真夜中に訪問したので侯爵が怒り狂って睨みつけてきました。
昨夜更新しました
私達は会長の王子特権で、寝ているカリーナ様を強引に叩き起こしたのだ。
「殿下、何寝ぼけたことを言っているんですか?」
「いくらニーナさんと殿下の仲を邪魔したからってこんな意地悪しなくてもいいじゃないですか!」
「それに、今は真夜中じゃないですか? こんな時に公爵領に行っても泥棒と勘違いされますって」
いやがるカーリナさんは散々文句を言ってきた。
「ええええ!カーリナ様は前聖女のご神託を無視されるのですか」
「やっぱりお前か、俺がニーナに教えるというのを横取りしたのは」
私と会長が一緒に話し出すと
「えっ、いや、二人で急に言わなくても」
今度はカリーナさんが慌てだしたが、
「カーリナ様はマイラ様がいつまでも病気で苦しめば良いと言われるのですね」
「侯爵にはカーリナがマイラの治療の邪魔をしていると言っておこう」
「ちょっと待って下さいよ。そんな事話したら侯爵様に殺されるじゃないですか。侯爵様のマイラ様に対する愛情の深さは有名なんですから」
カーリナさんは慌てだした。
「でしょう、じゃあ、連れて行ってくれるんですね」
「そうか、よろしく頼む」
「……」
私と会長の前にカーリナ様は諦めたみたいで、仕方無しに頷いてくれた。
「転移は結構大変なんですからね。私はまだ半分寝てて、失敗しても知りませんからね」
今度はカーリナ様は脅してきたんだけど。
「失敗したらどうなるんだ」
会長が聞いてくれた。
「知りませんよ。失敗したことはありませんから」
ブツクサとカーリナ様が言ってくれた。
「じゃあ、よろしく頼む」
「カンガサラ侯爵領の領地のお屋敷には行ったことがありますので、その中庭でいいですよね」
カーリナ様が念を押した。
「それでいい」
会長が頷く
「じゃあ、お二人共私の手を握って下さい。絶対に外しちゃ駄目ですよ」
カーリナ様が念を押してくれた。
「では、転移しますよ」
カーリナ様は叫ぶと口の中でゴニョゴニョ呟いた。
そして、目の前がぐにゃりと歪む。
次の瞬間私達は奈落の底に落ちていった。
「キャーーーー」
私の悲鳴を残して。
私は気を失ってしまったのだ。
私は揺すられて目が覚めた。
頭がガンガンする。
「ニーナ、目が覚めたか?」
うっすら開いた眼の前に会長の端正な顔のドアップがあって、
「えっ!」
一瞬で目が覚めた。
慌てて飛び起きて、会長の顔に頭を打つところだった。
見ると私は会長に抱き抱えられていたのだ。
周りを見るとお貴族様の応接室みたいだった。
あれ、カーリナさんは中庭って言っていなかったっけ?
「お前が気絶している間に、警備の兵士たちによってここに案内されたんだ」
げっ、そうだったんだ。
でも、そう言う事は、また私は騎士たちの前で王子様である会長にお姫様抱っこされてここに運ばれたってこと?
私は真っ赤になった。
マイラ様は会長の想い人で、そのお屋敷の騎士たちの前でお姫様抱っこする会長も会長だと思うんだけど。
そこへ扉が開いて、服を着た見目麗しい人が入ってきた。しぶいオジサマって感じだ。
しかし眼光が鋭い。おそらく彼が侯爵閣下だろう。
「殿下。このような夜中に何の用ですかな」
不機嫌さを隠しもせずに侯爵は話しだした。無理もない。今は夜中だ。
「マイラはここ数日高熱を出しておりまして具合が悪く、そんな所に殿下が女性の方を抱きかかえて現れたと聞きましたが、非常識極まりないのではないですか」
鋭い視線で私を睨みつけてくるんだけど……
まあ、娘の婚約者候補が他の女と現れたら、確かにそうなるかもしれないけれど、私もそのマイラ様を助けたいから来たんだけれど……
その敵を見るような視線は止めてほしい。
「こんな夜中の訪問は申し訳ない。実はそのマイラの病気のことなのだが」
「殿下、今まで全く見舞いもにもこないで、いきなり夜中に訪ねてきて、何だというのですか?」
会長が話しだしたら、いきなり侯爵は喧嘩腰なんだけど。
「実は前聖女ミンミ様の神託が下ったのだ」
「はあ、神託ですと。私はこれでも最近寝不足気味でして、冗談も休み休みに言ってほしいのですが」
侯爵が立上って怒り出したんだけど。これって不味くない。
「侯爵、こちらも夜中に冗談で来るほど暇ではない。こちらのニーナがマイラの病気を治す」
会長は一歩も引かずに言い切った。
「はああああ! こんな小娘にマイラが治せるですと。今までありとあらゆる治療をしてきたのですぞ。こんな小娘に治療など出来るわけがないでしょうが」
侯爵は怒り狂って言ってくれた。
何か今にも掴みかかってきそうなんだけど。
私は切実に命の危険を感じたのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
明日完結予定です。
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