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第2部 第4話 完済と行方



「「「おおぉぉぉ!!」」」


 ギルマスの試合終了の合図とともに怒号のような悲鳴に似た叫びが上がった。




「おっしゃぁああ!俺たちの一人勝ちだぜ!」


「あいつ!あのRK(ルーキー)何しやがった!」


「俺の今月の全財産が!?終わりだ!」


「三人同時にやりやがった!どうなってんだ!?」


「ギルマスと焔狼フレイムウフルにしてやられた!」


「倍率がおかしい!八百長だ!やり直しだ!明日から俺はどう生きればいいんだ!」


「おい負け犬どもぉ!四の五の言わずさっさと金出せやオラァ!おい、そこ!逃げられると思ってんのかぁ!!」


「ぎゃぁぁぁぁあ!」




 俺の勝利が余程想定外だったのだろう。もう訳が分からん状態になっている。乱痴気騒ぎだ。マックスもシャスティンも悪乗りしすぎ。あれじゃただのヤクザだ。

 何気にレベッカもボブも、リンまでも誰も逃げられないように囲ってる。なんて恐ろしい。



 そんなアホな連中を横目に、俺は丁寧にポールの腕の関節を戻す作業に集中する。

 俺の治療にポールも気まずいのか目を逸らして無言だ。こんな華奢な俺だ。自分の敗北を素直に受け入れられないのだろうな。





 そんな微妙な空気のところにギルマスが歩み寄ってきた。正直助かった。


「リュージ。よくやった。流石だな。」


 ギルマスは短くそう言った。


「……別にあなたの為じゃないですけどね。」


 俺の意見を聞きもせず、こんな無益な決闘を強制されたんだ。正直いい気分はしない。俺は反対したのに、完全に無視してこの事態を招いたことにちょっと頭にキている。



 そんな俺を見てギルマスは一拍を置いて姿勢を正したかと思えば深々と俺に向けて頭を下げた。


「……済まなかった。」


 謝られると思っていなかった俺は、どうしていいか分からず困惑した。


「今回の事は俺の周知不足が招いた事態だ。だが、ハンターってやつは聞いただけじゃ納得できない生き物でな。自分の眼で見て実際にやり合わなけりゃ分からん脳筋が多くて困る。少々強引だったが、これが一番効果が高かっただろ?」


 ギルマスはそう言って顎で聴衆を指す。

 つられて野次馬共を見れば、いつの間にか俺に対する侮蔑の眼差しは無くなっていることに気づいた。




 それに唖然としていると、不意に後ろから声が掛けられた。


「リュージと言ったか。……俺たちの完敗だ。」


 そこにはフリードがいた。ちょっと気まずい。


「いや。……なんていうか、あんた達も見事な連携だった。最初から全力だったら結果は分からないよ。」


 そう言うとフリードはふぅと息を吐いて大きく首を振って見せた。


「まぁ、なんだ、俺のソードアーツを完全に見切ったやつにそう言われてもな。慰めにもなりゃしないさ。いいんだ、分かってる。俺たちはただ単にお前の実力を妬んでただけだ。それに嫌と言うほど気づかされたよ。……なぁポール。」


 フリードはそう言って、ふてくされたように地面に座り込むポールをじっと見つめた。


「……あぁ。ああ!わかったよ。フリード。分かったからそんな眼で見るな。」


 顔を背け俺と目を合わせようとしなかったポールは頭をかいて立ち上がり、俺に向き直った。


「……次は負けねぇからな。」


 その発言にフリードは少しあきれ顔だ。それにちょっと気まずそうにしながらもポールは俺に手を突き出して握手を求めてきた。

 その子供の様な反応に苦笑いしながらも俺はその手を握り返すと、ようやくポールもニヤリと笑った。しばらく俺の顔を見て目を瞑ったかと思えば素早く踵を返して無言で去って行った。




「たまに素直になれない所はあるが、根はいいやつなんだ。勘弁してやってくれ。俺達もまた一からやり直そうと思う。今度手合わせするときはもっと手強くなっているからリュージも油断しないことだな。」


 フリードはそう言い残して、ポールの後を追う様にククリを引き連れて去って行った。




「ブラックホークはここ数年伸び悩んでてな。リュージのお陰でまた一つCランクパーティーが誕生しそうだ。」


 ブラックホークを見送りながら俺の横で何食わぬ顔でそんなことを言うギルマス。


「……ギルマスのやり方は分かったよ。それが一番効果がいいし、俺達・・の為にもなるってことだろ?だが、こういう事は事前に言って欲しいもんだ。」


「……まぁ。今後は善処するさ。あぁ、そうだ。今回の埋め合わせと言う訳では無いが、リュージには追加で報酬を手配しておいたから、あとでミーリスのところに寄るといい。」


 俺の抗議を軽く受け流しながらそう言ってギルマスは自室に帰って行った。通り掛けにマックスに声をかけると、しばらくして掛け金の清算が終わった者から散り散りに解散していっているようだ。



 ギルマスは情に厚い男なんだろうというのは分かっているのだが、反面感情を排して合理的に事を運ぼうとするきらいがある。それが無ければ手放しで信頼出来るんだが……。





 俺がギルマスの後ろ姿を見ながら思案していると労いの声をかけてくる人物が。リンだ。


「リュージ、お疲れ様。私の言った通りだったでしょ?今日のリュージはちょっとカッコ良かったよ。」


「……ありがとう。ただ、その言い方だと素直に喜んでいいのか迷うな。」


「あっ。別に普段のリュージがカッコよくないとかってわけじゃないからね。誤解しないで―――」


 つい照れ隠しに意地悪な回答をしたがリンの素直に賞賛に内心うれしくなった。正直決闘は疲れたが、リンのこの笑顔が見られただけでも収穫だったなと思うのだった。






 ――――――






 そんな雑談をしながら、俺たちは訓練所を出てミーリスの受付のところに向かう。もともとギルドに来たのはソワレの情報を得ることだったのだ。



 ギルドの受付前に到着すると、相変わらずミーリスの受付には行列ができているのが見える。このギルドで一番人気の受付嬢だから、まぁ仕方ない。大人しくリンと並んでいると、焔狼フレイムウフルも訓練場から戻ってきてこちらに向かってきた。


「リュージ。お前のおかげでがっぽり稼がせてもらったぜ。」


 マックスは硬貨がはいっていると思われるパンパンの小袋をジャラジャラと鳴らしてご満悦の様子だ。他の皆も同様に小袋を持って掲げて見せた。

 それを見て苦笑いで返し、俺も自分に賭ければよかったとちょっと後悔した。



「そうだ、今度奢ってやるよ。そうだな、これから数日間 護衛任務だからその後なんかどうだ?」


「じゃ、今度お願いするよ。」




 と一応リンの方を見て確認してそう答えると、焔狼フレイムウフルのレベッカが遠慮がちに声をかけてきた。


「……ところで、リュージ君。あの話、ちょっと考えてくれた?どうかしら?二人にとっても悪い話じゃないと思うの。」


 “あの話”と言うのは焔狼への勧誘の話だ。実は数日前に会った時に「もしよければ正式に焔狼フレイムウフルに加入しないか?」と誘いを受けた。もちろんリンも一緒だ。


「そうだぜぇ。お前らが加わればSランクも夢じゃぁねぇ。何なら俺達のソードアーツも教えてやっからよ。」


「リュージさん。何なら僕の知り得る魔法も全部教えますよ。以前、土魔法を見せて欲しいって言っていたじゃないですか。」




 この話を聞いたときは単なる社交辞令かと思っていたが、彼らは本気らしい。それにダークエルフのリンも偏見なしに同じ様に誘ってくれているのが俺にはとてもうれしかった。


「……みんな。ありがとう。だけどこの話はお断りさせてもらうよ。」



 俺の返答を聞いて皆残念そうにため息を吐いた。


「まぁ。無理強いは出来ねぇが、一応理由を聞かせてくれよ。それを聞かないとうちのレベッカがしばらく立ち直れそうにないんでね。」


 とマックスはずーんと見るからに落ち込んでいるレベッカを顎で指して苦笑いだ。


「Aランクの焔狼フレイムウルフに誘われるのはうれしいし、光栄なことなんだけど……俺はリンと約束したから。リンの人探しを手伝うって。マックス達はこの街を中心に活動するんだろ? リンの旅は恐らく世界中を回るものになりそうだしね。」


「リュージ。私の事は気にしないで。私は一人でも―――」


 俺の回答を聞いてリンが慌てたように言ってきた。だが、俺はそれを遮る様にさらに被せて言う。


「それに。俺は一から自分の力で世界中を回ってみたいんだ。既に完成されているAランクパーティーに入ったら、たぶん俺はそれに甘えてしまう気がする。エンリケとも一緒にパーティー組もうって約束しているしね。」



 俺はリンの眼を見てそう言った。


「リュージ……。」


 その様子にマックス達は「はぁ。」と一息漏らした。


「オーケー。分かったよ。これ以上は言わねぇ。だが、もし気が変わったり、臨時のパーティーを組みたいとか俺たちの力が必要になったら言ってくれ。お前らの頼みなら大抵の事には答えてやる。」


 マックスはニカッと爽やかな笑顔でそう答え、レベッカの肩をたたいて帰って行った。帰り際に残念そうな顔をしたレベッカが俺に手を振って来たのでそれに答える。





 彼らを見送ってしばらくしてリンがのぞき込む様に俺を見た。


「リュージ。本当によかったの?」


「ああ。もちろんさ。リンの人探しが最優先だ。 何より、あの噴水で約束したろ? 一人にしないって。」


 そう答えると、リンは顔を赤らめて、俯いてしまった。その尖った耳の先まで真っ赤だ。


「……うん。ありがと……。」




 リンのその様子にようやく我に返り、自分の発言を思い出して恥辱に悶える。これ、Aランクパーティー入りを断ってまで二人で居ることを優先したようにも聞こえなくもないのでは?と気づいたのだ。



 案の定、周りと見ると俺たちを見てニヤニヤとしていたり、「きゃぁ~。」と茶化すような声を上げる女性ハンターが目に入った。


 ……公衆の面前で俺は何を言ってしまったんだ。もう、リンと目を合わすことも出来なくなってしまった。





 自分のしでかしたことに後悔と恥辱に震えているとしばらくして助け船が来た。


「ほら、そこの熱いお二人さん。順番よ。」


 カウンターのミーリスが俺達を呼んでいる。その顔はちょっとあきれ顔だ。


「もう、こんな所で。見ているこっちが恥ずかしくなるじゃない。」


「……いや、俺は別にそう言う意味で言ったわけじゃないんだけど……。そ、それより、今朝わざわざ連絡くれたんだって?ずいぶん遅くなってゴメン。」


 俺が強引に話題を変えると、ミーリスは少しあきれた顔をしながらも、少しの間をおいてそのまま話を続けてくれた。


「聞いたわよ。リュージ君、完全勝利だったんだって?職員の間では朝から決闘の話でもちきりよ。私も受付担当じゃなかったら見に行けたのに残念。」


「……まぁ。相手も全力を出し切っていなかったので運がよかっただけだよ。」


「またそんな謙遜して。いい?ハンターは他人の実力を見極めるだけじゃなく、自分の実力も正しく把握することもそれと同じくらい大事なのよ?そうじゃなければいざと言うときに判断を誤るわ。貴方は自分をもっと評価すべきだわ。ねぇ?リンさん?」


「え?えぇ。全くその通りよ。また今度リュージの事を悪く言うような人が居たら今度は私が容赦しないんだから。」


 リンのその様子に俺が両手を上げて降参するとミーリスは満足したのか笑顔で身を乗り出して「よしよし」と言いながら俺の頭を撫でた。

 いい加減16歳男子を捕まえて子ども扱いするのはやめて欲しい。


 ほら、なんか周りがざわついてるから。特に男のハンター連中の目が怖い。




「司教様の事を聞きに来たのよね?」


「ああ。」


「本題に入る前にちょっといいかしら?」




 ソワレの話を早く聞きたいのだが、まだ昼前だ。特に急ぎという訳でもないので、まずは話を聞くことにする。


「以前、壊れてしまった魔力測定器があったじゃない?ようやく先日代替品が教会から届いたんだけど……リュージ君、測定してみる?」


 なんだそんな事か。なら答えは決まっている。


「いや、やめとくよ。」


 俺は間髪入れず拒否する。あの魔力測定器が壊れたせいでゴンザが絡んでくるわで散々な目にあった。それに、今ならわかる。あれは壊れたんじゃなくて、俺が壊したのだろうと。



 霊子結晶アニマは特に人間の脳や神経周辺に強く発現しているが、体内に流れる血にもわずかに存在しているのを俺は知っている。おそらく血液に纏わりついたアニマの残滓なのだろう。

 あの魔道具はそのアニマの何かを測定する道具だ。俺のアニマがこの世界の住人とは桁外れに強いことは俺の彗心眼を通してみれば一目瞭然だ。だから、もう一度やったところでたぶん同じことが起こるという確信があった。



「そう。ちょっと残念だけどリュージ君はそう言うと思ったわ。今のリュージ君には不要か。今日の決闘の事もあって、リュージ君を魔力ゼロの寄生者パラサイトだなんて侮る人は今後いなくなるでしょうしね。」


「まぁ。そうだといいけどね。」


「それでね、魔道具の弁償代に充てる借金の事なんだけど……。」



 そう。俺は弁償代としてギルドから多額の借金をしている。俺のハンター人生は、総額百二十万ミルの借金から始まったんだ。

 それ以降地道にハントの報酬から引かれて返済に充てられている筈だが、また百万くらいは残っていたはずだ。それが俺がこの街を離れられない一因にもなっていた。



「おめでとう。何と本日を以て全額返済となりました!」


「は?……えっ?何で? だって緊急クエストに行く前は百万くらいは残っていたはずなのに?」


「フフフ。驚いた? この前の緊急クエストの特別報酬が全額この返済に充てられたわ。」


「特別報酬?」


「あら?ギルマスから聞いてない?」



 言っていた気もするが、それが百万ミルだって??

 俺が困惑していると、ミーリスが手招きして乗り出す様にして小声で告げた。



「表向きは特別報酬ってことになっているけど、本当はちょっと違うのよ。あの緊急クエストの後、ギルマスが私のところに来て、リュージ君の負債分をギルドで負担するようにとの指示があったのよ。」


「え?だって、俺は既に別に報酬を受け取ってるんだけど……?」


「私もそう確認したんだけど、ギルマスはサーペントの最後の捨て身の魔法にリュージがいち早く気づいていなかったら今頃全員ここにはいないからって言ってたわ。それにギルドが有望な若者を一所に縛り付けるのは良くないとも言っていたわね。」


 ミーリスはウィンクをして「ギルマスに口止めされてるから内緒ね」と言った。



 あの合理主義のギルマスが……。さっきの決闘騒ぎもあってあれだったが、ギルマスはこのギルドのハンター達を本当に大切にしているんだなと改めて思った。俺が思っている以上に優しい心を持った人物なのかもしれない。


「ギルマスは普段あんなだから冷たい人だって誤解されがちだけど、実は結構情に厚いところもあるの。リュージ君には誤解してほしくないなと思ったから。」


「そうか……。ギルマスには感謝しかないな。」


「改めて、完済おめでとう。」


 ミーリスがニコリと笑顔を向けてくれる。リンを見れば「よかったね」とほほ笑んだ。



 それを見てようやく実感が湧いてきた。

 ついに。俺を絶望の淵に陥れた多額の借金を完済できた。その事実に大きな胸のつかえがとれた気がする。自分で思っていた以上に重圧になっていたようだ。


 それに、これでようやくリンの人探しの旅に出発できる。





 一通り喜んだところでミーリスは手をたたき「さて」と切り出した。


「本題に入りましょう。司教様についてね。私の知っていることを話すわ。」



 そう言って昨夜来たというソワレの様子を話してくれた。



 どうやら先日の夜遅く、閉館間際にふらりとソワレが現れて見聞の試練中の司教としての報告書を持ってきたそうだ。


 最初の報告内容と大筋は変わらず、自分が超級魔法でナイトメアサーペントを仕留めたとの内容だったそうだ。また、蛇の森の異変についての調査結果も記載があったようで、中心部に魔物を寄せ付けない領域が現れた理由は地殻変動による龍脈の一時的な乱れによるものとの私見が述べられていたらしい。


 この報告内容は実際に深部の魔除けの領域が徐々に薄れている事実にも符合するため、信憑性が高いとギルドは判断したようだ。



 報告を要約すると以上のようなもので、これを確認するために明日にでもギルドは再度蛇の森へ調査団を派遣するとのこと。


 ギルドが調査団を派遣する理由はそれだけでなく、どうやら最近起こっている魔獣の狂暴化の原因を調査する目的もあるらしい。



 ミーリス曰く、魔獣の狂暴化は魔王復活によるものとの噂が立っているらしい。単なる眉唾な噂だったらいいのだが、実際魔王復活の噂の出所が魔神国らしく、無視できない状況のようだ。



 それにしても“魔王”か。本当にいるんだ……。


 勇者が居るんだから魔王が居てもおかしくは無いが、相変わらずファンタジーだなこの世界は。とどこか他人事にそんなことを思う。




 ちなみに、最終報告でも神龍の事には言及しておらず、ソワレがこのまま伏せるつもりだというのも分かった。




 一通り内容を聞いたところでソワレの意図は理解できた。その上で、俺はその報告内容よりも気になっている事を聞く。


「……ところで。報告書を持ってきた時のソワレの様子はどうだった?何か変なところはなかっただろうか?顔色とか、目が充血してたりとか、何というか体長悪そうじゃなかった?」


「ん?……うーん。特にこれと言っておかしなところは無かったと思うけど……。なに?リュージ君?司教様のことがそんなに気になるの?」


「いや、別にそういう訳じゃ……。とにかく、おかしなところが無かったならいいんだ。」

「……」


 ミーリスは俺の態度に何かを感じ取ったか、じっと俺をのぞき込む様に見ている。しばらくしてミーリスは小声で何かをつぶやいた。


「リンさんだけじゃなくソワレ様まで……ちょっと出遅れたかしら…。」

「ん?」


 その呟きが聞き取れずに、聞き返すとミーリスは慌てたように別の話題を切り出した。


「特に気になることは無かったけど、たぶん司教様はもう街を出たか、明日にでもこの街を出ていくかも。もし探しているなら急いだほうがいいわ。」


 理由を聞くと、見聞の試練を受けているものは大抵その周辺の出来事をまとめて教会やギルドに報告したら、次の街に出発するのが通例なんだそうだ。



 一先ず粗方の情報は聞き出せたので、ミーリスに礼を言ってギルドを出る。ソワレを探すにしても、まずは方針を決めたい。




 ――――――




 ギルドを出て、昼食がてらリンと話し合ったあと、俺たちは今街の外の草原で訓練を行っている。


 今日まで街中を探し回ってソワレの行方は知れず、これ以上探しようがないという結論になったためだ。既に街を出てしまった可能性もあり、現状ではこれ以上出来ることはないという事でソワレの捜索はいったん保留となった。

 であれば、リンの目的を優先しようという事になり、病み上がりの俺が本当に回復したかどうかの確認を兼ねて訓練に出て来たのだ。



「お疲れ様リュージ。体力はもう十分に戻っているわね。と言うか、前よりずっと動きが早くなったみたい。」


「ああ。なんだか前より体が軽く感じるんだよね。身体強化が前より強く発動できるようになったからなんだけど、たぶんコイツのお陰だな。」


 ―――ギャゥ??


 俺が親指でファルの事を指すと、不思議そうな顔をして首を傾げている。可愛らしいその大きな目に癒されていると突然ピリピリと背筋に嫌な感じが走った。


「!?なんだ?」


 リンを見ると同じ様に何か感じていたのか、耳を立てて森の方を注視していた。その直後。


 ―――ピィィイ!


 蛇の森の方から甲高い鳥の鳴き声が聞こえた。


「シロピーの警戒音!行きましょう!」


 そう言ったが早いか、その直後にはリンは飛び出していた。

 早い。



 どうにか後を追っていくと、森の入り口でしゃがみ込んでいるリンが見えた。茂みが邪魔で良く見えないがリンが何かを抱えているようだ。


 それに駆け寄ると次第にリンが抱えているモノが見えてくる。


 そしてそれを視認して硬直した。







 それはおびただしい鮮血に濡れたシルバだった。


少し長くなってしまいました。。

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