鼻血を出しても土魔術の練習を始めました
遅くなってすみません!
皆の見ている前で、顔を血だらけにして、会長にお姫様抱っこで保健室まで運ばれてしまった……
何なのこれは? 変態女の恥辱プレーじゃない!
私はもう真っ赤になって震えて運ばれるしかなかった。
「先生、大変なんだ。ニーナがいきなり鼻から血を出して」
そして、保健室に着くなり大騒ぎしてくれるただけど、
「いや、単なる鼻血ですから……」
ぎょっとして飛び出してきた校医の先生も私から話を聞いて、
「殿下。ただの鼻血です」
と冷静に会長に診断してくれた。
「何を言うんだ。本当に鼻血なのか? 元々マイラの病気も鼻血からだったんだぞ」
何故か会長は必死なんだけど。
マイラって会長が間違えて私にキスしてきた子の事だ。私はそう思うと、何故が胸が少し痛んだ。
変だ。私の好きなのはウィル様のはずなのになんでだろう?
「マイラ様の病気はそうでしたが、この子の場合は、殿下の背中に鼻からぶつかったということで、どう見てもそれが原因だと思われますが」
校医の先生が断言してくれたんだけど。
「そうか、それならば良いが」
殿下がトーンを落としてくれた。
「マイラ様ってご病気なんですか?」
私が思わず会長に聞いてみた。
「いや、まあ」
会長が目を泳がせていた。何か変だ。
そう言えばライラから、貴族って聞かれたくない事も色々とあるから、気を付けるように言われていた。
「すみません。聞いてはいけないことでしたね」
私は素直に謝った。
それに病気だと聞いてもマイラ様に素直に私の力を使うわけにはいかないのだ。
祖母からはくれぐれも使うなと言われていたし。
「うん、まあ、そういうわけではないんだけれど、他の家のことだからな」
会長が曖昧に笑ってくれた。
王子の愛想笑いだ。
さすがに会長だ。様になっているけど、でも、いつもの笑顔を見ている私から見ると、とても不自然だった。
めったに私の前では愛想笑いはしないのに!
この件に触れるのは止めようと私は心に決めた。
先生が綿を鼻に詰めてくれてそれで治療は終わりだ。
なんか、絶世の美男子の会長の前で、鼻に詰め物をして顔を上に向けている私ってとっても恥ずかしい格好なんだけど……
まあ、鼻血なんかで、絶対に校医の先生の所に来る必要はなかったのに!
「すみません。会長の貴重な時間を潰してしまって」
私が一応謝ると、
「まあ、それは良い。急に立ち止まってしまった私が悪かったんだ。今日は少し休んだら、寮まで送ろう」
会長が言ってくれたんだけど。
「えっ、でも、土魔法の練習は?」
「鼻血が出てしまったんだから、仕方がないだろう」
「何言っているんですか、会長。高々鼻血くらいで」
私は驚いて言った。
「たかだか鼻血くらいって」
会長が不満そうに言ってくるが、
「会長。私は田舎育ちの平民なんですよ。鼻血なんかで休んでいたら平民なんて務まりません。会長も時間が無いんですから少しだけでも、教えて下さい」
「いや、そうは言ってもだな」
「この件は陛下からの肝いりなんでしょう。今日、練習しなかった理由が、私が鼻血を出したからなんて、そんな変な理由の報告は上げられないですよね」
「まあ、そう言われれば、確かに……」
会長が曖昧に頷いてくれた。
絶対にそうだ! 陛下に練習しなかった理由が、私が鼻血を出したからなんて、そんな理由上げられたら、お前達は一体何をしてたんだ、と変な勘繰り受けるかも知れないではないか!
それだけはダメよ!
それでなくても、地味ダサ女だとか、不敬女とか、言われているのだ。
これで鼻血女だなんて、噂を立てられる訳には行かない。
「まあ、ニーナがそう言うなら、少しやろうか」
会長が話し出した。
もう完全にニーナ呼びなんだけど、まあ、そこは無視しよう。
私が後輩なのは事実だし、土魔法の生徒になるんだから。
「土魔法は基本は土の力を借りるんだ」
「土の力を借りる?」
「昔は土の妖精の力を借りると教えられたんだけれど、俺的にはその説明はしっくりと来なかったからな。
俺も最初は中々うまく土魔法が使えなくて、色々と苦労したんだよ。妖精ではなくて、土そのものの力を借りるって思ったら、うまく出きるようになったんだ」
会長の言葉に、会長でも苦労することあったんだ。
私は何事もそつなくこなす会長の別の面を、初めて教えてもらった。
「何がおかしいんだ」
私は少し笑っていたみたいだ。
「いえ、何でも出きる会長にも出来ないことがあったんだって聞いたら、微笑ましくて」
「フン、俺も昔は苦労したんだ。何でも最初から出きるやつはいないぞ。
だから、ニーナも頑張るように!」
「はい、頑張ります」
私達は少し休んだ後、生徒会の裏庭に行った。
「まず、最初は土ボコを出してみよう」
「土ボコ?」
「見てたら判るよ」
そう言うと会長は構えた。
「土よ、出でよ!」
ボコっと大きな土の塊が飛び出してきた。
「凄い!」
私は喜んで叫んでいた。
「おいおい、感心しているのは良いけど、次はニーナがやるんだぞ」
「えっと、そうでした」
私は慌てて、構えた。
「土よ、出でよ!」
私が叫ぶと、ポコッと土が少しだけ飛び出たのだ。
「やった! 出来ました」
私は喜んで飛び上がった。
「おいおい、こんなの本当にポコッて感じじゃないか! もう少し、大きい土ボコ出してみるんだ」
会長は容赦なく言ってくれた。
「土よ、出でよ!」
ポコッ
「土よ、出でよ!」
ポコッ
「土よ、出でよ!」
ポコッ
何回やッても大きくならないんだけど。
「まあ、仕方がないよな。取り敢えず今日は最低限の事は出来たと言うことで良しとしよう」
会長がやっと諦めてくれたのは100回くらい土ポコを出した後だった。
まあ、風魔法は最初は何一つ出来なかったのだ。それから考えたら土ポコでも出来ただけマシだ。
私は自らを納得させたのだった。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
次は明朝更新の予定です。
この話のライラ視点
『転生したヒロインのはずなのに地味ダサ令嬢に脇役に追いやられてしまいました』
絶好調更新中です
リンクは10センチくらい下を





