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第9話【イグニッションスキル】

「よっしゃあ!JKから回復を貰って元気百倍!ツナ太様の力を見せてやるぜ!『幻影殴打』!」


 ツナ太が目にも見えない動きから敵に近寄り、パンチを繰り出していく。そしてツナ太の残像が質量を持ち、本体に呼応するように四方八方から攻撃を放っていった。

 それには流石のベータテスターの彼らも対応が難しいようで、防御スキルを使ってもなおHPが減っていくのが見えた。


「くっ…『バリア』!『ディフェンド』!…防御が追いつかない…!」

「きゃあっ!いやんっ!…ちょ、何処触ってるのよー!」


 この状態でもぶりっ子を辞めないミツバに関心しつつ、俺は『ステルス』で距離を詰める。そして、ニシノの防御スキルを使い切った後を見計らって、双剣を抜く。


「『雷刃剣舞』!」


 俺は、雷を纏った剣で、敵に斬りかかった。防御手段を失った敵の絶望した顔が、双剣の向こう側に見えた。


「ぐああああっ!」「ぎゃあああああっ!」


 双剣による絶え間ない攻撃で、ニシノとミツバを切り刻んでいく。両手に感じるしっかりとした斬撃の重みは、バーチャルとは思えないほど、人を斬っているリアルさを感じられた。

 敵二人の体力はみるみるうちに減っていく。残り二、三割程度まで減らしたところで、後ろからトウカの呼びかけが聞こえた。


「ケン、ツナ太、下がって!私のとっておきをお見舞いしてやる。…『エターナル・ハリケーン』…!」


 そのスキルは、先ほどボイスチャットを通して恐ろしさを味わった。

 トウカの杖に風が集まるのを見て、ミツバは恐怖からか眼を見開き、ガクガクと膝が震え、ついには床にへたりこんでしまった。…死体蹴りをした報いだ。まったく同情は無い。


「やれ!トウカ!」

「いっけぇー!」


 烈風が瀕死の敵二人を囲み、飲み込んでいった。声にならない絶叫が、風の轟音の中から微かに聞こえてくる。

 これで、まずは二人…。そう思った瞬間であった。


「『ディスペル』!」


 その詠唱を聞いた瞬間、いきなり風が弱まり、敵への包囲が一瞬で解かれてしまったのだ。

 そしてその中心には、ここに居るはずのない人物がまるでヒーローの如く気取ったポーズで立っていた。


「ふっ…。ニシノ、ミツバ。待たせたな。」

「間一髪だったな!大丈夫か!?」

「シジョウさん!タイチ!」

「遅かったじゃない!…もう…!」


 リーダーの降臨に、敵チームは歓喜の色を隠さなかった。ミツバなど、眼に涙を浮かべてしまっている。

 恐らく、彼らは何らかのスキルでここに飛んできたのだろう…俺達がそうしたように。

 そして、それは我々にとって非常に悪い状況である。ツナ太とトウカも同じことを思っているのか、先ほどまでのイケイケムードが一瞬にして険しくなってしまった。


「さあ…これで四対三。もう一人は逃げてしまったのかな?…ふっ、まあいい。今まで入手したスキルを適切に分配して、一気に戦いを畳もうか。」

「おうよ、シジョウ!さあ、俺には物理と魔法、両方をバランス良く渡してくれよ!」

「くっ…させるかぁ!」


 眼の前でのんびりとメニューを開いてスキル分配など、たまったものではない。俺達は妨害のため、攻撃を仕掛けた。

 だが体勢を立て直した彼らには、その悉くが防御スキルによってかき消されてしまう。


「ふっ…。そんな攻撃、俺達の結束には届かないよ。…さぁ、準備は整った。今こそ、冷たく、蹂躙の時だ!」

「くっ…!」


 シジョウが片手を仰々しく前に出し、彼の仲間に対し命令を下した。それを皮切りに、彼らは一斉に俺達に向かって攻撃を繰り出してきた。

 タイチは、物理と魔法のコンビネーション。ニシノは、銃を使った遠距離攻撃。ミツバは、素早さを生かした物理攻撃。そしてシジョウは、後ろから全体にバフを行きわたらせている。隙のない、完璧なチームワークだ。ようやくベータテスターの本領発揮といったところか。


「『ツインショット』!『シャインバレット』!ははは!さっきまでの威勢はどうしたんだ!?」

「ニシノ!俺の動きに合わせろ!いくぞ…『火炎斬』!」

「ぐあああっ…!」


 水魚の如く滑らかなコンビネーションによる攻撃を、タンク役であるツナ太がダメージを受け、トウカが回復をする。俺も遠距離攻撃で反撃を試みるも、双剣との相性も悪く大した威力にならない。状況は悪化するばかりだ。


「くっ…!なんとかしてよ、ケンちゃん!」

「なんとかって言われてもなぁ…!…おっ!?」


 万事休すかと思われたその時、視界の端に表示されたマップに、味方が近づいてくる表示が映った。

 そう、彼女こそが最後の1ピース。勝負を決める一手になるのだ。


「みんな、お待たせー!スキル、一杯拾ってきたよっ!」

「サッチー!待っていたよぉぉ!」


 JK二人はぎゅっと抱き合って喜んだ。その間にも、敵による熾烈な攻撃は続いている…!前線で耐えているツナ太の限界は近い。


「サッチー、早速だがスキルを分配しよう。君の固有スキルの真価を発揮する時だ!」

「わ、分かった。とりあえず、適当に配るよ!みんな受け取って!」


 サッチーが慣れない操作で宙に表示されるウィンドウを操作している。まるで姉の操作しているゲームを見ているようでコントローラを奪いたくなってしまうが、そうはいかないのがもどかしい。


「キャハ…何を企んでるかは知らないけど…させるかぁっ!『ダークファング』!」


 相手も黙って見ているだけではない。身軽なミツバが、その素早さを生かしてサッチーに攻撃を仕掛けてくる。しかし、それも予想通り。俺は双剣を構え、サッチーを庇うように動いた。


「…『双刀防護』。サッチーに手は出させないよ。」

「中野君…!」


 眼を輝かせるサッチーに、本名はやめろと脳内で突っ込む。

 そんなやりとりをしている最中、刺すような視線を感じた。振り返ると、トウカが眉間に皺を寄せて俺達を睨んでいた。俺はその表情に見覚えがある気がしたが、思い出そうとした時にサッチーが歓喜の声を上げて、思考が中断された。


「よし!これでどう!?みんな、スキルをチェックしてみて!」


 脳内に大量のスキルの情報がなだれ込んでくる。これが、サッチーが集めてくれたスキルか…!あまりの情報量に頭が今まで経験した事の無い、まるで熱の時の変な夢を一気見したような感覚になる。

 だが、それはすぐに治り、他のメンバーの状況を確認しに視線を移したその時だった。


「ぐ、ぐあああああっ!!!」

「ツナ太さん!」


 攻撃を一手に受けていたツナ太が、ついに倒れた。その瞬間はスローモーションのように映り、まるで格闘ゲームの決着シーンのようであった。


「か、勝てよ…ケ…。」

「『フロスト・ボルト』。」


 最期のセリフを言おうとするツナ太に対し、シジョウは容赦なく攻撃を加える。ツナ太の巨体がびくんと跳ねて、小さく呻き声をあげた。俺達は一歩も動けず、黙ってそれを見ているしかなかった。


「ツ、ツナ太さああぁん!」


―ツナ太 再起不能…


 無常に表示されたシステムメッセージが、ツナ太が脱落した事を嫌でも実感させてきた。経験者相手に、慣れないスキルを回して良く戦ってきたが…。限界だったか。もしかすると、スキル分配の時のあの感覚が、防御の判断を鈍らせたのかもしれない。

 物言わぬツナ太の死体を挟んで、敵チームの四人がにやにやとこちらを見ている。まるで次の獲物は誰だと言わんばかりに。


「ケンちゃん。反撃するよ。」


 その冷酷な声の主が誰かを理解するのに、数瞬かかった。…俺をちゃん付けするのはトウカしか居ない。

 ツナ太が倒されたからか、彼女の眼には明らかに闘志が宿っていた。


「反撃ィ?おいおい、四対三、しかもタンクが居なくなってどうするってんだよ?」

「キャハハハハ!!…おいクソブス。ナマ言ってんじゃねえぞ、おい。お前らは今からそこのデブみたいに無様に転がる運命なんだよ。あァ!?」


 勝利を確信した敵チームが、ここぞとばかりに煽ってくる。ミツバなどは口の悪さがクライマックス状態だ。ヒートアップした彼らに対し、俺は静かに告げる。


「まだ気づいていないのか…無様に転がるのは、お前たちだよ。」

「ハッ!強がりもいい加減にしろよ。転がるってのはスノーボール(*)ってことかぁ?…ってあれ?消えた?」


 敵の前線でタイチが軽口を叩いた時には、すでに俺は『ステルス』で姿を消していた。


「タイチ!気を付けて!そいつ、透明になれるの!」


 ミツバが忠告をしたが、もう遅い。俺は地面を蹴り、タイチの眼前で構えていた。


「行くぞ。このスキルを受け止める覚悟は良いか!?…『二天双竜斬』!」


 俺は双剣に力を籠めて、タイチを上空に斬り上げた。そして空中に浮いたタイチに対し、まるで天に昇る龍の如く力強い剣撃で追撃を加えた。

 致命的な攻撃を受けたタイチは悲鳴を上げる隙も無く、ボロ雑巾のように地面に伏した。


「そ、そんな、タイチ…。」


 ニシノが絶句する。先ほどまでの余裕が嘘のようだ。


「どうして…。どうしてそんな高レアリティスキルを!?…まさか、スキル分配で!?」

「そう。サッチーの固有スキルは『幸運』。手に入れたスキルがランダムで高レアリティスキルに変化するというものさ。だから、サッチーには最初からスキルをひたすらに集めさせた…。全ては、この時のために。」

「そ、そんな固有スキル…戦術…ありかよ…!」

「始まったばかりのゲームに、”あり”も”なし”も無いだろ?全てがベータテストの常識で構成されていると思うなよ。」

「く、くそ…。…まだだ。まだ負けたわけじゃない。ニシノ、ミツバ!俺達もとっておきを出すぞ!『クールコマンド』!」


 シジョウが命じると、ニシノやミツバは気持ちをなんとか立て直して、二人の武器を合わせてスキルを詠唱し始めた。それらは周囲の空間を歪ませ、今から強力な攻撃を放つ前兆のようであった。


「どうだ!強大な魔力を感じるだろう!?これが私の固有スキル『クールコマンド』!一時的に味方のスキルを強化するのさ!そして、こちらも最高レアリティの合体スキルで行かせてもらうよ!さあ…放てぇっ!」

「「『クロス・コンビネーション・パンバースト』!」」


 敵チーム三人が協力して放つ、現在出せる最高出力のスキルが、色とりどりの魔法の弾の群れとなって四方八方から襲い掛かかってくる。速度は遅いものの、その一つ一つから、必殺級の威力を感じた。


「…まずいな。」


 普通に、まずいな。

 強いスキルを入手したとはいえ、俺に配られたのは攻撃系のスキルばかりだ。防御の要のツナ太は倒れてしまっている。攻めは強いかもしれないが、守りは脆い状態だ。まさか、敵にこんな奥の手があるとは。


「ここまでか…?」

「ケンちゃん!これ、もしかしたら…!」


 諦観している俺に対し、トウカが鋭く呼びかけてきた。

 …そして、口早に話す彼女は、思わぬ献策をしてきた。


「…わかった。これに賭けるしかない!」

「中野君!トウカ!早くーっ!」


 サッチーの叫びに応じ、俺達は一か八か、そのスキルを詠唱する。


「「『ステルス・カムフラージュ』!」」


 殺意を持った銃弾が、俺達に狙いを定めて降りかかる直前、スキルは発動した。

 全ての弾が俺達を避けて、空中で対象を失ったり、地面に着弾したりして、消え去ったのである。鮮やかなヒットエフェクトが弾け散り、硝煙が上がる。

 やがて煙が消え、俺達が無事だったことが分かった相手の顔色がだんだんと萎んでいった。


「一個も当たらにゃい…。…にゃんでぇ…。」

「俺の固有スキル『ステルス』を、トウカの固有スキル『献身』で強化し、一時的に敵の攻撃対象にならなくなるスキルを作った。そして、レジェンドパッシブスキル『広範囲化』によってその効果範囲を広げ、全員が恩恵を受けられるようにした。…だよな?」

「うん!ケンちゃんのスキルのおかげだよー!」


 そう笑顔で答えるトウカの底知れなさに、俺は軽く恐怖を感じた。固有スキルに…『ステルス』に、こんな使い方があるなんて。なぜ、トウカはこんな事を知っていたのだろうか。

 だがその衝撃は敵チームの方が大きいだろう。渾身の一撃が防御された事実。それは遅行毒のように心を蝕み、絶望を与えた。

 そして、さらに追い打ちをかけるような出来事が起こる。


「見て…杖が光ってる。ケンちゃんの双剣も!」

「な、なんだなんだ?次から次へと。」


 思わぬ武器の輝きに困惑していたが、表示されたメッセージを見ることでその正体が分かった。


―イグニッションスキルを発現し、固有スキルが変化しました。

 ―条件…エピックスキルを10個以上獲得(達成)

 ―条件…敵プレイヤーを1人以上キルする(達成)


―イグニッションスキル:幻影絶流

―一定時間敵と味方から見えなくなり、究極の双剣技で物理攻撃力の200%*20のダメージを与える

―物理タイプ

―クールダウン 200秒


「特殊な条件を満たすことで、固有スキルが進化するってことか!」

「すごいすごい!ねえ、使って良いでしょ!?私のやつ、バフ系なんだ!」


 拒む理由はない。ぽかんと呆けている敵チームの顔を横目に、トウカが詠唱を始めた。


「ケン、このスキルをバッチリ受け取って!『ムゲン・オーバードライブ』!」


 トウカの杖から、沢山の力強い光の筋が放たれる。その一つ一つが俺の双剣に集まっていく。やがて、バフを受けた双剣は姿を変え、柄には金の装飾、刃は西洋の刀のような厚みが出て、研ぎ澄まされたオーラを纏った。


「…覚悟は良いな。」

「「「ひいいいっ!!」」」


 俺は大地を蹴り、剣を振りかぶる。剣が身体と一体化しているように軽い。脚も自分じゃないみたいに力強い。これがバフの力か。


「…音もなく、消え失せろ。『幻影閃舞』…。」


 一瞬、時が止まった。そして、俺は世界から姿を消した。

 敵の混乱した声が、風に乗って遅れて届く。だが、もう遅い。

 俺は既に最初の標的…ニシノの懐に潜り込んでいた。双剣の刃が、黄金の軌跡を引いて弧を描く。

 音すら立てず、首筋を一閃。ニシノが悲鳴をあげるより先に、俺は次の標的の排除へと移っていた。


「ニ、ニシノ…!?ひっ…どこ、あいつはどこ!?」


 ミツバの恐怖が張り付いた顔の少し下…首元に狙いを定め、腕を振る。

 バフを受けた双剣は、空気を裂くたびに鋭い金色の光を放ち、触れたものを確実に絶つ。

 これで、あと一人。


「ば、ばけもの…。」


 双剣を握り直すと、光が集まって一層力強く輝く。

 俺は一歩踏み込み、双剣を横薙ぎに払った。光の一閃が、空間ごとシジョウを切り裂く。

 必殺の双撃は、シジョウのHPをあっけなく削り取った。

 どさり。

 力を失った三人が、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。


―YOU WIN !


「やった…やったー!私達の勝利だー!」

「私、最後なにもしてない…でも勝てて良かったー。」


 JK二人の歓喜と、勝利のファンファーレがバーチャル空間を満たす。

 勝った…。初めての対戦で、しかもベータテスター相手に勝ったんだ。


「ぅ…。やっと起き上がれたぜ。いやー、散々な目に遭った。…でも、チームが勝てて嬉しいよ。次は最後まで生き残りたいな。ハハハ。」


 今まで床に転がっていたツナ太がゆっくりと身体を起こして言った。試合を最初から最後まで支えた彼は、影のMVPだ。

 ちょっと損な役回りをさせてしまって申し訳なかったが、JK二人に囲まれている彼の頬の緩みっぷりを見ると、全く心配はなさそうだった。


「それにしても、トウカちゃんが倒れた時はショックだったな!なんていうか、すげーリアルな現場だった。」

「やめてくださいよー。結構ひどい目に遭ったんだから。勝ってなかったらトラウマものだったよ。あいつったら本当に酷い…。ってあれ。居なくなってる。」


 敗者の無様な死体は、いつの間にかその場から消え去っていた。彼らは、恐らくもうロビーに戻っているのだろう。


「ロビーといえば、折角手に入れたスキルも次の試合には無くなっているんだよね。」

「もう一つ言うと、レベルもリセットだ。毎回、レベル1、固有スキルだけ持って、スキル集めから始まる。」

「えー!どうしてー?」

「そうじゃないと、ひたすらプレイしている人に勝てなくなっちゃうだろ?対戦ゲームとして、それはいけないよね。」

「なるほど!最初からゲームを始める時が一番ワクワクするから、その楽しみを味わせてくれるゲームなんだね~。」


 トウカは微妙にズレた感想を言った。


「…それにしてもあいつら、ゲーマーの嫌な所詰め込んだような奴らだったな。」

「ははは…。ゲーマーを代表して、俺から謝るよ。…でも、トウカちゃん達もかなりのゲーマーな気がしたけど、何かやってるの?」

「うん。私とトウカ、後何人かでネトゲやってるんだー。その経験が生きたかもね。」

「へぇ、そうなんだ…。」


 初耳の事実に素直に驚いていると、トウカが何故か慌てた様子で話を遮った。


「そんな事よりさ!このゲームの勝利を分かち合おうよ~!」

「そうだね。話題を逸らしちゃってごめん!いやぁ、死んだあと観戦モードで見てたけど、二人のスキルは凄かったな…!」


 長い試合に勝った後の感想戦は、話題が尽きない。

 俺達の撃ったスキルは、合成スキルというものらしい。絶体絶命の中、トウカが活路を開くためにメニュー画面をいじったら偶然発見したようだ。

 また、サッチーは、一人でスキルを集めている最中、沢山のモンスターと死闘を繰り広げたらしい。中でもドラゴン型の敵には苦労したらしく、何度も死にかけながら回復スキルを使って倒しきったとのこと。

 そして、喜びに湧く彼らに向けて俺の口から出たのは、非常にもっともらしい感想だった。


「みんなのお陰で勝てた。…俺達は、最高のチームだよ。」


 そう言いつつも、俺は皆とは少しズレた方向に気持ちを移し、思いにふける。


―体力が無くなったトウカを復活させる背徳感。

―ツナ太の死に様。

―当たり判定のあるツナ太の死体。

―戦闘が終わるまでその場に残るツナ太の死体。


 ああ。このゲームには、まだやり込まなきゃいけない要素があるようだ。

 女の子の復活待機状態だけでなく、再起不能状態もしっかりと心のシャッターで撮影しないといけない。そうじゃなきゃ、真の完璧でない。栄養素が足りない。心の充足は得られない。

 だからこそ、俺は皆に言う。


「…また、やろうな。」

「うん!ケンちゃんと久しぶりに遊べて、楽しかったよー!」


 トウカの満ち足りた表情が、妙に俺の心に残り続けた。


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