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龍泉寺

日曜日の早朝、三橋くんと龍泉寺に向かう為に家を出ようとした時だった。


「お弁当、持っていかないの?」

「あっ作ってくれたの?お母さん。」

「当たり前じゃない。ふふふ。デートでしょ。」

「いや、違うから。」

「あら~そうなの。残念。」


げんなりする気持ちを横においてお母さんに言った。

「ちょっと調べものだよ。龍泉寺まで行ってくる。」

「あっそこは、まあまあ、険しいから・・・ちょっと待ってて。」


そう言うとお母さんは、パタパタと台所へ何かを取りに戻った。


「これ。もっていきなさい。」

「これ何?」

「濾過水筒!!もし、水が飲みたいのに足らなくなったら、この水筒に入れると濾過して飲める水にしてくれるわ!!」


かなり自慢げにその水筒を渡して、仁王立ちするお母さんだった。


「えっなんか、遭難するみたいじゃん。まあ、とりあえず、持っていくよ。」


そんなやり取りをしていると子鬼が走って出てきた。


「ゆか~一緒にいくじょ~。」

「だめ。お留守番。」

「いくじょ~たよりになるじょ~。」

「抱っこして歩けないからダメ~」

「だっこしなくていいじょ~たぬきちにのっていくからだいじょうぶだじょ~。」


いつの間にか横にいたたぬきちが、『げっ』とした顔で子鬼を見た。


「たぬきち嫌そうじゃん!」

「そんなことないじょ~なっ?たぬきち」


たぬきちは、子鬼に捕まらない様に飛んで逃げた。


「あったぬきち~まつじょ~!」

「今のうちに行くよ。お母さん。」

「そうね~。」

「友香っち私も行くわ。コン。」

「次から次へとどうして・・・。」


今度は、狐仙女さんが突然姿を現した。


「わかった。行こう。じゃあ。姿は、消して着いてきてね。山に入ったら狐の姿ね。それでいい?」

「了解よ~ん。コン。」


玄関を勢いよく開けると三橋くんは、自転車に乗って、すでにスタンバっていた。


「圭太。ごめん。出るまでが一苦労でさ~。」

「あ~聞こえてた・・・。行こう遅くなると困るからな。」

「うん。」


登山口まで自転車で行き。そこからハイキングコースをどんどんと上っていく。ハイキングコースの山頂まで来ると龍泉寺奥の院の道が初めて出てくる。ここからがハイキングコースの様に整備舗装されていないので大変だ。丸太で作った階段や石段ばかりだ。この道を上ること2時間弱で龍泉寺に着く予定だ。狐仙女さんは、嬉しそうに山を駆け上がっていくが、私と三橋くんは、水分を取りながら、無理しない様に上り始めた。


「圭太は、奥の院まで行ったことある?」

「ん~。たぶん。1回だけあったと思うんだよなあ~。ばあちゃんと日の出、見ようって・・・。友香、いなかったけ?」

「多分。私もそれが、初めて行った様な・・・。大みそかの夜から登ったんだよね?その日だけ、ここの道を照らす灯篭に火が灯って綺麗な参道に見えて・・・。そうそう!!圭太んちの家族とうちで、行った。ちょっと思い出してきた。」

「だよな!!でも、なんとなく幻の様にも感じるんだよな~。なんでだろう。」


そんな、会話をしながら龍泉寺へと歩みを進み続けた。

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