なんかじゃとても戦力になれないぞ」


 痛くないようにと考慮されて一撃ダウンだからな!


「はは。それはわかってる。大丈夫だ。ただ少しでも数が欲しいだけなんだ。それに……、やっぱり君のような人と一緒だと心強いしな」


 無邪気に笑うモテ男。この人あたりの良さそうな笑顔も人を疑わない性格もモテ男がモテる一因なんだろう。


「分かった」


「一緒に行ってくれるのか!?」


「う、うん。僕なんかでよければな」


 ありがとう、っと破顔し、丁寧に会釈するモテ男。律儀な人だ。この笑顔が人を寄せ付けるのだろう。僕もこんなふうになれたらな……。


「突然なんだが……、あの子君の彼女なのか?」


「っは!? ホントに突然すぎるだろ! 僕と凛はそんな関係じゃない。利害の一致による関係とかそういうもんだ」


「でもあの子君が俺の一撃で気絶した時、先輩! って叫びながら真っ先に君を守るように両腕を広げて盾になってくれてたぞ」


「……………………」


 そんなことがあったのか……。


 ざわついていた思考が落ち着いていき、(つの)っていたモテたいという焦燥感が霧散(むさん)していく。例えるなら部屋をひっくり返してまで探していた探し物が自分のポケットの中に入っていたのを見つけたような感覚。


 僕はひたすらモテることだけを考えてきた。だが失敗するたびに自己嫌悪に(おちい)り、時には女の子を恨みもした。


 でも今何か大切なものに気づいた。気づかせてくれた。


 それはモテたいなんていう大層なものじゃない。でも当たり前にあるようで自分では気が付きにくいもの……。それを凛は気づかせてくれた。


 思い返せば僕が落ち込んでいる時、励ましてくれたのも、モテたいっと言った僕をサポートしてくれたのは凛だった。いつだって僕が何かしようとするときには隣にいてくれた。


 嬉しい……。ただただ嬉しい。


 まさかこんなにも身近にある幸福を忘れていたとはな。


「どうしたボーッとして」


「いや……、なんでもない」


 モテ男を見るがもう嫉妬も尊敬も羨望も湧いてこない。それどころかあんなに遠くに感じたモテ男に親近感を感じる。


 モテ男は女の子がひどい目に合うかもしれないわかったとき、腹を立て一瞬の逡巡もなく組織を潰してやろうと思い立った。それはきっとギブアンドテイクなどではなく、きっと今僕が気づいた大切なものをモテ男は既に知っていていたからこそ取れた決断なんだろう。


 モテ男と僕との違いなんてものは言ってしまえばそれだけだったのかもしれない。


「人を羨ましいって思うことあるのか?」


「はあ、それはそうだろ。俺は今君が猛烈に羨ましいぞ。あんなに可愛い子に大切に思われている君がな」


 ……そうか。やっぱりな。


「説得にはいつ頃行くんだ?」


「あ、ああ。日が暮れ始めた頃奴らの集会があるらしい。だからそれに殴り込みに行こうと思ってる」


 なら後一時間は余裕がある。それまで何をしようか……。


 モテ男にモテの極意でも聞いてみるか。


「なあ、モテるためには……」


「坂上先輩!! 大丈夫ですか!?」


 突如、狭い部室に響く凛とドアの叫び声。見れば凛が扉を蹴り開けていた。横開きタイプなので取っ手に足を引っ掛け横へ蹴り開けたことになる。蹴られたドアはかろうじてレールの上に乗っていたがドアに埋め込まれているガラスにまた一つヒビが入っていた。


 ドア、直してやるか……。


「なら俺はこれで。放課後昇降口に来てくれ」


「あ、ああ。わかった」


 颯爽(さっそう)と後ろ手を振り、凛と入れ違いに部室を出て行く。


「心配しなくてもいざという時には俺が守ってやるから安心しろよ」


 最後までカッコいい奴だった。僕が女だったら惚れちゃいそう。


「先輩! 死んでますか!?」


「殺すな。僕はまだ生きてる」


 上崎さんの蹴りを受けた僕はそう簡単なことでは死なないだろう。あの時は妙な幸福感に包まれるくらいやばかったし。


「凛今まで……」


 呼吸が止まる。柔らかい何かが僕の体を包んでいく。


「坂上先輩……。心配したんですからね」


 僕は凛に正面から抱かれていた。凛は低い嗚咽(おえつ)を漏らしながら一層力を込める。その際僕の胸に凛の暖かいものが押し付けられていたが不思議と気にならない。そんなことよりも僕の肩が濡れていく事の方がよっぽど僕は嬉しかった。


「ゴメン」


「もう先輩が死ん、じゃうか、と思ったん、ですから……。先輩に発破(はっぱ)を掛け、たの私だし……」


 凛の声は震え、所々に嗚咽が混じる。いつもの毅然(きぜん)とした話し方が嘘のようだった。


「死ぬわけないだろ。僕は上崎さんの蹴りをくらっても生きていたような人間なんだぞ」


「だって……。上崎さんの時とは完全に状況が違ったし……。あのまま先輩が殴られ続けるのかと思うと……」


 それであの行動か……。


「大丈夫だ。やっぱりモテ男はいい人だっただろ。凛が心配してくれたような事は何一つ起こっていない」


「でも……」


「それに……。おかげで大切なことに気づかせてもらったからな。だから凛が謝るんじゃなくて僕にお礼を言わせてくれ」


「え、それって……?」


「ありがとう。いつも側にいてくれて……。僕がモテ男の一撃で倒れた時に僕を守ってくれて」


「え、モテ男から聞いたん、ですか……?」


 落ち着いてきた凛の鼓動がまた加速し始める。表情は見えないが赤面しているのだろう。声が羞恥に震えているのがわかる。


「だって……。どうしていいかわからなかったし……。ただ必死だったし……」


「わかってる。ありがとう」


 全部わかってる。だから今は凛に感謝したい。


「いつもは頼りなくて、妄想の中だけでフィーバーしているだけの残念男のくせに、こういう時だけカッコイイなんて……。坂上先輩はずるいです」


 むーっと頬を膨らませながら僕から腕を解き離れる。やっといつもの調子に戻ってきたみたいだ。


「それで、これからどうするんですか?」


 涙を隠すように顔をそっぽに向ける凛。残念だがその仕草が泣いていたことを証明しているようなものなんだよ。さすがにそこを責めるようなことはしないが。


「モテ男について行くつもりだけど……」


「だったら私も連れて行ってください!」


 えも言わせない強い口調。いつもの凛だ。


 なんで? とは聞かない。いや、聞かなくても理由はわかってる。


「ありがとう」


「はっ? なんでお礼なんて言うんですか?」


 ホント凛には感謝してばっかりだ。

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