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第16話【四発目の行方】

「流石、覇権ゲーム。スナイプしようとしても上手く行かないな。」

「俺達は、薬師井さんと遊べるなら何でもいいけどな!ガハハ!」


 俺のつぶやきに対して、やかましい音量で返事が返ってくる。何回かプレイしたが、ハリのチームとはマッチングしなかった。

 しかし、俺が驚いたのは高島と平山のゲーム中の動きだ。彼らは俺達の定石通りの戦術とは異なる速攻戦術を得意としていて、道端のモンスターやスキルには目もくれず敵陣に突っ込んでいく。最初は無謀な初心者かと思ったのだが、終わってみれば彼らの速攻が決まり勝利した試合も多い。勿論、失敗した時には実質二対四にされる危険性がある諸刃の剣なのだが、彼らにはゲーマーの持ち合わせていない潔さがあり、学びになる部分もあった。そして、アグロの高島と平山に、俺とトウカのじっくりした戦術が奇妙に噛み合い、今日の俺達は全勝していた。


《対戦に参加するメンバーが決まりました!バトル・フィールドに移動します。》


「さあ、次の試合マッチングしたよー!」


《タクティクス・フェイズを開始します。勝利のため、作戦を立てましょう。》


「来た…!ハリちゃんだ!ハリちゃんが相手にいる!」


 おおっ、と歓声が上がる。俺もメニューから対戦表を確認すると、そこには『八鍼』と彼女のプレイヤーネームが刻まれていた。その取り巻きは、知らないプレイヤーだ。例のXのポストで集めたメンバーなのだろうか。


「やっとお出ましか!薬師井さんの生き別れの妹…その再会がバーチャル空間だなんて…くーっ!泣かせるぜ!」

「あれ?小学生の時の恋敵じゃなかったっけ?どちらにしろ泣けるゥー!」

「トウカ…こいつらにどんな説明したの?」


 俺がバカ二人に呆れていると、トウカは無視して作戦会議を始めた。


「良い?相手は凄腕のスナイパーだけど、怯むことは無いよ。高島くんと平山くんは、いつも通り突っ込んで!」

「よっしゃ!複雑な指示だけど、なんとかこなしてみせるぜ!」

「ちょっと良い?メモんないと忘れちゃう…。」


 こいつら、わざとふざけてるの?それとも真のバカなの?


「ケンちゃんは…もう、察しているでしょ。どうやってあのスナイパーを攻略するか。」

「多分、な。ただ、バカ二人がちゃんとやらないと上手く行かないぞ。大丈夫なのか?」

「大丈夫、大丈夫!トラブルがあっても、ケンちゃんが何とかしてくれるでしょ?…さ、始まるよ!」


《バトル・フェイズを開始します。スキルを入手して、相手のチームを殲滅しましょう。》


 そういえばトウカって、肝心な所は俺任せなところがあったな…。

 不安でモヤモヤする中、バリアが消えて、対戦の火ぶたが切って落とされた。


「おっしゃー!行くぜ平山!俺達が先陣を切ろうぜ!」

「おうよ!高島!…見ていてくださいね、薬師井さん!うおおおお!」


 そう叫ぶと、二人は凄い速度で走り出し、あっという間に姿が見えなくなった。


「ケンちゃんと私は、落ち着いてスキルを集めよう。スナイパーにやられないように、隠れてこっそりと…ね。」


 言われなくてもそうするつもりだったので、トウカと一緒にスキルを拾ったり、モンスターを倒したりする。このゲームは毎試合、レベルやスキルがリセットされて一からのスタートになるので、前の試合で無双した時は身体の動きが鈍った感覚がして少し気持ち悪い。


「『スラッシュ』!…ふぅ。いい感じだな。」

「そうだね。普段は四人でファームを分け合っているけど、今回は私達だけで自陣近くのスキルを独占できているから、育ち具合もいい感じ。」


 トウカの分析通りであった。二人に敵陣を荒らさせる戦法による恩恵が、こんな形で出るとは。


「トウカ。あそこのエリートモンスター、一緒に倒そうぜ。」

「オッケー。…ってわわっ!」


 トウカの返事と共に、ボイスチャットから雄叫びが飛んできた。俺達はその音量に思わず仰け反ってしまう。


《よっしゃあああっ!一人、撃破だぜ!》

《こっちも一人撃破!俺達のコンビは無敵だぜ!》


 高島と平山の速攻が、気持ち良い位に決まったようだ。もしかして、ハリを倒してしまったんじゃ…と思いスコアボードを開いてみるが、ハリは無事であった。死んだのは取り巻き二人だ。


「ナイス!二人共。そのままその辺で暴れてて!」

《《ラッシャアァウオオラアアァ!》》


 トウカに対して馬鹿二人が意味の分からない大声で返事して、また耳が痛くなる。たまらずボイスチャットを切った。


「どうやら、エリートモンスターを倒している暇は無いみたいだな。俺達も向かうぞ。」

「さっすが、ケンちゃん。私の作戦を理解しているみたいだね。いこ!」


 二人が暴れているのは、フィールド中央から敵陣寄りのエリア。遮蔽物が少なく、見通し良好の場所だ。周りには、木々が生い茂りモンスターが多数生息する森や、大規模なアスレチック、高低差を演出する小さな山等が設置されている。これでもかというくらい、舞台は整っていた。


「さて。この辺から見ていようか。」


 俺とトウカは、森の中に隠れて高島達を応援することに決めた。頑張れ、馬鹿ども。良い的になってくれよ。


「ウオラアアァア!隠れてないで出て来いよ!この辺のスキルは俺様が全部頂くぜェ!」

「待て待て高島!俺の分も残しておいてくれよ!ガハハ!」


 彼らは謎の三下ムーブで盛り上がっている。


「そろそろ撃ってくるんじゃないかな。トウカ、良く見てろよ。俺はアスレチック方面を見ているから、トウカは山の方を頼む。」


 俺の指示に、トウカはウィンクで了承を示した。あざとい奴め。

 予想通り、数秒も経たないうちに敵からのアクションがあった。


「ぐおおおお!」

「どうした!高島!」


 音もなく静かに、針の穴を通すような繊細な射撃が高島を貫いた。間違いなく、ハリの射撃だ。そして、俺のヤマは当たった。大きな滑り台が特徴なアスレチックの頂上に、銃口が光るのが見えた。


「よし!トウカ、あそこだ。アスレチックにハリは潜んでいるぞ。」

「…!ケンちゃん、待って。あれ…。」


 トウカが苦笑いで指さした先には、予想外の事態が起こっていた。


「痛ってぇー…!平山!あそこだ!あそこから撃たれたぞ!」

「なんだって、高島!おーい!遠くから卑怯だぞ!今そっち行くからな!!」


 高島が、ハリの射撃を一発耐えた上に射線を見破ったのである。


「どうして…。そうか、あいつら、2キルも取ったしファームも順調だから、レベルが上がって最強のフィジカルを手に入れていたのか。だからハリの射撃といえど一発くらいなら耐えられたんだ。」

「分析してる場合じゃないよ、どうすんの、ケンちゃん!あんな事されたら…!」


 まずい。気付かれてしまっては、スナイパーはその位置を変えるだろう。折角アスレチックの上であることを見破ったのに、これではやり直しだ。

 いっそ、今すぐにアスレチックに向かおうか…?駄目だ。幾ら何でも間に合わないし、警戒が強まっている今、道中に狙撃されてしまうかもしれない。

 俺が頭を抱えていると、おずおずと言った声が聞こえてきた。


「お…お前たち…よ、よくもやってくれたなぁ…!」


 その声の主は、今まで登場しなかった最後のプレイヤー…。敵チーム、四人目の男だった。オンラインゲームの初期アバターのコスプレをしているのかというくらいテンプレの装備を身に着け、わなわなと震えている。


「あぁん!?なんだこいつ。わざわざやられに来たのかよ。ヒャハハ!」

「ガクブルしちゃってさ。無理しなくていいんだよぉ?ガハハハ!」


 高島と平山は、出来れば無関係を装いたくなるような悪役っぷりを見せつけている。「ケンちゃん、どうしよう。」「…見てよう。」「見てるって…。」「いいから。」俺達は短く言葉を交わした。


「僕だって…。僕だって…。チームの…ハリさんの役に立って見せるんだぁ!」


 初期アバター君の剣が、緑色に激しく光る。アルティメットスキルの発現だ。これには流石に、悪役二人も身体をこわばらせた。


「い…いくぞ!『アース・バインド』!!」


 彼は剣を大きく振りかぶり、地面に付きたてた。その剣を幹に、木の根が地面に張り巡らされる。それは瞬く間に高島と平山を飲み込んでいき、二人の身動きは完全に封じられた。


「今だ!ハリさん!撃てえええぇぇぇ!!」


 初期アバター君が魂の叫びで、ハリに思いを届ける。それは映画のワンシーンのようにロマンチックな場面であったが…。


「…こんな都合の良い展開、ある?」

「あ、あるんだね…。」


 俺達は笑うしかなかった。


「…こうなったら、間違いなくハリちゃんは撃ってくるよ。」

「ああ…。よし、一気に『ステルス』で近づくぞ。トウカ、『献身』で強化した移動速度バフをくれ。俺はアスレチック付近まで移動する。トウカは、ここから射線を見ておいてくれ。正確な位置がわかったら、ボイスチャットで伝えるんだ。」

「オッケー、いよいよだね!…『スイフト』!いってらっしゃい!」


 トウカのスキルを受け、脚に力がみなぎる。どこまでも駆けて行けそうだ。俺は『ステルス』を使い、初期アバター君と馬鹿二人の間を堂々と突き抜けてアスレチックへ向かった。

 同時に、背後から汚い悲鳴が上がった。高島が撃たれたのだ。


「高島あぁぁ!くそ、くそおおぉ!」

「ハリさん!もう一人だ。いけええぇ!」


 高島は今度こそ倒れたようだ。そして、初期アバター君は自分が漫画の主人公であるかのように、必死に声を上げる。まだ俺達が残っているというのに、まるでこの二人を倒したらゲームセットであるかのような熱の入りようだ。


《ケンちゃん!今、真っすぐにさっきのスナイパーの方に向かってるかな?そこから2時の方向だよ!ハリちゃんは、家みたいなアスレチックに移動してる!》


 トウカからのボイスチャットを受けて、俺は視線を軽く右に向ける。そこには、色とりどりのブロックを組み合わせたおもちゃの家のアスレチックが建っていた。梯子や雲梯などを組み合わせたその頂上には、小さな窓付きの部屋がある。


(あそこか…!)


 狙いを定めた俺は、自己バフも使いさらにスピードを上げていく。透明になっても、森を通り抜ける時は木々が騒めいた。今、ハリは集中して平山に向けてスキルを装填しているはずだ。多少騒がしくしても問題ない。

 森を抜け、アスレチックが並び立つエリアに到達した時、頭上に一瞬だけ、張り詰めた糸のように真っすぐの射線を引いて銃弾が飛んで行くのが見えた。俺は、死神の首元に手をかけている実感が湧いた。『ステルス』が切れるまで、あと数秒。ここからは、慎重に進もう。


(『サイレンス』。)


 俺は脳内で、足音を消すスキルを詠唱した。これで、アスレチックを登って行っても気付かれまい。気配察知のスキルを運よく拾われていたらそれまでだが、相手のファームは馬鹿二人が削ってので、ハリの所持スキルは少ないはず。そう都合よくスキルは揃っていないだろう。先ほどから同じ種類の銃弾しか飛んでいないので、一つのスキルだけで高島らを攻撃しているであろう事からも、それが察せられた。

 そんな理論を構築しているうちに、例の小部屋の手前までたどり着いた。眼前のドアを開けると、いよいよ対面だ。ドアには小窓などはなく、その中が見えない造りだった。

 俺は、ドアの向こうに思いを馳せる。実は、ハリのリプレイは敢えて見ずに、その正体を楽しみにしていたのだ。戦場を恐怖に陥れる死神のような戦略を持つ、実は寂しがり屋の少女。…その死体を眺めたい。


(さて…。)


 足音は消せても、ドアの音は消せない。部屋に入った後、交戦は避けられないだろう。脳内でスキル回しのシミュレーションをする。意表を突くアドバンテージを生かして、一瞬で制圧してやろう。

 よし。心の準備は整った。


(悪く思うなよ…死神さん!)


 意を決して、扉を開ける。双剣を抜き、部屋の中に足を踏み入れたその時、違和感に気付く。

 ハリが…居ない。脳内シミュレーションが崩れ去った俺は、警戒しつつポツポツと部屋の奥に向かって歩みを進めた。


(何故だ…?)


 トウカはここから銃弾が放たれ、高島当たったのを見ていたし、俺も道中に一発だけ確認した。そして、アスレチックを登っている間、ここを出入りしたプレイヤーは見当たらなかった。この部屋に居るのはほぼ間違いないはずだ。


(俺が見たのは一発…まさか、察知されていたのか!?)


 俺は振り向いて、とっさに防御スキルを唱えた。繊細で力強い弾丸が飛んできたのは、同時の出来事である。


「ぐっ…。なんて威力だ。『プロテクト』をかけても、HPが半分も減るなんて。」

「…驚いたのは、こっちの方。良く気が付いたね。せんぱい。」


 その声は、彼女の放つ弾のように繊細で儚い響きであった。そして、声の主は天井の梁からふわりと降りてきた。

 彼女が…ハリ。

 その装いは、まるでミリタリーとファンタジーが交差したようであった。体にぴったりとフィットした黒基調の戦闘スーツは、機能性を重視した近未来的なデザインという印象だ。それでいて、肩にはだぼっとしたキュートなアウターを着崩して羽織っていて、腰には薄く優雅なスカートが広がり、動きに合わせてひらりと舞っている。軍事的な無骨さと、どこか乙女らしい幻想的な雰囲気が、不思議な調和を保っていた。


「…もう、戦えるスキル、無くなっちゃった。…どうしようもないね。好きにして。」


 ハリは諦観したように目線を下げて呟いた。そして、その手に持っていたスナイパーライフルをガチャリと床に落とした。投降した、という事だろうか。


「…悪く思うなよ。」


 俺はライフルから視線を戻し、改めて彼女の顔を見て言った。…年下、か。ゆるふわのセミロングが可愛らしく似合っている、中学生くらいの幼い顔立ちであった。

 に、しては…デカいな。でも小さいな。

 ピッチリスーツで体のラインが強調されているので、その豊かな胸は嫌でも目に入った。ただ、身長は俺より頭二つ分くらい小さい。いわゆるロリ巨乳というやつだ。今から倒すというのに、死神の姿があまりにも特徴的だったので固まってしまった。


「あ。」

「え?」


 彼女がいきなり放った年相応の間抜けな声に、思わず俺もつられてしまう。


「…一つだけ、教えて。何で、とっさにガードできたの。」

「ああ。それは銃弾の数さ。」

「数…。」


 ハリは不思議そうな顔をして、「いち、に、さん…。」と指で数えながら考えている。本当は正解が分かるまで待ってあげたいところだが、試合中なのでさっさとネタばらしをしてあげよう。


「キミは、あのバカ二人に対して三発しか撃たなかった。そして、それらは全て同じスキルだったから、他にまともな遠距離射撃スキルを持っていなかった。ここまで合ってる?」

「…うん。」

「そして、あの脳筋は、一人倒すのに二発必要だ。ここまで話せば分かるかな?」

「…ハリは、片方に二発、もう片方に一発しか撃っていないとバレてしまった。それが示すのは、四発目を撃たず温存しているという事実。そしてせんぱいは、四発目は脳筋さんに撃たず、侵入者に対して準備していることを、部屋に入って察した。…なるほど。」


 ポムッ、と手袋を付けた手を叩いて、ハリは納得したようだった。頭の回転の良さに驚く。


「そういや、好きにしていいって言ってたな?」

「え…。いや、限度は、あるよ…。」


 限度以内なら何をしても…。という思いを振り切った。


「ご、ごめんごめん、俺も聞きたくてさ。なんでスキルを三発で止めることが出来たんだ?やっぱり、どこかで俺に気付いてたのかな?」

「なんで、って…。…勘、かな…。…この戦場、都合が良すぎる、から…。」


 都合が良すぎる…?どういうことだ。

 てっきり、俺は察知系のスキルで感づかれているからこそ、四発目を使わなかったと思っていた。それが、勘、だって…?


「…もう、いいでしょ。…殺して。抵抗は、しないよ。」


 思わぬところから飛び出した謎に頭を捻っていたところに、追い打ちのように雷に打たれた感覚がした。そうだ。俺はハリを殺しに…そして死体を眺めに来たんだ。


「お、おう…。」

「………?」


 逡巡する俺に対して、ハリはひょこひょこ近寄ってきて、そのジト目で顔を覗き込んできた。


「…どうしたの…?」

「あ、いや、その…。」


 やりづらい。

 死体を眺める事は栄養素。そしてハリは今、死体になる事を了承している。


 これ即ち、俺にとっては性交渉を持ちかけられているのと同義なのである。


 ましてやハリは年下。まるで犯罪のような背徳感…いや、罪悪感が襲い掛かってきて、なかなかキルに踏み切れない。


「じーっ。」


 やめて、見ないで。そんな目で俺を見ないで…。女の子特有のかすかな甘い香りが、俺を狂わせる。頭が沸騰しそうなくらい熱くなって、どうにかなりそうだ。


「せんぱい…。不思議な人、だね。詰将棋のように私を追い詰めたと思ったら、私を憐れんで、情けをかけてくれる。…恐ろしいやら、優しいやら。」

「え?あ、あはは…。」


 別に憐れんでいる訳じゃないのだが、俺にとって都合の良い解釈をしてくれた。最近も、似たような事があった気がするな。


「…見逃してくれるんなら、このまま降参しちゃおうかな。丁度、私一人になっちゃったみたいだし。…ありがとね、せんぱ…ぃ……んっ!んふぅ…あぁっ…ん……。」


 その全てを言い終わる前に、官能的な吐息と共にハリが崩れ落ち、倒れた。

 理解不能の状況に目線を彷徨わせていると、俺の入ってきた扉の前に立っているトウカと目が合った。俺は、恥ずかしい行為を家族に見られた時と同じ気持ちになった。


「はあ、はあ。ケンちゃん、大丈夫!?」


 息を切らせて、オカン…じゃなくてトウカが駆け寄ってきた。俺は、すぐに言葉を発することができなかった。


「心配になって来てみたら、ハリちゃんに追い詰められてるみたいだったから、とっさに攻撃したんだ。間に合って良かったー!」

「あ、ありがとう…。」


 トウカはフンスと胸を張った。頑張って胸を張っても、ハリの豊満さには及ばないのが悲しい。


「ほら、ハリちゃんにトドメを刺したら勝ちだよー!最後の一撃は譲ったげる!」


 そう言えば、ハリは最後の一人になっていたと言っていた。彼女が死んだら試合終了だ。くそ。もっと決断が早ければ、オカンが来る前に存分に死体眺めできたのに。自分の情けなさが悔しい。


「何さ。やらないの?じゃあ私が処刑するね。…えい。」

「んぐ!うぅ……。」

「ああ、なんて事を…。」


 トウカが慣れた手付きで首を捻って処理すると、ハリは呆気なく逝ってしまった。骨の折れる生々しい音が部屋に響く。


「ハリ…ハリ…!うおおぉんおんおん…!」

「な、なに泣いてんの。ケンちゃん。気持ち悪いなあ…。」


 こうして、ハリとの試合は意外な結末で幕を閉じた。

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