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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

探し上手のアマリアさん

作者: こうじ

夏のホラー2021参加作品です。作者としては短編にしては長いです。そんなに怖くないかもしれません。

「は、はじめまして、アマリア・ノールドと申します……」

 私、アマリア・ノールドは今凄く緊張している。

 だって目の前にいるのはこの国の第2王子であるアルフォート・レイタス殿下なのだから。

「アルフォート・レイタスだ。そんなに緊張しなくていいよ」

 私が余りにもガチガチになっているからリラックスさせようと笑顔で話してくれているアルフォート様。

 が、私にとっては天の上の方であるアルフォート様相手に緊張するな、と言うのが無理な話だ。

「とりあえずソファーに座ってほしい」

「は、はい……」

 私はぎこちない動きでソファーへと座る。

 うわ、めっちゃ柔らかい!

 私は自宅にある硬くて長く座っているとお尻が痛くなるソファーとの違いに内心驚いている。

 私が今いるこの部屋は王家しか使えない特別な部屋で私は突然、教師に呼び出されこの部屋に連れて来られたのだ。

 正直、何で呼び出されたのかさっぱりわからない。

「アマリア・ノールド男爵令嬢、君の噂は聞いている。君は失くし物を探す名人らしいね。『失くし物は大体アマリアが拾って持っている』と生徒や教師から評判を聞いた」

「いや、名人と言う訳ではないんですが……、『加護』のおかげですので……」

 この国では10歳になると神からの加護を受ける事が出来る。

 神と言っても1人の神ではなく何百と言う神がいるんだけど、私はその何百もいる神様の中から『失せ神』の加護を受けた。

 貴族令嬢だったら愛の神や美の神の加護を受けたかったのだがまぁ私にとっては宝の持ち腐れだ。

 何せ我が家は先祖代々由緒正しき貧乏男爵家なのだ。

 で、この失せ神の加護と言うのが『失くし物を拾い見つける』と言う物だ。

 ……うん、微妙だ。

 おかげで毎日必ず何か拾うので常に巾着袋を持っていなければならない。

 ただ、持ち主からはお礼を言われるのは気持ちが良いので悪くはない。

「君の噂を聞いてね、探してもらいたい物があるんだ。これはあくまで僕の個人的な依頼だ」

「はぁ、一体何を探せばよろしいんでしょうか?」

「探してほしいのは僕の幼なじみなんだ、10年前に行方不明になった」

 ……はい?


 詳しい話を聞くと10年前アルフォート様がまだ幼い時にお友達と中庭でかくれんぼをして遊んでいたらしい。

 そのお友達の中にエミリーと言う少女がいたらしい。

 で、アルフォート様が鬼になって他の人達は隠れた。

 木の後ろだったり机の下だったりと色んな所を探して見つけて行ったんだけどただ1人エミリー嬢の姿が見えなかった。

「散々探したんだけどその日を境にエミリーはいなくなってしまったんだ……」

 そう言ってアルフォート様は心苦しそうな顔をしていた。

「今でもエミリーの事は心の何処かで引っ掛かっているんだ」

「それは国王様達もご存知なんですか?」

「勿論、兵士達も一緒に探したんだが現在まで見つかっていないんだ……」

「エミリー様のご両親も心配されているでしょうね……」

「エミリーの姉上は兄上の婚約者なんだ。もうすぐ兄上達は結婚式をあげる。その為にもこの件をなんとか解決したいんだ」

 なるほど、それで私の出番と言う事ですか。

「わかりました、私で良かったら協力いたします。ただどんな結果になっても文句は受け付けませんからね」

「わかっている、僕だってエミリーが生きていない事ぐらいは理解してるし覚悟は出来ている」

 こうして私はアルフォート様の依頼を受ける事にした。


 後日、私はアルフォート様の許可を取ってお城の中庭に来ていた。

「ここが現場ですか、確かに幼い子供が隠れそうな所がいっぱいありますね」

「あの件以来だよ、この中庭にやって来たのは」

 やっぱり曰く付きの場所には中々行きたくないよね。

「それじゃあ早速始めます」

 私は地面に手をやっておまじないを始めた。

「失せ神様、失せ神様、この地にいるであろうエミリー嬢を見つけてください」

 そう言うと地面から光の玉がポワッと出てきた。

「あの玉は?」

「あれがエミリー様の元へ導いてくれる筈です」

 光の玉はふわふわとゆっくりと移動を始めた。

 私達は光の玉の後を追いかけた。

 光の玉は森の奥をどんどんと入っていく。

「こんな奥までエミリーは入っていたのか……」

「この奥には何があるんですか?」

「小さな池がある。……まさか誤ってその池に落ちたんじゃあ……」

 う~ん、その可能性は高いかもしれない。

 そして、私達はその問題の池にやって来た。

やはり池に落ちたのか、と思った。

 しかし、光の玉は池の近くの草むらに入っていった。

 そしてある地点でくるくると回っていた。

「あれはどういう事だ?」

「多分、あの場所にエミリー様はいらっしゃるんではないか、と思います」

「なんだってっ!? 池に落ちたんじゃあ無いのかっ!?」

「私も流石にわかりませんが……」

「とりあえず兵士達を呼んで掘ってもらおう」

 アルフォート様は直ぐに兵士達を呼びその場所をスコップで掘るように指示をした。

 掘りはじめてから数分後、

「アルフォート様っ! なにやら固い物に当たりました」

「丁寧に掘り出すんだっ! 傷をつけてはダメだ!」

 兵士達は丁寧に手で掘り進めた。

「ア、アルフォート様っ!じ、人骨がっ……!!」

 悲鳴に近い様な声で兵士が言ったのを聞いたアルフォート様はグッと何かを堪えている様な顔をしていた。


 それから数日後、お城のとある一室に私はいた。

「鑑定の結果、この骨はエミリー嬢である事がわかりました」

「あぁっ!エミリーっ!こんな姿になって……」

 この部屋にいるのは国王様と王妃様、王太子様とその婚約者であるエミリー嬢のお姉様であるミランダ・アドマント公爵令嬢、そしてエミリー嬢のご両親、そして何故かいる私。

 うん、わかってますよ。見つけたのは私ですから当事者ですもんね。

 変わり果てた姿になったエミリー嬢を見てご両親は号泣しております。

 エミリー嬢のお姉様もショックを受けているみたいで顔面蒼白、王太子様に支えてもらっています。

「やはりあの時に何らかの事故に会って亡くなっていたのか……」

「可哀想に……」

 国王様、王妃様も無念そうな顔をしている。

「その件に関してですが……、実はエミリー嬢は殺された可能性があるのです」

「なんだってっ!?」

「骨を調べた結果、頭蓋骨の後ろに傷がありました。更に首の骨にも破損されている部分がありました。要するに何者かに襲われたのではないか、と考えています」

 アルフォート様の説明に場の空気が重くなる。

「アルフォート、例えエミリーが殺された、としても10年前の話だ、犯人を見つけようとしても無理なんじゃないか」

「いえ、ひとつだけ可能性があります」

 そう言ってアルフォート様は私と目を合わせた。

「彼女はアマリア・ノールドと言って今回、エミリーを見つけてくれた功労者です」

「ノールド男爵の娘のアマリアと申します。私は失せ神の加護を持っておりまして大抵の探し物を見つけたり拾ったりする事が出来ます」

 公爵令嬢様から『あぁ、あの娘が』と小さな声で言った、どれだけ噂になってるんだろう、私。

「ですので、これからエミリー様を殺した犯人を失せ神様に見つけていただきます」

 場がざわついた。

「そんな事が出来るのか?」

「出来るんですよ、残念ながら……」

 王太子様の疑問に私は断言した。

 そして、骨に手をやりおまじないを唱えた。

「失せ神様、失せ神様、エミリー様を殺した犯人を見つけてください」

 そう言うと骨からポワッと玉が出てきた。

 今度は光ではなく黒い玉だけど。

 黒い玉はふわふわと、迷いなくある人物へと向かって行った。

「な、なんだっ!?来るなっ!!こっちに来るなっ!」

 黒い玉が近づいた人物、それは王太子だった。

 黒い玉はだんだんと大きくなり王太子を包んで行った。

「な、なんだっ!? や、止めろ、止めてくれっ!そうだっ!俺が殺したんたっ!あ、謝るからっ!頼む、許して……ぎゃあああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 ボキボキボキボキッ!

 骨を折る音が聞こえて来ました。

 そして黒い玉が徐々に消えて現れたのは全身の骨を折られ絶命した王太子様の姿でした。

 その顔は恐ろしい物を見たような顔でした。


「アマリア、今回は本当にお世話になった。礼を言うよ」

「いえいえ、こちらこそ」

 あれから数日後、私は学園内にある庭園でアルフォート様とミランダ様とお茶会と言う名の報告会をしていました。

「私からも礼を言うわ。妹を見つけてくれた事、それに仇を打てた事、感謝してるわ」

「ミランダ様は王太子様が怪しいと気づいていたんですか?」

「妹は可愛かったし、それにあの男が妹を変な目で見ていたのには気づいていたわ……、私が守ってあげていたらこんな事には……」

 そう言って悔しそうな顔をするミランダ様。

「あの後、兄上について調べた結果、どうやら他にも余罪があるみたいだ」

「余罪と言いますと?」

「兄上が密かに借りていた別荘があって立ち入り調査をした結果、少女の遺体らしき物が多数出てきた」

「マジですか……」

「僕も信じられなかったけど……、兄上は快楽殺人鬼だったんだ。少女を誘拐して襲って殺していたらしい」

「そのきっかけになったのがエミリーだったみたい……」

 とんでもない人ですね、王太子様。

「父上も母上もショックで憔悴してるし被害者の家には慰謝料と謝罪をしなきゃいけない、これからやる事が大変だよ」

 そう言ってため息を吐くアルフォート様。

「そうなると新しい王太子様は……」

「まぁ、僕になるだろうね、嬉しくはないけど。でも被害者が出ないよりはマシか」

「ミランダ様はどうされるんですか?」

「私は暫くは家の事を手伝うわ、お父様もお母様もショックを受けてるし何よりエミリーの側にいたいから……」

 こうしてこの事件は解決した、のは良いんだけどこの件がきっかけになり私は厄介事に巻き込まれたりするんだけどそれはまた別の話。

 更に言えばアルフォート様とミランダ様も一緒に巻き込んじゃうのも別の話。


  

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] おもしろかったです! シンプルできれいな小説だと思いました。
[一言] 亡くした者すら探し出すとか凄い天恵ですね〜… 下手したら国家事業クラスの役職に就かされるレベルなのでは?(苦笑)
[気になる点] 令嬢でなければ犯人を捜す探偵やお宝さがしの冒険者になれるのに むしろそういった危険人物に狙われやすくなるのか 連載したら話は膨らみそうだけど
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