元勇者の僕は魔物たちの血で染まっている
元勇者の少年は、2つ上のシスターに。
「僕は、凍えている。
だけど、殺された魔物は、何も感じることができない。
神様、悪人の僕を赦して下さい」
聖堂、僕は跪き、神様に話す。
静かな聖堂、今は、僕しかいない。
外では猛吹雪。そして、聖堂には、暖房器具は、ない。
これも、罰なんだ。
僕は、勇者だった頃、たくさんの魔物を殺したから。
異世界に召喚され、魔王を倒し、そこにあったものは。
たくさんの魔物を殺したことに対する、後悔。後で悔いるとは、愚かな話。あのときまでは、ただ魔物を殺したくて、殺したくて、平和にしたくて。
「神様、僕は、愚か者です」
「こんにちは」
「…こんにちは」
シスターさんが入ってくる。
長い髪で、16歳の僕よりも、2つくらい上、高校でいうと高3くらい。背は、僕と同じくらい。
「ありがとうございます。今日も、お祈りですね。神様の加護がありますように」
「いいえ。
僕はいいですけど、もう少し暖かくしたらどうですか? 雪も吹雪いているのに。上に何か着たり」
シスターさんは、首を横に振る。
「神様に仕えるのです。服を着させて頂いている、これだけで十分です。欲を出してはいけません、神様に怒られます」
「今日みたいな日でも、ですか?」
「はい。それが決まりですから」
なんて厳しい。
「あなたこそ、暖かくしてはどうですか?」
「僕は」
「元勇者、この世界を平和にして頂いた、英雄なのに」
「英雄?」
「はい。英雄です」
「…ははっ」
つい、笑ってしまう。
「僕が、英雄? 殺りく者の間違いではありませんか? 僕ほど魔物を殺した人はいない。
凍えていいんだ、いや、凍えないといけない。それこそ、凍死してしまうように。僕なんか死ねばいいんだ」
シスターさんに、悲しそうな顔で見られる。
けど、これは本心、そして、事実。
「勇者にならなかったらよかった。そしたら、何も殺さずに済んだ」
「暖かいものは、要りませんか?」
「だから、要らないって」
「けど、私は、暖かくなってほしい。
今は、これしか、ありませんが」
そう言って、僕は抱き締められる。
細い、でもやわらかく、そして少し暖かい。そんな、2つ上の、少女に。
「魔物たちから見たら、あなたは確かに悪人でしょう。仲間たちを殺し、王も殺したのですから。
ですが、私たち人類にとっては英雄、この世界を平和にしてくれた立派な英雄なのです。
だから、自分をいじめないで。自分を愛して下さい。暖かいものを食べ、暖かい格好をして下さい」
抱き締めたまま、少女は言う。
なんて、優しい言葉。
ああ。この心は、いけない。
抱き締められたくらいで、優しい言葉を掛けられたくらいで、こんな、感情を抱いては。
恋心なんて。
悪人で、殺りく者の僕には、あってはいけないんだ。
ありがとうございました。




