ダンジョンに潜ったら狼に襲われました
移動で疲れ切っていたので、その夜は早くテントに入った。
私達女子のテントは私はライラと二年生の女の子二人の4人だった。
二年生は子爵令嬢のイリニヤと男爵令嬢のマルッタだった。
二人共、会長が平民の私とばかり話して二人にあまり話しかけないのでカリカリしていたが、文句は会長に言ってほしい。
私の本命はウィル様だから。
そう言うと
「誰よ、それは?」
この二人もウィル様の事を知らなかった。貴族の方ではないのだろうか? 今度聞いてみようと私は思った。
寝る頃に帰ってきたライラはもう疲れきっていた。
あの氷の貴公子アクセリ様のもとでこき使われていたと聞いて、二年生の二人は憐れみの目でライラを見てるし……
「ニーナ、あなたね。私の王子様と仲良くしすぎよ」
怒ったライラにヘッドロックかけられているんだけど、それは会長に言ってよ。
それに、技をかけながら寝るのは止めてほしい……
何とかライラから離れた私は、自分の寝袋に入ったと思ったら寝て居た……
翌朝は4時起床だ。
早速、皆で朝食を作り出すのを私は強制的に見学させられた。
私も少しくらい出来ると言ったのに、
「うまい飯が不味くなると困るからな」
アクセリ様が酷い!
「まあまあ、ニーナ。また作らせてやるから」
食べながら、会長が慰めてくれたが、
「良いです。ウィル様に作って食べてもらいますから」
私がブスっとして言うと
「ニーナ嬢。そのためにはもっと練習したほうが良いと思うぞ」
アクセリ様がとても失礼なことを言ってくれるんだけど。
「何なら練習に付き合ってやろうか」
「殿下。そんな娘の食べたらお腹壊しますよ」
ライラがとんでもない事を言ってくれるんだけど。
「そうです。それなら私が」
「何言っているのよ。そういう事なら私が作るわよ」
皆で言い争い始めるが、
「そろそろ行く準備をしようか」
そんな女たちを無視して、会長はあっさりと準備にかかってしまった。
中に入る順番は、
先頭は会長を中心に三年生の5人。
その後ろの両脇を二年生の3人が別れて最後が一年生の3人、真ん中に私達4人がいた。
生まれて初めてダンジョンの中に入ったが、中はなぜか明るかった。
「地下なのに何で明るいの?」
私が素朴な疑問を口にすると
「詳しい事は判っていないが、どこのダンジョンもそうだぞ」
会長が振り返って言ってくれた。
「太陽が登ると同時に明るくなって沈むと暗くなるんだ」
「へええ、そうなんですね」
私が感心して言うと、
「というか、その話は魔物生物学の受業で先生がおっしゃっていらっしゃったじゃない」
ライラが話してくれたが、
「そうだっけ?」
「ニーナの事だからまた、寝ていたんじゃないのか?」
失礼な事をアハティが言ってくれるんだけど。
みんなして頷くのは止めてほしい。
「ニーナ、そんなので単位を取れるのか? 学園のテストは難しいんだぞ」
会長まで言ってくれるんだけど。
「だから、授業はちゃんと聞いていますって」
私はむっとして言った。
「これがヒカリゴケだ」
私の言い訳は無視してくれて、会長が金色に輝いているコケを指してくれた。
「アッ、本当に金色に輝いているんですね」
私は感激して言った。
「はい、じゃあ採取します」
私を強引に押しのけて、会長との間にライラが入って来て、ヒカリゴケを採取袋に入れてくれた。
折角ヒカリゴケを見ていたのに。
ムッとしてライラを見るとライラの瞳が怒っていた。
会長との仲を邪魔するなという事だろうか?
でも、話しかけてきたの会長だし……
「殿下、あちらの光っているのもヒカリゴケですか?」
ライラが言ってその先を示す。
でも、光っているのは赤色なんだけど。
林の中から赤い光が動いている?
「えっ、いや、あれは」
会長が不審そうに言うや、剣に手をかけた。
「ムーンウルフだ」
真っ赤な目を光らせた狼型魔物の大群がゆっくりと林から現れたのだ。
「おいおい、魔物はほとんど居なかったんじゃないのかよ」
ヨーナスが声を上げた。
「来るぞ」
抜剣した会長目掛けて狼の一匹が襲いかかってきたのだ。





