たまった宿題を終えたらライラが会長狙いだって判りました
その後私はウィル様と庶民の街をぶらぶら歩いて夢のような一日を過ごしたのだ。
最後はウィル様に学園まで送ってもらった。
もう私は今世は幸せすぎて、死んでも良いと思うほどだった。
夢にまで見た初恋の人と一日デートできたのだ。
「ウィル様。本当にありがとうございました。今日のことは一生忘れません」
私はそう言うとウィル様に頭を下げたのだ。
「まあ、ニーナ嬢も慣れない学園で色々あると思うけれど、頑張って」
そう言うとウィル様が右手を差し出してくれたのだ。
「ウィル様もお元気で」
私は最後の別れとばかりにその右手を両手で握ったのだ。
「じゃ、また」
そう言うとウィル様は手を上げて去っていった。
「そうだ。夏のサマーパーテイーまでにはもっとちゃんと踊れるようになっておくんだぞ」
振り返ってウィル様が言ってくれたんだけど、なんでだろう?
「判りました。がんばって練習します」
そう言って私はウィル様とお別れしたのだ。
何か最後のサマーパーティーの踊りの件が良く判らなかったんだけど、会長から私が踊りが下手すぎたと聞いて心配してくれたんだろうか? まさかサマーパーティーにウィル様が参加いただけるわけはないし……
まあ、でも、踊りも少し、頑張ろうと思ったのだ。
そして、その日は私は幸せ一杯で眠りについたのだ。
そして、日曜日
ガーーーーーーン
私はショックのあまり言葉が出なかった。
机の上には宿題の山が……
王立学園は国内の最高峰、当然勉強のレベルも高く、宿題も多いのだ。
それが、最近色々あって全然宿題が出来ていなかった。
今日は死ぬ気で頑張らないと終わらない。
私はさっさと朝食を食べると部屋に帰って必死に宿題を始めたのだ。
でも、全然やる気がわかない。
昨日のことが思いだれされて進まない、いや違う、目の前の勉強に嫌気が差して他の事を考えて現実逃避に走ったのだ。
でも、このままでは流石にやばい。
部屋にいても宿題は全然捗らない。
ライラに判らない所を聞こうにも、ライラ自身が帰ってきていなかったのだ。昨日のお礼も言いたかったのだが、仕方がない。
こうなったら図書館でも行こうと私は部屋を出たのだ。
図書館の会長席に行くと、会長はいなかった。
まあ、休みまでいないだろう。
私は自分なりに必死に宿題を始めたのだ。
「何をしているんだ。休みの日に」
会長から声をかけられた時、私は辞書を片手に必死に帝国語を訳していたのだ。
会長は大量の書類を抱えていた。
「あっ、会長。帝国語が難しくて」
私が言うと、
「どらどら、おいおい、desertは砂漠だぞ。なんで食後のデザートになっているんだよ」
「ええええ! そうなんですか。道理で意味がおかしいと思いました」
会長に指摘されて私は赤くなった。
「本当に食い意地が張っているんだな。昨日も子爵家のやつにアップルパイを食べさせてやるって言われて一人でひょこひょこついていったんだって」
ムッとして会長が言ってくれるんだけど。
「違います。4人で行ったんです。そうしたら何故か個室になってしまって」
「ニーナ嬢は警戒心がなさすぎるんだよ。もう少し、警戒しろ。どうしても食い物屋に連れて行ってほしかったら俺が連れて行ってやるから」
「ええええ! それは会長のファンの人に殺されるから良いです」
私は丁重にお断りしたのだ。
「お前な」
会長がムッとして言うんだけど。
「昨日はちゃんとウィルを行かせてやっただろう」
「あ、会長本当にありがとうございました。まさか、ウィル様とデートできるなんて思ってもいませんでした」
「そうだろう。だからもっと俺に感謝しろ」
会長が胸を張って言ってくれるんだけど。
「今でも十分に感謝していますって」
私が言うと、
「それにしては俺に対する扱いが雑だぞ。普通俺が連れて行ってやるって言ったら喜んでくるのに」
「でも、会長のファンの先輩らが怖いですし」
「なら、ウィルなら良いのか」
「それはそうなればいいですけれど、でも、ウィル様はお忙しいのでは」
私はもう二度とウィル様と会えるとは思ってもいなかったのだ。
「判った。また連れて行ってやれって言っておいてやるから」
会長の言葉に本当に驚いた。そんな事が許されて良いのだろうか?
「本当ですか。判りました。会長には一生涯ついていきます」
「お前、そんな事言うから、また他のやつに漬け込まれるんだぞ。男に一生涯ついていくということは結婚するということだからな」
「えっ、そうなんですか」
会長の言葉に私は驚いた。
「そうだ。だから一生涯なんてその言葉は使うな」
「判りました。学園にいる間はついていきます」
「何かそれはそれでムカつくんだが」
「じゃあ、どうしろって言うんですか」
私は会長とくだらない話をして気分転換した後は必死に宿題をやった。
会長は私の横でこれまた、必死にお仕事をされていた。
それを私はわからないことがあると邪魔していたのだが、会長はそれで仕事が進んだのだろうか?
会長は二時間くらい付き合ってくれて、いそいそと出て行った。
私がやっと宿題を終えた時、外は暗くなりかけていた。
私が部屋に戻ると隣の部屋から明かりが見えた。
私は喜んでライラの部屋をノックしたのだ。
「何なのよ。ニーナ。私は疲れ切っているんだけど」
ムッとしてライラが顔を出してきた。
「あのう、ライラ。昨日は私を助けてくれて本当に有難うございました」
私はライラに深々と頭を下げたのだ。
「ふんっ、本当にあなたも馬鹿よね。あの子爵令息は女に手を出すのが早いので有名なのよ。それをホイホイついていくなんて全く面倒見きれないわ」
「本当に有難う。あなたのお陰で助かったの」
私は心の底からお礼を言ったのだ。
「ふんっ、そんな事言っても私はヴィルヘルム様を諦めないんだから」
「ヴィルヘルム様?」
「第一王子殿下よ」
「ええええ! あなた、会長狙いだったの?」
私は驚いて聞いていた。
「しぃぃぃぃ、大きい声出さないでよ。あなたもでしょ」
「私は違うわよ。何度も言うように、私はウィル様一筋なんだから」
私が言うと
「ええええ! あなた何言っているのよ。ウィル様って……」
ライラは私の顔をまじまじと見てため息を盛大に付いた。
「じゃあ、私がヴィルヘルム様と付き合ってもいいというわけね」
「良いわよ。私応援するから」
「約束よ」
なんか、やたら、ライラが親切になってきたんだけど、なんでだろう?
ここまで読んで頂いて有難うございます。
『転生したヒロインのはずなのに地味ダサ令嬢に脇役に追いやられてしまいました』
は今夜はお休みします。
この続きは明朝です





