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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

願いが叶いました

作者: フェル寒む
掲載日:2025/12/08

《どうか…どうか君の笑顔を、見せて》




返り血で染まった体を起こし手の平を見つめ考える。


澪様、貴女に『愛してる』と伝えればどんな顔をされたのでしょうか?

澪様、俺は貴女に『恋』と言える程の綺麗な想いを抱いていなかった。重苦しくドス黒い想いを抱いている、そんな俺を貴女はその紅色に染まったナデシコのような純粋で清らかな顔で『好き』と伝えてくれた。

清らかな澪様を俺は汚してしまう。このような想いを決して見せてはならぬと自身を抑え続けてきた、そんな俺を貴女は馬鹿にせず見守ってくれていた。

なのに、俺は貴女を護れなかった。あの日の夜に『愛してる』と伝えていればなにかが変わったかもしれない。

そのような事をいつまで考えても【過去は変えられない】

__【未来はいつでも変えられる】__というのに。







悪魔とゆうのは、いつの世か突然魔界から現れ怪物の形、ひいては人の形となり人類を襲いしバケモノ。そんな悪魔の蹂躙に屈することをせず人類は対抗し続けていたが、人類の身体能力や技術には限界があった。

このままでは人類が滅亡するしかないそんな中、人類には二つの選択肢があった…『このまま滅亡するか』それとも『戦い続けるか』…そんな状況で一人の青年によって人類は悪魔が壊すことのできない【ドーム型の結界】を創り出すことに成功した。

青年によって人類は『聖域』を手に入れ休息を手にしたかと思われたが、悪魔は順応し【結界】の弱点を突いてくる、そんな悪魔に人類は尚も技術の進歩を余儀なくされ、弱点を無くそうとするがやはり人類には過ぎた技術だったことで【結界】の構造を理解することは不可能に近かった。人類は青年に頼ろうとしたがそこに青年の姿はなかった、そのことに絶望しながらも人類は立ち上がり続け進歩していく。

ある日、昔の伝承を解読していた一人の博士によって人類の未来に光が差す、悪魔を倒すことができる【聖剣】があることがわかった。人類は悪魔に対抗し続けながら【聖剣】の構造を知る為に多大なる技術、知識、経験を活かし長年に渡る研究によって【聖剣】は創られた。

そのことで人類は悪魔に対等に対抗できると思ったが、悪魔の力や能力は強かった。

そんな人類の力強い心根を視ていた存在がいた、神々は人類の生きようと藻掻き立ち上がる姿を視て施しを与えることにした。その施しとは【神々の愛し子】を人類に差し向け、【神々の愛し子】の特別な能力__【神通能力】__を使い悪魔に対抗できるようにした。【神々の愛し子】は後に【神子】と呼ばれ、人類の中では【神子】に敬意を表し『姫君』、『彦君』と呼ばれるようになった。







俺が澪様と出逢ったのは7歳の時だった。

第17都市要塞が悪魔によって襲撃され、蹂躙され続けている時に俺は悪魔から追いかけられ逃げ惑っていた。ついには追い詰められ殺されかけたとき、その人は現れた。


「ちょっとなに人を殺そうとしてんですか!」


そう言ったと同時にバケツ一杯程の量の水が悪魔の頭上に表れ、サバっと落ちた。

水を悪魔と共に浴びた俺はなんともなかったのに悪魔の体からは煙が立ち込め、悪魔が苦しみだした。ついには悪魔が溶けきってしまい、呆然とした顔をしているとその人が俺の近くに来てしゃがみ込んで目を合わせて心配そうな顔をする。


「大丈夫ですか?」

「…え?」

「君、怪我してます。ほら」


指を差された所を見てみると膝を擦りむいており血がダラダラと溢れ出していた。


「あ、これはこけたときに」

「そうですか、痛かったですね…君、頑張って逃げて偉いです!」


そう言いながら頭を撫でられると俺は今まで耐えてきた大粒の涙を出し声を押し殺しながら泣く。

その間もその人は俺の頭を撫で続けて


「偉いです、君は偉いです。…いっぱい泣いてください、撫でられると安心しますから」

「大丈夫、大丈夫」


そう言い続けてくれた。

少しして落ち着いてくると俺はその人に疑問を投げかける。


「あなたはだれ?」


エッヘンとした効果音が付きそうなポーズでその人は名乗る。


「私は澪というの。」

「澪?」

「うん、澪よ!私は神々の愛し子なの!」

「…?」

「えっと、わかりやすく言えば私…神子!」

「え!?そうなの!?」

「うん!」

「すごか!みこにあったと、はじめてばい!すごか!」


興奮して澪様に抱き着くと澪様は照れて顔を紅く染める。


「そうか、えへへっ」


俺はその時の澪様の笑顔に【恋】に落ちた。


その後、澪様の騎士である『デス』が駆けつけたことで俺達は引き離されてしまい澪様は他の奴を救う為にと俺を救護係に任せた後、手を振って行ってしまわれた。


 澪様…姫君に恋した俺は姫君の騎士となるべく鍛錬を積むことにし、まずは筋力を付ける為に走り込み、腕立て伏せ、木剣を持ち剣筋を磨く。

そんな日々を3年程続けていると孤児院に俺を訪ねて来た人がいると院長に言われ、応接間に迎い扉を開けるとそこには姫君の騎士である『デス』が居た。


「なんで、あなたがこげなところにいるんで?」


『デス』は無表情のままこちらを見ると質問を投げかけた。


「あなたは第ニの姫君の騎士になりたいですか?」


その言葉を聞いた瞬間、俺は息を呑む。そう、第ニの姫君とは俺を助け恋心まで掻っ攫っていった澪様のことだ。

続けざまに『デス』はこう告げた。


「あなたが第ニの姫君の騎士となりたいのならば今すぐ誓いを立てなさい」


ちかいとはなんだ…?


そんなことを考えているのがお見通しだったのか、『デス』はため息を漏らすと


「ここで姫様への忠誠を誓いなさい」


ちゅうせい…?ちゅうせい、忠誠か!


「もちろんちかいます!」

「何を?」

「ひめぎみへの忠誠をここでちかいます!」


「…よろしい」そう言って『デス』は立ち上がると付いてくるように言って颯爽と歩いて行く、それに慌てて付いて行くと車が門の前に置いてありそれに乗って何処かへと向かって行く。


 山奥にある孤児院を出て街中に入りとある店の前に着くと『デス』は俺を連れて降りた。店の中に入ると店員らしきエプロンを着たロボットに囲まれ、俺は担ぎ上げられ風呂へと強制的に連れて行かれ、もみくちゃにされながら洗われ風呂から出ると今度は脱衣場でドライヤーを持った女性に捕まり髪を乾かされ髪を切られ整えられる。疲労困憊で脱衣場を出ると優雅に紅茶を飲みながらこちらを見た『デス』は驚いた表情を少し見せる。


「へ〜、これほど整っているとは」


女性が脱衣場からハサミ片手に出てくるとそれに賛同するように言う。


「そうなのよ!こ〜んな逸材がいたなんて!」


彼らが何を言ってるのか当時の俺はわかりもしなかったが今の俺なら嫌と言う程わかる、顔が整っているのだ…それも規格外に。


「あの、こげなことしてなんになるんで?」

「神殿騎士になるにはまずは清潔感が必要不可欠だからです」

「なるほど」

「まぁ最重要なのは強さですが、あなたは大丈夫なので関係ないです」

「…はぁ」


そんなやりとりをした後、俺は新しい服を着させられ車に移動する。


車が次の目的地に着くとそこは日本最大の神殿であった。

『デス』は俺を神殿騎士の詰め所に連れて行き神殿騎士団長に引き合わせる。

何言かを話した後、俺は神殿騎士の見習いとなった。






月日は経ち俺は15歳となり、正式に神殿騎士となれた。神殿内を巡回しながら偶に見かける澪様、姫君を目にしながら日々、鍛錬を欠かすことがないように打ち込みながら生活を送っていたある日、神殿騎士団長に呼び出されこう言われた。


「お前には今日から第ニの姫君の騎士となってもらう、無論異論はないな?」

「はい!」


「これからだか…」と説明を聞きながらも俺は興奮しっぱなしだった。


遂に、姫君の騎士となれた。本当になれた。うれしい。


その後、興奮冷めぬまま姫君へと挨拶することになった。

応接間にノックをして名を名乗り許可を得り入るとそこにはあの時よりご成長された姫君が居らせられた。

姫君はこちらを長い間見つめると花開くような笑顔で


「君はあの時の少年じゃないの?」


まさか、俺のことを覚えていらっしゃるのか?


「そうよね?君は8年前に第17都市要塞で悪魔に殺されかけた少年でしょ?」


覚えていらっしゃった!


「はい!」


姫君は嬉しそうに微笑むと


「やっぱり!君の事とてもよく覚えてるわ!勇敢な少年!」

「勇敢な少年…?」


俺が不思議がると姫君は笑顔で言う。


「君は生きようと必死に逃げていた、そんな人を『勇敢』と言わずしてどうするの?」


本当に不思議そうな表情でこちらを見つめるとフワリと微笑む。


「君が元気そうで良かったです、ずっと気になっていたから」

「…姫君」


咳払いが聞こえ二人してそちらを見ると神殿騎士団長が気まずげに俺達を見ており、一方でデスさんの方はニコニコと微笑ましげにこちらを見ていた。

俺はすぐに姿勢を正し、姫君に対して最敬礼をする。


「第ニの姫君に敬意を表します!」

「ありがとう」


「もういいよ」と言う声が聞こえたので頭を上げる。姫君が真剣な眼差しで俺を見る。


「君は本当に私の騎士になりたい?」

「はい!」

「いい返事ね!」


その言葉で俺は姫君の騎士になることが正式に決まった。

そこからの日々はまさしく天国のようだった。姫君は一人で大抵なんでも出来てしまうが、御髪を結ぶことはできないようでいつもデスさんにやってもらっていた。その最中、姫君は俺に話を振ってくれたりしてすぐに俺はお二人の空気感に慣れてしまい、姫君と一緒にデスさんにイタズラを仕掛け窘められることもしばしばあり、とても笑顔で充実した日々を過ごしていた。

だが、そんな日々も長くは続かなかった。


ある夜会の会場にて、姫君の騎士として付いて周っていると姫君が俺の手を取り会場を抜け出して中庭まで連れてこられると姫君は顔を紅く染めながら目を合わせて言った。


「好きよ」

「え…?」

「好き!君のことが好きなんだ!」


顔を紅いナデシコの花のように染めながら告白してきた。


本当か?ほんとうに姫君、澪様は俺を好きなのか…?これは夢か…?夢なのか?

夢か現実か、はたまた想いすぎて妄想を視ているのか。


「大丈夫?」

「あ、はい!」


姫君は哀しそうな、困っている顔をしていた。


「迷惑なのはわかっていたけどどうしても最後に伝えていたくて」

「迷惑なんて!そんなこと!」

「ふっいいの、私はただ伝えたかっただけだから」


そう言いながら寂しそうな笑顔を見せる。


「愛してるわ…【暁】」


その言葉に俺は嬉しすぎて返事が一拍遅れた。


「あ………俺、姫君のこと愛…」


バンッ!


大きな音と共に姫君の体が後ろに倒れていく。反射的に体が動き姫君が床に倒れる前に抱き留めたが姫君の胸元を見ると赤く染まり始めた服が見える、俺はパニックになり姫君を揺さぶる。


「姫君!姫君!」


必死に止血しようと傷口を圧迫するがとめどなく血が姫君の体から流れ周りを、姫君を俺から奪うがごとく汚していく。

俺が泣きそうになりながら止血していると姫君は力を振り絞って俺の頭を撫でる。


「大丈夫、大丈夫」


泣き出してしまいながらも止血を続けるが一向に姫君の血は止まらない。


ポツポツ……ザァーーーー


大粒の雨が降り出し血が広範囲に流れていく。姫君の中にあった大切な血、姫君の生命の源が流れ落ちていく。

姫君は頭を撫で続けながら俺に微笑む。


「暁…」

「どうか…どうか君の笑顔を、見せて」


その言葉を聞いた俺は涙を拭い、姫君を安心させる為に一生懸命に無理矢理ぎこちない笑顔を見せると姫君はホッとした表情をしたと思ったのもつかの間、俺の頭から手が重力に沿って滑り落ちる。


「あ、あ、あ」


姫君の瞳から光が失われるのを間近で見た俺は絶望しながらもまだ、その事実を認めたくなく姫君の肩を揺さぶる。


「ひめぎみ、ひめぎみ、おきて…みお、みお」


だが、姫君の瞳に光が戻ることはなく俺は絶望に突き落とされた。


「いやだ!みお!みお!ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁぁぁぁぁぁ!」


俺は地面に伏せて姫君を腕に抱いたまま憲兵が駆けつけるまでその場で泣き続けた。







その後のことはよく覚えていない。

姫君を殺したとされる者は未だに見つかっておらず、何故姫君が殺されたのかは不明のままだということをデスさんに言われたような気がする。


俺は姫君の墓の前で座り込んだまま俺はぼんやりとしていると自身の剣が目に入り、とあることを思い出す。


《聖剣を貫き者、その者の願い叶う》


そうか、聖剣を貫けば、そうすれば姫君に澪様に会える。




まっていてください、みお

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