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元勇者の僕は魔物たちの血で染まっている

作者: ナベノヂ
掲載日:2026/01/02

元勇者の少年は、2つ上のシスターに。

「僕は、凍えている。

だけど、殺された魔物は、何も感じることができない。

神様、悪人の僕を赦して下さい」


聖堂、僕は跪き、神様に話す。

静かな聖堂、今は、僕しかいない。

外では猛吹雪。そして、聖堂には、暖房器具は、ない。


これも、罰なんだ。

僕は、勇者だった頃、たくさんの魔物を殺したから。


異世界に召喚され、魔王を倒し、そこにあったものは。

たくさんの魔物を殺したことに対する、後悔。後で悔いるとは、愚かな話。あのときまでは、ただ魔物を殺したくて、殺したくて、平和にしたくて。


「神様、僕は、愚か者です」




「こんにちは」

「…こんにちは」

シスターさんが入ってくる。

長い髪で、16歳の僕よりも、2つくらい上、高校でいうと高3くらい。背は、僕と同じくらい。


「ありがとうございます。今日も、お祈りですね。神様の加護がありますように」

「いいえ。

僕はいいですけど、もう少し暖かくしたらどうですか? 雪も吹雪いているのに。上に何か着たり」

シスターさんは、首を横に振る。

「神様に仕えるのです。服を着させて頂いている、これだけで十分です。欲を出してはいけません、神様に怒られます」

「今日みたいな日でも、ですか?」

「はい。それが決まりですから」

なんて厳しい。


「あなたこそ、暖かくしてはどうですか?」

「僕は」

「元勇者、この世界を平和にして頂いた、英雄なのに」

「英雄?」

「はい。英雄です」

「…ははっ」

つい、笑ってしまう。


「僕が、英雄? 殺りく者の間違いではありませんか? 僕ほど魔物を殺した人はいない。

凍えていいんだ、いや、凍えないといけない。それこそ、凍死してしまうように。僕なんか死ねばいいんだ」


シスターさんに、悲しそうな顔で見られる。

けど、これは本心、そして、事実。

「勇者にならなかったらよかった。そしたら、何も殺さずに済んだ」


「暖かいものは、要りませんか?」

「だから、要らないって」

「けど、私は、暖かくなってほしい。

今は、これしか、ありませんが」

そう言って、僕は抱き締められる。

細い、でもやわらかく、そして少し暖かい。そんな、2つ上の、少女に。




「魔物たちから見たら、あなたは確かに悪人でしょう。仲間たちを殺し、王も殺したのですから。

ですが、私たち人類にとっては英雄、この世界を平和にしてくれた立派な英雄なのです。

だから、自分をいじめないで。自分を愛して下さい。暖かいものを食べ、暖かい格好をして下さい」


抱き締めたまま、少女は言う。

なんて、優しい言葉。


ああ。この心は、いけない。

抱き締められたくらいで、優しい言葉を掛けられたくらいで、こんな、感情を抱いては。


恋心なんて。

悪人で、殺りく者の僕には、あってはいけないんだ。

ありがとうございました。



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