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第27話 オリジン



 話は変わって、少し《オリジン》の起源の話をしよう。






 宇宙が生まれる前の話。




 物質と半物質が発生しては消えてを繰り返す、そんな揺らぎが支配する無の世界で、ある時宇宙開白ビックバンが発生した。




 ビックバンが発生したその瞬間、何かの理由で物質粒子だけが少しだけ多くこの世界に残った。


 本来なら、物質と半物質は全く同じ数が発生して対消滅ついしょうめつするはずだったが、何らかの原因で物質粒子だけが多く残ったのだ。






 その理由は前世でも諸説あったが、《オリジン》によって物質が生成されたためと言うのがばあちゃんの仮説だった。






 ビックバンが発生したその瞬間、大量の《オリジン》が発生し、発生直後の超高圧高温空間で《オリジン》の数パーセントが物質粒子に変換されたために対消滅のバランスが崩れ、宇宙は収束する事なく膨張を始め今の宇宙ができたというのだ。




 その僅かに発生した物質粒子がやがて集まりガスとなり、星となり、そして銀河を作り、今の宇宙を形作ったのだ。




 しかし、ビックバンで発生した《オリジン》の殆どは反応せずにまだ宇宙に大量に残っている。それがいわゆる宇宙の96%程度を占める謎の物質、ダークエネルギーもしくはダークマターの正体であるとばあちゃんは言っていた。








 本来、《オリジン》とはビックバン発生時の超々高圧高温環境下でしか反応しないものであり、見ることも触ることも出来ない、完全に不活性の素粒子である。




 その不活性な《オリジン》はなぜか《霊子結晶アニマ》にだけ反応する。




《オリジン》が一定の思考回路パターンの状態の《霊子結晶アニマ》に触れることで、現宇宙に存在する素粒子に変換される現象。それが《オリジン反応》であり、この世界で言う《魔法》なのだ。






 簡単に言うと、《オリジン反応》によってこの世界の物質を作りだすことができるのだ。




 前世では、ばあちゃんが言っていたことを信じていなかったわけじゃないけど、感覚として理解できなかった。でも、この世界に来て、魔法を実際に見て体験して、そして自分で発動して、ようやく実感できた。








 《オリジン反応》=《魔法》によって物質を作り出だすことができるのは、手を水に入れた状態で発動したエアレイドで手の平から泡が出たことからも確かだ。


 それに俺が既に習得している、《ライト》や《紫電エレクトロキュート》、《水滴ウォーター》の魔法も、無から有を生み出していることは明白だ。












 だが、色々と魔法を習得してきて一つ気になっていることがあった。




 《水滴ウォーター》や《点火イグナイト》は《ライト》や《火花スパーク》に比べて発動がしにくく、威力が弱いのはなぜかという点だ。






 《水滴ウォーター》や《点火イグナイト》は俺のプレシールドで発生する体外魔力を使って通常発動しても、殆ど発動できなかった。発動しているのだろうが、目視出来ないレベルだ。


 だが、《ライト》や《火花スパーク》は同じ体外魔力でも目視できるし体感するレベルで物質が生成されているのにだ。




 この違いはなぜ生まれるのだろうか。










 ここで少し考えてみる。


 俺たちが、普段目にして触れているタンスや机、パソコン、ガラス、空気などこの世界のあらゆるものを構成する“物質”とは、そもそも何なのか?






 例えば空気に含まれる酸素も物質だ。酸素は酸素分子が2つくっついたものである。


 その1つの酸素分子をもう少し詳しく見ると、酸素原子の周りを電子が回ってできている。


 さらに、酸素原子は8個の中性子と8個の陽子がくっついて構成されている。


 さらに陽子を分解すると、2つのアップクォークと1つのダウンクォークと言う素粒子でできているのだ。


 これ以上分解できない単位を素粒子と呼ぶ。


 ちなみに、電子はそのものがそれ以上分解できないとされる素粒子の一つである。








 ここで気づいただろうか。


 魔法で空気、例えば酸素を作ろうとした場合、まずアップクォークとダウンクォークをたくさん集めて、それらをギュッとくっつけて中性子と陽子を作り出し、更にそれらをギュッとくっつけてようやく酸素原子核ができる。


 さらにそれに電子をくっつけて酸素原子が出来上がるのだ。さらに、同じ工程をもう一度やって酸素原子をもう一つ作って、二つの酸素原子をくっつけてようやく酸素分子が作り出せるのだ。




 これは、とても大変な工程が必要そうに思える。




 それに、“ギュッとくっつけて”と表現した部分は本来であればものすごい高温高圧下、それこそ太陽など巨大恒星の中心の様な環境でないと起こらない反応のはずなのだ。






 つまり、オリジンは分子や原子を直接作っているのではなく、作り出した多くの素粒子を組み合わせて分子や原子を作り出しているのではないかという事だ。






 そして、それを行うには大量のオリジンと複雑な魔法制御過程が必要なはずだ。






 だが、一方で、電気を発生するには素粒子である《電子》を、光を灯すには素粒子である《光子》をそれぞれ作り出せばいいだけだ。


 それは先ほど説明した酸素を作り出すよりはるかに簡単なように思える。






 さらに、恐らく気体の可燃物質(=酸素と水素、炭素の化合物)を作り出しているであろう《点火イグナイト》はもっと複雑で必要な素粒子はもっと多いはずだ。






 俺がエレクトロブーストで電気を作り出せて、イグナイトが発動できない理由はそういう事なのではないだろうか。








 つまり、簡単に言うと、分子や化合物を直接作り出す魔法はすこぶる効率が悪いのだ。


 体表のプレシールドでわずかな魔力しか使えない俺には、物質を直接作り出す魔法は向かないのだ。












 ゼロ距離魔闘士を目指すなら、俺は出来るだけ効率の良い魔法を独自に研究、開発する必要がある。






 今のところ素粒子を直接作るだけで何かに作用させることができる以下を重点的に研究することにしようと思っている。






 1.《雷》属性魔法


 2.《光》属性魔法


 3.《風》属性魔法




 の3つだ。






 まず初めに《雷》属性魔法。注目すべきは“電子”を作り出し、あやつる能力だ。




 この世のあらゆる場所に“電子”が存在している。すべての物質は基本的に“電子”と結びついているし、“電子”を操ることができれば、“電子”が動くことで発生する“電場”ひいては“磁場”をも操ることができるはずだ。




 さらに言えば、物質内の“電子”を操作することができれば、物質の結合すらも自由自在に操れる可能性を秘めている。


 また、電子レンジと同じように“電子”の振動を操作すれば、その物体の温度を操作することすら可能かもしれない。




 少し考えただけでも“電子”を操るという事が如何に恐ろしい事か容易に想像できる。












 次に《光》属性魔法だが、その本質は“光子”を作り出し操るということだ。


 では光子を操るという事はどういう事だろうか?






 “光子”はそのまま“光”その物なのだが、それは単純に目に見える光だけではない。光とは電磁波の事であり、紫外線も、ガンマ線も、X線も、赤外線も、マイクロ波も電波も全て同じ“光子”であり、波長が違うだけなのだ。




 もし、この“光子”を操る《魔法》によって、高エネルギーのガンマ線やX線を作り出せるとしたら、それだけで恐ろしい攻撃になる。






 しかも、“光子”の役割はそれだけではない。




 あまり信じられないかもしれないが、電気の力や磁力の力を伝えている媒体は全て“光子”であることが分かっている。


 つまり、“光子”を操るという事は、イコール電磁気力全てを操作する事を意味する。




 前述の“電子”を操作するよりも直接的に電磁気力に干渉できるという事だ。










 そして最後の《風》属性魔法だが、俺が注目しているのは空気そのものを操る能力だ。




 想像して欲しい。もし空気そのものを操ることができたらどうだろうか?








 当然風を起こすことは出来るし、空気を高圧縮すれば相当な熱を発生させることができるはずだ。その逆、空気の気圧を著しく下げることができれば空気を急冷することも可能なはず。




 そもそも、空気の気圧を自由自在に変更できるなら、それで敵を包むだけで息ができなくなり絶命する。


 考えただけでも恐ろしいし、俺たちの周りが全て空気であることからも非常に汎用性が高い。








 以上、3つの属性魔法の本質を見極め、極めることができれば、俺のわずかな体外魔力であったとしても、十分に使える魔法になるはずだ。


 極めれば最強も夢ではない。










 それに、以前も触れたが、俺の体外魔力を使った魔法はこの世界の魔法にはない途轍もない利点がある。




 第1に、魔法発動にリスクが伴わないこと。


 体内に魔力が入らないから、体内での不意のオリジン反応による魔力暴走が起こりえないのだ。




 第2に、魔力枯渇が起こらないことだ。


 扱える魔力は僅かだが、この体表で発生する魔力は常に発生し続けている。だから、この発生する魔力を使う分には永久に魔法を発動し続けることができるのだ。




 1つ目の利点と合わせて、俺はリスクを恐れず絶えず魔法発動ができるし訓練が可能なのだ。


 これは魔法を研鑽するには途轍もないアドバンテージになる。




 そして第3に、俺の魔法は詠唱が不要であることだ。


 俺は、彗心眼で直接魔法発動の反応を見て再現できるのだから、詠唱によるイメージの定着化と言った過程をすっ飛ばすことができる。










 俺の本質を文字通り視ることができる《彗心眼》と無限の練習ができる体質によって、さまざまなことができる様になるはずだ。


 そして、無幻水心流と魔法を組み合わせて融合させることができれば、まさに俺の目指す魔闘法を創り上げることも夢じゃないはずだ。






 実に面白い。








 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆






 場所は変わり、クロスメントから北東方面、千数百キロ先の地下深く。






 異様な空間があった。




 その中心には、ドクン、ドクンと脈打ち、家程もある巨大で不気味な赤黒い心臓の様なものが鎮座していた。






 周りの壁も心臓と同じように赤黒く、血管のようなものが張り巡らされていて、どうにも気味が悪い。






 その空間の一角に高さ1メートルほどの黒い石柱があった。それは複雑な模様が描かれている。まるで幾重にも魔法陣を重ねて描かれたような幾何学的な模様だ。そのいくつかの模様が光り輝いている。




 そして、その石柱の前に人が一人立ち、手を置いて何やらつぶやいている。


 その空間には一人しか見当たらないにもかかわらず。








「……ドゥーぺ様。 申し訳ありません。突然の神龍の顕現により調査続行が困難となりました。」




『アルカイドよ。ご苦労だった。こちらでもトンボを介してある程度状況は把握しているが、やはり神龍か。 なぜあの場所にこのタイミングで顕現したのかは分からないが、300年ぶりの顕現だ。調査しないわけにはいくまい。

 だが、神龍相手に蛇の森の直接調査が極めて困難であることも確かだ。』




『ケケ。アルカイド。 おぬし、神龍と対峙してよく命があったものよの。 300年前の人魔対戦時には敵味方関わらず数万ともいわれた兵士が一人残らず消滅したのだがのう。』




「調停者とされる言い伝えは確かな様だった。無理にあの場で争いを続ければ即座に消滅していただろう。」




『なるほどのう。わしも直接は見たことがないが、おぬしがそこまで言うか。』




『それはそうと、神龍が現れたとなると、伝説にかかわる可能性が高くなったとみるべきではなくて?』




『アリオトの言う通りだ。 星降りの儀を阻止して以来の流星に加え、神龍の顕現となると、あの太古の与太話を連想せざるを得まい。』




『だが、下手に神龍の逆鱗に触れるわけにもいかないしなぁ。ドゥーペさん。これは周辺の街で何か異変が起こっていないかどうかの調査が必要だなぁ。』




『……メラク。心配せずともすでに手は打ってある。メグレズにはクロスメントへ向かうよう指示を出している。』




『……なら構わないけどね。』




『アリオト。悪いが、メラクのトンボを再度アルカイドに届けてもらいたい。また、アルカイドとともに、迷宮の調整を手伝え。作業予定を早める。それが終わり次第、蛇の森周辺の調査を行え。』




『全く人使いが荒いボスだわ。過労は美容の大敵なのだけど。当然ボーナスは期待してもいいのかしら?』




『ああ、極上のにえを用意しておこう。確かお前は人族の女児の生き血が好みだったか。』




『出来るだけ高貴な出の10代前半から中頃が良いわぁ。そうね、十は欲しいわ。』




『……中々無理を言う。良いだろう。』




『ふふ。言質は取ったわよ。』




『アルカイドは引き続き作業に当たれ。』




「はっ。」






 先ほどまで石柱の上面の空間に映し出されていた魔法陣が消える。








 そして、アルカイドと呼ばれた男は、石柱に手をかざし、先ほどとは異なる魔法陣を起動させ、何やら集中し始めた。






 だが、しばらくしてその男が不意にその手を止めたかと思うと、手で頭を押さえうずくまり出した。 そして焦点の合わない白濁した目が黒く明滅し始めた。




「ぐっ……がァっ!……カリ…ナ……リ………ン……俺…は…。」






 男のうめき声と響く腹の底から怖気を誘う不気味な鼓動の音のみが不気味に木霊していた。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



オリジンとオリジン反応、霊子結晶アニマは私の創作です。

ですが、それ以外の科学的な記述はできる限り現実世界で判明している物理法則、科学的事象に基づいた記載を心がけております。

(明らかにつじつまが合っていないことがあればご指摘いただければ。)


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