王子様にウィル様に手紙を渡して頂けると言われて夜通しかけて手紙を書きあげました
魔法師団長の登場で私がやってしまった事は少しは薄まったと思う。
ずぶ濡れの全員を魔法師団長は乾かしてくれたし。風魔術も応用すればドライヤー代わりになるのだ。
何しろ私は、確認したとはいえ、ヴィルタネン先生を水魔術で吹っ飛ばして、第二王子殿下を含む高位貴族の集団のAクラスの方々を水浸しにするというとんでもないことをやってしまったのだ。
場所が場所なら処刑ものだ。
「はい、では続きをしてください」
ペトラ先生の有無を言わせぬ一言でC組の続きの魔法適性検査が始まったのだ。
私のやったことは完全に無かったことになったみたいだ。私はペトラ先生に感謝した。
もっとも後でレポート用紙10枚に反省文を書かされたので、何も無かったことにはならなかったが……
まあ、停学とか退学よりはましだろう……
私はそのどさくさに紛れて、会長に横の別室に呼ばれたのだ。
キスの件もあったので、私が何を話されるのかと少しドキドキしていくと、
「今回の魔法適性検査の件はすまなかった。魔法師団長が何かやったみたいで詳しくは調べてみる」
今回の魔法適性検査の件だった。
魔法師団長のあの慌てぶりは変だったけれど、やはり何かされていたんだ。
「でも、私のだけ変だったんですよね。何故私だけなんですか?」
「おそらく、魔法師団長はニーナ嬢が癒し魔術が使えるのを隠したかったんだと思う」
「えっ、何故会長達は私が癒し魔術を使えるのを知っておられるのですか」
私が不信がって聞くと、会長はしまったという顔をするんだけど。
「いや、ウィルらから報告が上がって来たんだ」
「ウィル様から? 会長はウィル様を御存じだったんですか」
私がムッとして聞く。昨日話した時は知らぬ顔をされたのに。
「いや、すまない。ちょっと理由があって彼の事はあまり公に出来ないんだ」
会長は言い訳してくれた。
会長の話によるとウィル様の事はあまり公にはできないらしい。
うーん、秘密という事はあまり聞いてはいけないみたいだ。
「会長。出来たら直接お会いしてお礼が言いたいんですけど」
私は言ってみたが、
「うーん、申し訳ないが、なかなかそれは出来ない」
すまなそうに会長が言うんだけど。
「そうですか」
私はがっかりした。まあ、無理なら仕方がない。元々断られていたし。でも、あの時は高位貴族の方だから仕方がないと思ったのだけど、私の目の前にいるのはその高位貴族のナンバー2だ。そのナンバー2にお会いしているのに、会えないって余程の事だと思うんだけど。まあ、会長と話しできるというのが特別な事なので仕方がないのかもしれないけれど。
その私のあまりにがっかりした様子をかわいそうに思ってくれたんだろう。
「何なら手紙くらいは渡してもいいぞ」
会長が言ってくれたのだ。
「えっ、本当ですか。有難うございます」
私は喜んびのあまり、飛び上がって会長の両手を握ってしまったのだ。
「ニーナ嬢」
会長は驚いて私の手を見た。
「も、申し訳ありません」
私は真っ赤になって、慌てて手を離した。何をしているんだろう。私って。
「いや、驚いただけだから」
会長も何故か赤くなっているんだけど。私の無礼に怒っているんだろうか?
まあ、でも、昨日は私の手を引いて散々走って逃げてくれたんだから私の手なんてさわり慣れているはずだ。
さっきも間違えてキスしてくれたし……キスされたから手を握ったくらい問題ないよね!
でも、会長の好きなのはマイラ様だし、私なんてそのあたりにいる一後輩にしか過ぎないのだ。
なんかそれが少し寂しいと思えるのは何でだろう?
まあ、それは置いておいて、会長はウィル様に手紙を渡してくれると約束してくれた。いくらウィル様でも王子様を介して渡されたら返事くらいくれるかもしれない。
私は期待に胸を膨らませた。
結局会長に間違ってキスされたのはうやむやのまま、私達の関係は元に戻ったのだ。
まあ、会長と私はもともとなにもないし。親切な先輩と厚かましい後輩の関係なのだ。
私達が戻ると適性検査は終わっていた。
ほとんど魔法クラスのクラス分けは出来ていた。
私の件は担任が後で確認してくれると言ってくれた。
私はその夜寮に帰るとウィル様に助けてもらった事を思い出して、ドキドキしながら、慣れない手紙を必死に書いたのだ。
そして、なんとか、文章にするとそれを清書したのだ。
「拝啓、ウィル様。ご無沙汰しております。
先日は襲われた私を助けて頂いて本当にありがとうございました。
その時に御礼はいらないとのお話でしたが、第一王子殿下がお手紙をお渡し頂けるとお話しいただけたので、厚かましくもお手紙書かせていただきました。
あの助けて頂いた時は、本当にもうこの世の終わりだと思ったのです。
その時にあなた様が現れて破落戸共を退治して頂けた事、神様が現れたのではないかと思ってしまいました。
本当にありがとうございました。
また、貴方様が私の事をご報告して頂いたことで、今、この学園にいられる事もとても感謝しています。
私なんかが学園に入れて周りの方々といろんなことが出来るなんて本当に嬉しいです。普通ならば一生お話しなんてできない第一王子殿下ともこうしてお知り合いに成れて本当に夢の中にいるようです。
本当にありがとうございました。
また、お返事短くでもよいので、いただけたらとてもうれしいです。
貴方に助けて頂いたニーナより」
この手紙を書くのに、ああしたらよい、こうしたらよいと夜通しかかって書き上げた時は、なんと空が白み始めていたのだ。
寝落ちした私は「遅刻するわよ」と怒ったライラに叩き起こされるまで爆睡していたのだ。





