王宮に行く馬車で待っていたのは礼儀作法の先生でした
私はウィル様の腕の中で会長の暖かさを感じていた。
私はその瞬間、とても幸せだったのだ。
今までは会長がウィル様だとは私は知らなかった。
でも、知ってしまったからには、その思いを封印するしか無い。何しろ相手はこの国の第一王子殿下なのだ。
私はウイル様の腕の中でウィル様に心のなかでお別れを言ったのだ。
結局、何故、あの場にムーンウルフの大軍がいたかは判らぬじまいだった。
たまたま、ムーンウルフの魔物の群れがあの場に紛れ込んだだけだろうと言う話になっていた。
そして、私達は普通の授業のある生活に戻ったのだ。
違いと言えば、カリーナ魔術師団長が週一回、王宮で魔法を教えてくれることになったのだ。
風魔法の授業は相変わらず、ヴィルタネン先生の嫌味を散々言われながらの授業のままだし、放課後は会長の土魔法の授業のままだったけれど。
会長はと言えば、あの事件からとても私に距離的に近くなったんだけど……
土魔法の訓練の時でもとても近いのだ。
「土よ、出でよ!」
ポコ
「まだまだ小さい」
会長が注意してくれて、私に手を添えてくれるんだけど。
会長がくっついてくるので、体が当たるのだ。息も近いし……
「会長近いです」
私が真っ赤になって言うと、
「何言っているんだ。訓練中だぞ」
「でも、今までそんなに近い事無かったじゃないですか」
殿下が笑って言うが、私が抗議すると
「良いだろう、別に。お前の好きなのはウィルなんだろう」
会長が言ってくれるんだけど、それってどういう意味なんだろう?
「えっ、だから会長がウィル様で」
「じゃあ良いだろう」
「良くないです」
私は必死に言った。だってこのままじゃドキドキしすぎて心臓が破裂してしまう。
「嫌いな奴からひっつかれたらいやだろうけど、好きなやつからだと良いだろう」
会長は絶対に私をからかって喜んでいるのだ。
でも、止めてほしい。私は一平民であってお貴族様ではないのだ。絶対に会長の隣に立てないのだ。
だから勘違いしそうなことは言ってほしくない。
私がむっとして睨むと、
「判った。判った」
会長がそう言って離れてくれた。それはそれで少し悲しかったけれど、仕方がないことなのだ。
「でも、絶対に諦めない」
何か会長が言ってくれるんだけど、良く聞こえなかった。
次の土曜日はカリーナ魔法師団長の授業の日だった。
その日は会長が王宮に連れて行ってくれると言ってくれたのだが、そんなの受けられるわけはない。
この国の第一王子殿下にエスコートされて王宮に連れて行かれるなんて恐れ多くて平民の私には絶対にあり得なかった。
丁重にお断れしたんだけど、会長は無理矢理でも連れいく気満々だったそうだ。
だが今日、連絡が来て、急遽来れなくなったと女性の騎士が私に手紙を渡してくれたんだけど……
良かった、会長に他の用事ができて。
私はホッとしたのだ。
その迎えの人物に会うまでは。
私は迎えの馬車もいらないと言ったのだが、そう言う訳にはいかないと、約束の時間に校門に行って固まってしまった。
そこにはなんと礼儀作法のペトラ先生が立っていたのだ。
「ペトラ先生!」
私は唖然として先生を見た。
「遅いですよ。ニーナさん」
私は慌てて時計を見たらまだ約束の2分前だった。
「年上の者を待たせるとは何事ですか?」
ええええ! ペトラ先生が迎えの人なんて聞いていないよ!
「良いですか、ニーナさん。五分前集合は当然のことなのです。肝に銘じておきなさい。それでなくても……」
それからペトラ先生の叱責が始まったんだけど。
ええええ!
休みの日にペトラ先生に怒られるってありなの。
「ペトラ先生。時間に遅れます」
「まあ、そうだったわ」
一緒に来ていた騎士の人が注意してくれて助かった。
やっと注意が終わったと思ったのは間違いだった。
それから馬車が止まるまで延々とペトラ先生の注意は続いたのだった。





