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最終話

 モテ男騒動から二週間が過ぎた。


 相変わらずモテ男は数歩歩くだけで女の子とぶつかったり、カッコいいと噂されたり、告白される日常を送っているらしい。そんな日常ぶっ壊れればいいのにな。


 また諸悪の根源メアドコレクターはというと、以降それらしい活動をしているという噂もなく、完全に消滅したと見ていい。まあ、あの仕事人フリークのその後は気になるけどな。


 そして影の功労者こと僕、坂上督志はというと……。


「いやー、あの時の先輩カッコ悪かったですよね」


 今日も変わらずやかましい後輩と共に通学路を歩いているのだった。ちなみに今日は凛が用事があるとかでこっちの道だ。


「うるさい。二週間も前のことを引っ張ってくるな」


 モテ男に言ったあのセリフは僕の中の黒歴史となりつつある。しかもそれが全て僕の誤解から出たセリフだというのだから非常にタチが悪い。


「あ、でもあの時の凛も可愛い……」


「ところで先輩、モテ男とおさなちゃん付き合い始めたそうですよ。おさなちゃんがモテ男に告白したらしいです」


「ホントか!」


 脈アリだとは思ったがまさか本当に付き合いだすとは思わなかった……。小魚も頑張ったのだろうモテ男への告白を……。告白なんてもってのほかとか言ってたくせにな。


 嬉しい……。うまくいったようで本当によかった。


 …………あれ? 今何かごまかされたような気がするんだが? まあ、いいか。


「はあー、いいなー。私も告白したいです」


 憂いの表情を浮かべふと一言を漏らす凛。


「誰にだ?」


「え、え! 今の声に出てましたか!?」


「おう。バッチリな」


 ううーっと(うめ)きながら頭を抱える凛。そんなに驚くような事なんだろうか?


「う……、うう。なら言いますね」


「うん? うん」


 凛が歩を止め僕の目を見つめてくる。顔は真っ赤になり、手は震えていたが、凛の瞳はどこまででも透き通っているようで、鋭く、優しかった。


 うん。いつもどおりの凛だ。僕が好きな。


「…………」


 互いの視線が交わり沈黙が生まれる。だが、その沈黙を破ったのは凛の(ささや)くような言葉だった。


「私は先輩のことが……」


「おーい、兄。牛乳買ってきたかー?」


 突然、僕の耳に飛び込んでくる聞きなれた、というか聞きたくなかった声。間違いない……。僕の妹、火鳴(かなり)の声だ。


 ただ、今だけは無性に火鳴をぶっ飛ばしたいのはなんでだろうな。


 まあ、表情には出さないが……。だって怖いし……。


「買ってねえよ。というかいかにも僕の存在理由が妹のために牛乳を買ってくることみたいに言うな」


「おいおい、そんなこと言うなよ。兄の可愛い妹が将来ナイスバディになるかどうかは兄の買ってくる牛乳にかかってるんだぜ」


「それ僕が買ってこなくてもいいよな! たまには自分で行きやがれ」


「え? 兄興奮してたんじゃなかったのか? 自分の白色の液体を妹に飲ませることができることに」


「してねえよ! どんな変態だよ! なんで実の妹でそんなことを考えなくちゃならないんだ!」


「不憫だね~」


「いや、何が!?」


 実に愉快そうに腹を抱えて笑う火鳴。相変わらず兄を兄とも思わない横暴な妹である。誰だよ妹は清楚で優しくてお兄ちゃんが大好きとか言った奴。


「坂上先輩」


 横から聞こえてくる不機嫌な声。振り返ると如実(にょじつ)に顔を歪め、僕を睨んでくる凛。いや、ホントすまないっす。


「ん? 知り合いか兄」


「ああ。僕の後輩の咲宮凛だ」


「あ、すみません突然お邪魔してしまって……。ワタシは兄坂上督志の妹、坂上火鳴と申します。凛さん、ですよね。お話は予予(かねがね)兄から(うかが)っておりました。いつも兄がお世話になってしまっているようですみません。こんな兄ですがどうぞよろしくお願いします」


 ペコリ、と丁寧に頭を下げる火鳴。


 嘘だろ……。火鳴が人様に向かって頭を下げてる。しかも態度はどっかの大和撫子かっていうぐらい落ち着いていて育ちのいいお嬢様みたいだ。


「あ、おい兄。今失礼なこと考えやがったな」


 僕に対してはこれだもんな……。


「あ、そういえばあのセリフ使う場面あったのか?」


「ば、ばか」


「ああん。馬鹿だと」


「はい。すいません」


「セリフってなんのことなの?」


「はい。それはですね……」


 凛と話すときだけ背筋を伸ばし丁寧口調になる火鳴。僕と凛で態度があまりにも違いすぎるだろ。


 兄の威厳なんて微塵(みじん)もない。


「兄からカッコイイ登場の仕方を教えてくれ、っと言われたものですからワタシがカッコイイ名乗り方とセリフを伝授したのですよ」


 なんでコイツは余計な事しかしないのだろう。


「嘘……、あれ妹に考えさせたセリフだったんですか?」


 露骨に目を細め、僕から距離を取る凛。


 っく、だから知られたくなかったのに……。


「お、こんな時間か。じゃあなリストラ寸前牛乳配達員。――ワタシはこれで失礼します。お気を付けてお帰りください」


 僕を罵倒し凛を気遣うという器用な真似をして、走り去っていく火鳴。


 もう二度と会いたくないな。……でも家に帰ったらいるんだよなー。


「あれが先輩の妹ですか。確かに聞いた話と違いませんね」


「だろ」


「先輩ってどこか残念ですよね……。モテ男にはなれないわけです」


「いやいや、僕はもうモテ男になろうとか思ってないし」


「あーそうでしたね。神に逆らい、涜神(とくしん)するんでしたね」


「お願いします。そのセリフは忘れて下さい」


 そうでないと僕は恥ずかしすぎて生きていけない。


 でも確かにカッコ悪いよな僕。肝心なところを妹に頼るなんて……。


「っくす。やっぱり先輩って面白いですね」


 落ち込む僕を尻目にはにかむ凛。


 これは僕を褒めているのだろうか、それとも(けな)しているのだろうか……。前者であることを信じたい。


「そういえばさっき言おうとしていたことって……」


「先輩があまりにもカッコ悪いですから内緒です」


「ならどうすれば続きを聞かせてくれるんだ?」


 んー、っと顎に指を添えながらそっぽを向き考え込む凛。そして何かを思いついたのか手を叩き意地の悪い笑みを浮かべて僕に向き直る。


「先輩がカッコよかったら……、ですかね」


 凛はそう言うと僕の方を振り返ることなく走り去っていってしまった。


「…………」


 一人取り残された僕は二週間前の事を思い出す。


 天使のような悪魔からは死の回し蹴りを決められ、委員長からは死ねと言われ、誤解してモテ男に偉そうに説教するし……。


 思い返せば散々なことばかりだった。


 でも凛やモテ男のおかげで大切なことにも気が付くことができた。それは僕の中で生き続けるだろうし、きっと僕が間違えそうな時には正してくれるだろう。


 僕はこれからもモテるために尽力していきたいと思う。凛が気づかせてくれた大切なことを忘れないようにしながら……。


 でも女の子とは二週間前沢山話すことができたしな。これでコミュ障なんて言われなくてすむ。


 …………あれ? 今回の件で僕がまともに話した女の子って凛とおさなだけじゃ……。


 どうやらモテ男への道のりは長いようだ。





      了

私の表現力及び語彙力の乏しさもあり、稚拙な表現になってしまっている部分が多々あるせいで読みづらかったことだろうと思います。

それでも読んでくださった方ありがとうございました。続きを書くかどうかは未定です。新作もいずれ書きたいと思っておりますのでその時はどうかよろしくお願いします。

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