会長にパーティードレスを贈られて嬉しくてその胸の中で泣きました
「はああああ」
私は図書館で大きくため息を付いた。
明日はいよいよ、一学期終了のサマーパーティーなのだ。
何故私が大きなため息を付いたかというと、明日のパーティーにエスコートしてくれる人がいないのだ。
まあ、たかだか学園のサマーパーティーなのだが、基本は皆エスコートしてくれる者がいるのだ。
私はテスト勉強でいっぱいいっぱいでパーティーのことなんてすっかり忘れていた。
気づいた時には大半のものが誰をエスコートするか決まっていたのだ。
今日はテストの最終日で、テストが終わって、やっと休みだと思ったのだ。
「みんな、テスト終わったからどこかで食事しない」
私がヨーナスらに言うと
「いや、ゴメン、俺は明日の用意があるからパス」
ヨーナスに断られてしまった。
「明日の用意って何?」
私が驚いて聞くと、
「何言っているんだよ。明日はサマーパーテイーだろ」
「あっ、忘れていた」
そう言えば、学年末にサマーパーティーがあるって話だった。
そう、私はマイラ様を癒やし魔法で治したり、その後の初めてのテストや何やかやで完全に忘れていたのだ。
「えっ、忘れていたってニーナ、お前はパートナーはどうしたんだよ?」
「いや、パートナーって?」
私は聞いていた。
「パートナーは一緒に行ってくれる人の事だよ。この前の新入生歓迎パーティーでは皆、誰かにエスコートされただろう? ニーナも殿下にエスコートされていたじゃないか」
「そんなのいないわよ」
私は慌てだした。
「誰からも誘われなかったのか」
「うん」
私はどんどん落ち込んでいった。
「えっ、でも、お前、殿下からは?」
「会長って、そう何回も私がエスコートされるわけは無いじゃない。会長は忙しそうにしていたから最近全然会っていないわよ」
「そうか、そうだよな。相手は王子殿下だからな」
ヨーナスが納得して頷いてくれた。
「誰か、パートナーいない者はいないの、アハティは?」
「俺はイーダと行くことにしたんだ」
「ハッリは?」
「ゴメン、俺はレーアと行くことになっているんだ」
すまなさそうにアハティとハッリが言ってくれたが、それは仕方がないだろう。忘れていた私が悪いのだ。
ということで絶賛お一人様参加予定になってしまったのだった。
癒し魔法をマイラ様にかけて魔力不足で気絶した後、私が次に目が冷めたのは二日後だった。その時には既に会長もカーリナさんもいなかった。
代わりに侯爵様とそのご家族、アスモ様とマイラ様からとても感謝されて、歓待されたのだ。
マイラ様は元気になってきていて、徐々に歩けるようにまでなっていた。
癒やし魔法でマイラ様が治ってとても良かった。
特にマイラ様は昔私が病弱だったと(前世で)いう事もあってすぐに打ち解けて、仲良くなったのだ。
結局今回の夜間外出は1週間の停学処分になってしまった。なんでも無断外泊になってしまったらしい。侯爵様は学園に猛烈な抗議してくれたが、やはりペトラ先生の決定は覆らず、山のような課題とともに停学処分が確定した。
私は4日間は侯爵邸で世話になって、また来るとマイラ様に約束して侯爵家の豪華な馬車で学園まで送ってもらったのだ。
そして、帰ったらすぐにテスト勉強で周りの事を見る余裕もなくなり、サマーパーティーの事なんてすっかり忘れていた。
ライラともあの停学から疎遠になっていてあんまり話していなかった。
というか、皆テストで大変で、それどころではなかったのだ。
サマーパーティーで踊ってくれると約束してくれた会長とも全く会えていなかった。
試験期間中は魔法の補講もお休みで会長には会う機会が殆無かったし、図書館の会長の場所にも何回も足を運んでたのだが、いくら探しても会長には会えなかったのだ。
まあ、元々私は平民で会長と踊るなんてお情けの新歓パーティー以外はあり得なかったのだ。
なのに、往生際悪く今も会長の場所にいるんだけど。
本当に馬鹿だ。
あれから忙しい中、会長は一回、マイラに会いに行っているそうだ。マイラからの手紙に嬉しそうに書いてあった。そうだ。想い人の病気が治ったのだ。会長は私の相手をするどころではないはずだ。
私は盛大なため息をもう一度付いた。
「何ため息ついているんだ。テストの点数もそんなに悪くなかっただろうが」
懐かしい声がした。
「会長!」
私は喜んで会長を見た。
「どうしたんだ。溜息ついて」
「えっ、何でも無いんです」
私は首を振った。せっかく久しぶりに会長に会えたのだ。サマーパーティーの事は忘れよう。それよりも会長とお話ししたい。
「そんな訳無いだろう。俺になにか言えないことがあるのか」
むっとして会長が聞いてきたんだけど。
「えっ、いえ、その」
「何を落ち込んでいるんだ。さあ言って」
そう言うと会長が両指で私の頬を押さえてくれるんだけど。
「や、止めてくださいよ」
私はむっとして会長の手を払い除けたんだけど。
会長は笑って、
「それよりもドレス見てくれたか」
「ドレスってなんですか?」
私が訳が分からず、思わず聞いていた。
「明日お前が着ていくドレスだ」
「えっ? ドレスなんて買っていませんよ」
私は疑問だらけで聞くと
「えっ、いや、今日中に、寮に届くはずだから後で見ておいてくれ」
「えっ、でも、ドレスなんて買っていないし、そもそもどうして何で会長がそれを知っているんですか?」
「どうしてって、そのドレスは、明日、お前と一緒に行くパーティーの衣装だよ。パーティーに出る衣装は基本的に男から贈るんだよ」
会長の言葉私は驚いて会長を見つめてしまった。
「えっ、会長、私と一緒にパーティーに行っていただけるんですか」
私は驚いて会長に聞いていた。
「当たり前だろう。新歓のパーテイーの日に約束したよな」
「えっ、だってあの後全然その話ししてくれなかったし、最近はいくら探しても会長に会えなくて、もう忘れられたのかもって」
私は涙目でそう言った。
「そんな訳無いだろう。えっ、ちょっと待って、ニーナ、泣くなよ」
「だって嬉しくて」
私が目を押さえて答えると、
「嬉しくて泣く奴がいるかよ」
そう言いつつ、会長がハンカチを差し出してくれた。
私が涙を拭いていると、会長が軽く私の頭を撫でてくれた。
「会長!」
私はそのまま会長の胸にしがみついたのだ。
久し振りの会長の胸の中だ。
私は思いっきり会長の胸の中を堪能した。
会長は手を添えて私を抱いてくれた。
「ごめん、ニーナ、今までいろんなことで忙しくて、会えなくて」
「ううん、今、こうしていられるから良いんです」
私は会長にぎゅっとしがみついた。
「ニーナ」
何と会長も抱きしめてくれたのだ。
会長の胸の中は暖かかった。
このままずっと会長の胸の中にいたいと私は思ったのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
次話で完結です。
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