サマーパーティーで王子様にプロポーズされました
そして、パーティー当日、私はとても豪華な衣装に身を包んでいた。
青いドレスに銀の飾りがこれでもかっていうくらいついているんだけど。
これってどう見ても会長の色なんだけど……
それも私では絶対に買えないくらい豪華な衣装なのだ。
こんなのもらって良かったんだろうか?
隣のライラに聞いたら、めっちゃいやそうな顔をしながら
「良いんじゃない。要らないなら私がもらうけど」
「あげるわけないじゃん」
慌てて私は断った。
そのライラは茶色のドレスに青い飾りが一杯ついた衣装なんだけど、これってどこかで見たことのある色だと思ったのだ。
「ライラ嬢、待たせたかな」
ライラの前に現れたアクセリ様に私は茫然とした。
「えっ、ええええ!」
私は驚いたのだ。そう、ライラの衣装はアクセリ様の色だったのだ。
「強引に頼まれたのよ」
後でライラは言っていたけれど、その顔は嫌そうな顔ではなかった。
そして、急に回りがざわめき出した。
「ねえ、あれ殿下だわ」
「今日は黒いお衣装ね」
「黒の殿下も凛々しくて素敵」
女の子の黄色い声を背にして、イケメンがまっすぐに私に向かって歩いてきたんだけど。
黒って私の色だ!
ええええ! 嘘!
私は真っ赤になったのだ。
「黒ってあの子の色じゃない」
「ああ、あの不敬女の」
「しっ、あの子聖女様だって話よ」
「そう、病気だったマイラ様を直したって言う」
「本当なの!」
周りの声がうるさいんだけど。
そんな、皆の前で殿下は私の前まで来ると一礼してくれたのだ。
「ニーナ嬢、エスコートさせてもらっていいですか?」
「喜んで」
私はその出された手を掴んだのだ。
「きゃっ」「ええええ!」
「あの子また殿下の相手している」
「平民のくせに」
「しっ、あの娘、聖女様なのよ」
「ああ、でも許せない」
もう周りのうるさいことったら無かった。
私達は周りの羨望と嫉妬の眼差しの中を歩き出したのだ。
「きれいだよ。ニーナ。そのドレスもとても似合っている」
会長がしれっと言ってくれるんだけど、私は真っ赤になった。
「ドレスが高価すぎるんです。こんなドレスもらって良かったんですか?」
「良いんだよ。これだけ俺の色に染めたら他の男達がよってこないだろう」
何か会長が訳の判らないことを言ってくれるんだけど。地味な私なんか他の男がよってくるわけはないと思う。
「私よりも会長の方が、何倍も格好いいです。黒も素敵です」
「そうだろう。黒はニーナの色だからな。これで周りの女どもも寄ってこないだろう」
何か会長が言っているけれど、私では虫よけにもならないと思うんだけど。
会場に入ると、女性たちは私達を見ると羨望と嫉妬に狂った目で私を見てくるんだけど……
学園長のつまらない話の後で、会長の短い挨拶の間、私はじっと凛々しい会長に見惚れていた。
そして、パーティーは始まった。
私は会長に手を引かれて中央に連れて行かれたのだ。
音楽が始まると、踊りだした。
未だに私はダンスが苦手だったけれど、そんな私を会長はうまくリードしてくれた。
「でも、良かったんですか。私を二回もエスコートすることにして。周りのお貴族様方に怒られません?」
私が心配して聞いてみた。
「良いんだよ。俺がそうしたいんだ。これからもパーティーのエスコートは全て俺がするから」
会長がしれっととんでもない事を言ってくれるんだけど。
「えっ? それってどういう意味ですか?」
私が聞くと、
「そのままの意味だろう」
「でも、そんな事許されないんじゃないんですか。会長は王子殿下ですよ」
「良いんだよ。既に両親の許可は得ているからな」
えっ、今、会長は何かとんでもないこと言わなかった?
その時、音楽が止んだのだ。
そして、そのタイミングで、会長が私の前で跪いたんだけど。
ええええ! なんで?
皆一斉にこちらを見ているし……
「ニーナ・イナリ。絶対に幸せにすると誓う。だからこれから一生涯、私の側に居てほしい」
そう言って会長が手を出してきたんだけど。
ええええ! これってひょっとしてプロポーズなの?
それも公衆の面前で……
私は唖然とした。
「えっ、でも私は平民ですよ」
私は呆然として言った。
「何言っているんだ。ニーナは平民でも聖女じゃないか。癒やし魔法でマイラを治してくれた」
「いや、でも、マイラ様は」
「マイラは俺の可愛い妹だ」
えっ、そうなの? まあ、そう言えばマイラ様の側にはずうーーーーっとアスモ様がいたし。
「でも、会長は王子様で」
「そんなの関係ない。両親からはお前の了承さえ貰えれば良いと言われている」
「えっ、でも、そんな」
そんな、私が会長の横に立てるなんて今まで思ってもいなかったのだ。
「本当に私なんかでいいんですか?」
「良いんだ。俺はニーナが良いんだ」
嘘、会長に初恋のウィル様にそんな事言われた……
「さあ、ニーナ」
「はい」
私は思わずその手を取ってしまったのだ。後先の事は何も考えずに……これからの苦難の道も考えなかった。そう、その時はウィル様の顔だけ見ていたのだ。
その瞬間、ウィル様に思いっきり抱かれてしまった。
周りを一斉に歓声と悲鳴が起こった。
平民クラスの面々は大歓声だったが、お貴族様の令嬢方は悲鳴だったと思う。
平民が王子妃になるなんてとんでもなく大変なことだ。いや程苦労が待っていると思う。
でも、私は憧れのウィル様に抱かれてとても幸せだったのだ。私はその時は世界で一番幸せだった。
私は周りの大歓声の中いつまでもウィル様の胸の中で抱かれていたのだった。
おしまい。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
これにて完結です。
ブックマーク・評価まだの方はして頂けたら嬉しいです!
この後閑話等上げていこうと思います。
この話のライラ視点のサイドストーリー
『転生したヒロインのはずなのに地味ダサ令嬢に脇役に追いやられてしまいました』
絶好調更新中ですので、こちらもよろしくお願いします。
また、私の書籍『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』
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この第六部は11月16日くらいに開始予定です。
こちらもお願いします。それぞれ下記にリンク張っています。





